公正証書遺言の作成はいくらかかる?作成方法や依頼した場合の費用

2026/07/22

公正証書遺言の作成はいくらかかる?作成方法や依頼した場合の費用

遺言書は、自分の財産を誰にどのように承継するかを定められる重要な書面です。

遺言を残さなければ、相続人以外に遺産を残すことが原則できません。

本記事では、公正証書遺言作成にかかる費用や必要書類などについて解説します。

公正証書遺言とは?

公正証書遺言は、全国の主要都市に設置されている公証役場において、法務大臣により任命された公務員である公証人が、その権限に基づき作成する公文書です。

証拠力や信頼性が極めて高い遺言の方式として多くの人に利用されています。

自筆証書遺言との違いを比較

公正証書遺言と自筆証書遺言の違いは、検認の有無や保管場所などが考えられます。

具体的な違いを表にまとめましたので確認していきましょう。

ご提示いただいた自筆証書遺言と公正証書遺言の違いに関する文章を、比較しやすい表にまとめました。

比較項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印して作成する遺言者が遺言の趣旨を口頭で述べ、公証人が筆記して作成する
作成の手軽さ・費用時間や場所を問わず作成でき、費用もかからない公証人への手数料がかかり、事前の打ち合わせや準備が必要となる
無効になるリスク決められた方式に従っていない場合、無効になる危険性がある公証人が関与するため、方式不備によって無効になるリスクがほぼない
紛失・偽造のリスク自分で保管するため、紛失や偽造・変造される危険性が伴う原本が公証役場で原則20年以上保管されるため、紛失や改ざんの恐れがない
秘密の保持遺言の内容を秘密にしておくことができる証人2人以上の立会いが必須となるため、完全に秘密にすることが難しい場合がある
検認手続き家庭裁判所における検認手続きが必要であり、相続発生後の手続きに時間と手間がかかる家庭裁判所での検認手続きが不要であるため、相続発生後すぐに遺言内容を実行できる

公正証書遺言がおすすめなケース

公正証書遺言の作成をおすすめするケースとして以下が考えられます。

  • 相続トラブルのリスクが高い
  • 相続財産が多岐にわたる
  • 相続人以外の者に財産を残したい
  • 認知したい子どもがいる
  • 相続廃除したい子どもがいる

不満を持つ相続人からの無効主張を防ぐために、客観的な証明力を持つ公正証書遺言が適しています。

また、上記以外にも事業用の財産を特定の後継者に確実に引き継がせたいときや、身寄りがなく全財産を公益団体等に寄付したい場合なども公正証書遺言が選ぶべきケースといえます。

複雑な事情を抱えている方は、遺言者の最終的な意思の実現を保障し、利害関係人の紛争を未然に防ぐためにも公正証書遺言を作成すべきといえるでしょう。

公正証書遺言の作成にかかる費用はいくら?費用の内訳と相場

公正証書遺言を作成するには公証役場に支払う公定の手数料と、専門家に手続きのサポートを依頼した場合に発生する報酬の二つに分類されます。

それぞれの費用の内訳と相場について具体的に確認していきましょう。

公証役場に支払う手数料

公証役場に支払う手数料は、公証人手数料令という政令によって全国一律で定められており、どの公証役場で作成しても金額は同じです。

この手数料は、遺言の目的となる財産の価額を基準にして計算されます。

財産を受け取る人が複数いる場合は、受遺者ごとに受け取る財産額に応じて手数料を算出し、それらを合算した金額がベースとなります。

これに加えて、遺言書の枚数に応じた加算や、公証人に出張を依頼した場合の加算などが上乗せされる仕組みとなっています。

財産額に応じた手数料の計算方法【シミュレーション付き】

公証人手数料は、各相続人や受遺者が受け取る財産額ごとに細かく定められています。

以下の表を確認してみてください。

目的の価額公証人手数料
50万円以下3000円
50万円超100万円以下5000円
100万円超200万円以下7000円
200万円超500万円以下13000円
500万円超1000万円以下20000円
1000万円超3000万円以下26000円
3000万円超5000万円以下33000円
5000万円超1億円以下49000円
1億円超3億円以下49000円に超過額5000万円までごとに15000円を加算
3億円超10億円以下109000円に超過額5000万円までごとに15000円を加算
10億円超291000円に超過額5000万円までごとに9000円を加算

たとえば、総額8000万円の財産を、妻に5000万円、子どもに3,000万円相続させる遺言を作成する場合を考えてみましょう。

上記の表をあてはめると、妻の分は5000万円以下なので29000円です。

子どもの分は3000万円以下なので23000円となります。

この二つの金額を合算した52000円が、遺言の手数料です。

このように全体の財産額ではなく、誰がいくら受け取るかによって個別に計算し、合計するというルールを理解しておくことが重要です。

手数料が加算されるケース

基本となる財産額に応じた手数料以外にも、特定の条件を満たすと加算される費用がいくつか存在します。

まず遺言加算と呼ばれるもので、全体の財産額が1億円以下の場合は、基本手数料に一律11000円が加算されます。

次に出張加算です。

遺言者が高齢や病気で公証役場に赴くことができず、公証人に自宅や病院や介護施設まで出張してもらう場合は、基本手数料が1.5倍になります。

また、出張に伴う公証人の日当と、現地までの交通費の実費も必要となります。

専門家に依頼した場合の報酬

公正証書遺言の作成は自分だけで公証人と打ち合わせをして進めることも可能ですが、手続きの煩雑さや法的な判断の難しさから、多くの人が専門家に依頼しています。

依頼する専門家の種類によって対応できる業務の範囲や強みが異なり、それに伴って報酬の相場も変わってきます。

各専門家の費用相場と特徴は以下の表の通りです。

専門家費用の相場依頼する特徴
弁護士15万円から30万円以上代理人として交渉が可能であり法的紛争の予防から裁判対応まで一貫して任せられます
司法書士7万円から15万円程度遺産の中に不動産が多く含まれている場合において死後の相続登記まで見据えた的確なサポートが受けられます
税理士10万円から20万円程度資産規模が大きく多額の相続税が発生する場合において相続税の申告や配偶者控除などを活用した事前の節税対策に関するアドバイスが得られます
行政書士5万円から10万円程度手続きの負担や費用をできるだけ抑えたい場合において戸籍等の収集や公証役場との連絡調整など煩雑な事務手続きをスピーディーに代行してくれます

専門家に依頼した場合、これらの報酬に加えて、前述の公証役場への手数料が別途かかります。

依頼する際は自身の財産状況や家族関係のリスクを考慮し、適切なサポートを提供してくれる専門家を選ぶことが大切です。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言のメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット

公正証書遺言の大きなメリットは、法的な無効リスクが低い点です。

公証人という法律の専門家が関与し、証人2人以上の立会いや各人の署名押印などの厳格な要件を満たして作成されるため、方式不備で無効になることはまずありません。

また遺言書の原本は公証役場において長期にわたり厳重に保管されるため、偽造や変造や紛失のリスクがないため、確実性があります。

さらに遺言者の死後、家庭裁判所における検認手続きが不要であることもメリットといえるでしょう。

公正証書遺言であれば相続開始後すぐに遺言の内容を執行し、預貯金の解約や不動産の登記移転などをスムーズに進めることができます。

デメリット

公正証書遺言のデメリットとして、作成に一定の費用と手間がかかることが挙げられます。

自筆証書遺言であれば紙とペンと印鑑さえあれば無料で作成できますが、公正証書遺言の場合は公証人への手数料が必ず発生します。

財産額が大きいほどこの手数料の負担も増大します。

さらに専門家に依頼した場合はその報酬も必要となるため、経済的な負担は避けられません。

また作成にあたっては公証人との事前打ち合わせや必要書類の収集など準備に時間と労力がかかります。

加えて証人2人以上の立会いが必須となるため、遺言の存在やその内容を完全に秘密にしておくことが難しいというデメリットもあります。

証人には守秘義務があるとはいえ、全くの他人に自身の財産状況や家族への思いを知られることに心理的な抵抗を感じる方も少なくありません。

証人を自分で手配できない場合は専門家や公証役場に手配を依頼することになり、そこでも追加の日当等が発生します。

公正証書遺言の作成方法|必要書類と5つの手順

公正証書遺言を作成する手順を5つに分けて確認していきましょう。

【手順1】遺言内容の決定と財産目録の作成

公正証書遺言を作成する際に、最初に行うべきは、自身の所有する財産の全容を把握し、それを誰に承継させるか基本方針を固めることです。

以下の項目などを細かく洗い出し、財産目録として一覧にまとめます。

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式や有価証券
  • 自動車や貴金属

その上で、推定相続人にどのような割合で相続させるか、あるちはその立場以外の人に遺贈するかを決定します。

特定の財産を特定の人物に指定して承継させる特定遺贈にするか、財産の全部または一部を一定の割合で示して承継させる包括遺贈にするかといった法的な効果の違いも考慮しながら内容を練り上げていきます。

なお、負担付遺贈として、受遺者に一定の法律上の義務を負担させる条件を付けることも可能です。

これらの内容は、後の打ち合わせで公証人に伝えるための重要なベースとなります。

【手順2】必要書類の準備と収集

遺言内容の骨格が決まったら、公証役場に提出するための各種証明書類を収集します。

公正証書遺言は公的な文書であるため、遺言者本人や相続人や対象となる財産の存在を客観的に証明する公的書類が必須となります。

必ず必要になる書類

いかなる内容の遺言であっても、遺言者本人の身元と意思能力を確認するために以下の書類が必ず求められます。

  • 遺言者本人の印鑑登録証明書と実印
  • 遺言者と財産を受け取る人との関係性を示すための戸籍謄本
  • 財産を受け取る人が法定相続人以外の第三者である場合はその人の住民票
  • 遺言者の本人確認書類

これらは作成当日に遺言書に押印し、本人の意思に基づくものであることを担保するために使用されます。

財産の種類によって必要になる書類|不動産・預貯金など

遺言の対象となる財産を特定し、その価額を算定して公証人手数料を決定するために、財産ごとの客観的な証明書類が必要となります。

⬛︎不動産の場合

法務局で取得する不動産の登記事項証明書と市区町村役場で取得する固定資産評価証明書

⬛︎預貯金の場合

金融機関名や支店名や口座番号が正確にわかる通帳のコピー

有価証券の場合:証券会社から発行される取引残高報告書

なお、未上場株式など評価が複雑な財産が含まれる場合は、会社の決算書などの追加書類が求められることもあります。

【手順3】証人2人の手配

公正証書遺言を作成するにあたり、法律上必ず2人以上の証人が立ち会うことが義務付けられています。

証人の役割は、以下を証明することがあります。

  • 遺言者が本人であること
  • 遺言者が真意に基づいて遺言を公証人に口述したこと
  • 公証人の筆記が正確であることを確認し手続の適正を担保すること

誰でも証人になれるわけではなく、民法により一定の欠格事由が定められています。

以下の者は利害関係があるため証人になれません。

  • 未成年者
  • 推定相続人
  • 受遺者
  • これらの配偶者および直系血族

また、以下の公証人の関係者も証人にはなれません。

  • 配偶者
  • 四親等内の親族
  • 書記および使用人

親族に頼むことが難しい場合は、信頼できる友人や知人に依頼するか、手続きを依頼している専門家に証人を兼任してもらうのが一般的です。

公証役場で手配してもらうことも可能ですが、その場合は規定の日当が発生します。

【手順4】公証役場での打ち合わせと作成当日の流れ

必要書類と証人の目処が立ったら、公証役場と連絡を取り、遺言内容の事前打ち合わせを行います。

打ち合わせは直接公証役場に出向いて行うほか、電話やメールなどを通じて行うことも多く、依頼した専門家がいれば代理で調整してくれます。

公証人が書類をもとに遺言書の原案を作成し、遺言者がその内容と見積もり手数料を確認して合意に至れば、作成当日の予約を取ります。

作成当日は遺言者本人と証人2名が揃って公証役場に赴きます。

なお、現在はリモートでの作成が導入されている場所もあります。

手続きは、遺言者が遺言の趣旨を公証人に直接口頭で述べることから始まります。

公証人はその口述内容を筆記し、遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させます。

遺言者及び証人は、筆記が正確であることを確認したうえで承認し、各自が証書に署名し、押印します。

遺言者が病気などで署名できない場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。

最後に公証人が民法所定の方式に従って作成された旨を付記し、署名押印して完成となります。

【手順5】作成後の保管と手続き

公正証書遺言が完成すると手数料を支払い、遺言書の控えを受け取ります。

遺言者には、原本と全く同じ効力を持つ正本と、その写しである謄本が交付されます。

正本や謄本を紛失してしまった場合でも、公証役場に原本が保管されているため、身分を証明すれば再発行が可能です。

これで遺言書作成の全ての手続きが完了となります。

公正証書遺言作成時の3つの重要注意点

公正証書遺言は非常に強力な法的効力を持ちますが、どのような内容でも無制限に許されるわけではありません。

公正証書遺言作成時の注意点について確認していきましょう。

注意点1:相続人の遺留分に配慮する

公正証書遺言を作成する注意点として、推定相続人に保障されている最低限の財産取得割合である遺留分を考慮することです。

遺言者は原則として自由に財産の処分を決定できます。

しかし、それにも制限があり、以下の者は遺言によっても奪うことのできない遺留分が保護されています。

  • 配偶者
  • 子ども
  • 直系尊属

愛人に全財産を遺贈するといった極端な遺言を作成した場合でも、遺言自体は有効に成立します。

ただし、残された家族の生活保障という観点から公平を欠くため、彼らは受遺者に対して遺留分侵害額の請求を行うことができます。

この請求が行われると多額の金銭を支払わなければならなくなり、結果として激しい相続トラブルに発展する可能性が高くなります。

したがって特定の相続人に財産を集中させる場合であっても、他の相続人の遺留分を侵害しない範囲に留めることを検討してください。

どうしても侵害してしまう場合には、遺言の付言事項でその理由を丁寧に説明し、争いを防ぐための精神的な配慮を施すことが重要です。

注意点2:遺言能力があるうちに作成する

公正証書遺言の注意点として作成者の遺言能力があるうちに作成することがあります。

遺言を有効に成立させるための絶対的な条件として、遺言をする時に遺言者が遺言能力を有している必要があります。

遺言能力とは、自分が作成する遺言の内容とその法的な結果を合理的に理解し、判断できる能力のことです。

作成時点で認知症が進行し事理弁識能力を欠いていると判断された場合は、公証人が作成を拒否するか、後に相続人から遺言無効確認の訴えを起こされて遺言が取り消されるリスクがあります。

一方で、作成時に遺言能力が認められて遺言が有効に成立すれば、その後に認知症を発症して意思能力を失ったとしても、遺言の効力には一切影響しません。

したがって少しでも健康に不安を感じた場合や、物忘れが気になり始めた段階で、十分な判断能力があるうちに速やかに作成することが大切です。

注意点3:遺言執行者を指定しておく

公正証書遺言を作成するときの注意点として遺言執行者の指定があります。

遺言執行者とは、遺言者に代わって遺言の内容を実現させるために、相続財産の管理や各種手続きを行う権限と義務を持つ人のことです。

遺言の効力が発生した後、特定物の遺贈の履行などには具体的な執行行為が必要となります。

遺言執行者を指定していないと、相続人全員の協力や実印での押印が必要になる手続きが多く、もし相続人の一人でも協力を拒否したり連絡が取れなかったりすると、遺言の執行が完全に止まってしまいます。

このような事態を防ぐため、遺言の中で信頼できる親族や専門家を遺言執行者として明確に指定しておくことが欠かせません。

公正証書遺言は誰に相談する?

公正証書遺言の作成は、個人の財産状況や家族関係や将来の懸念事項によって、抱える課題が大きく異なります。

そのため手続きのサポートを依頼する専門家も、自身のニーズに合わせて適切に選択する必要があります。

法律の専門家であれば誰でも同じというわけではなく、それぞれに得意とする分野と対応できる業務範囲が存在します。

弁護士:相続トラブルのリスクが高い場合

弁護士は法律の専門家として、あらゆる法的トラブルの予防と解決に対応できる唯一の存在です。

他の専門家とは異なり、万が一相続人同士で争いが起きた場合でも、代理人として法廷での訴訟や交渉に直接介入することができます。

前妻の子と後妻の間で争いが起きそうだといった感情的な対立や、遺留分侵害請求などの法的紛争に発展するリスクが高い場合には、法的な防御策を徹底的に講じることができる弁護士への相談が最も適しています。

なお、遺言執行者として指定した場合も、強い権限を持って毅然と手続きを遂行してくれます。

司法書士:不動産の相続登記まで任せたい場合

司法書士は、不動産登記に関する手続きの専門家です。

遺産の中に不動産が多く含まれている場合、遺言書の作成だけでなく、遺言者が亡くなった後の相続登記までを見据えたトータルサポートを受けることができます。

遺言書の文言一つで、後の登記手続きがスムーズにいくかどうかが変わるため、登記の実務に精通した司法書士のアドバイスは非常に有益です。

また認知症対策としての成年後見制度や家族信託の組成などにも強く、生前の財産管理を含めた総合的な提案を求める場合にも適しています。

税理士:相続税の節税対策もしたい場合

税理士は、税務申告や節税対策の専門家です。

遺産総額が基礎控除額を超え、相続税の申告が必要になると予想される場合には、税理士への相談が必須となります。

遺言の分け方一つで適用できる控除が変わり、最終的な相続税額に数百万円の違いが生じることも珍しくありません。

税理士に相談することで、相続税のシミュレーションを行いながら、二次相続まで見据えた最も税負担が少なくなるような遺言内容の提案を受けることができます。

行政書士:書類作成や手続きのサポートを依頼したい場合

行政書士は、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成や、権利義務に関する書類作成の専門家です。

戸籍謄本の収集や財産目録の作成など、煩雑な事務手続きをスピーディーかつ正確に代行してくれます。

公正証書遺言に関するよくある質問(Q&A)

公正証書遺言の作成を検討するにあたり、多くの方が共通して抱く疑問点があります。

ここでは、制度の柔軟性や特有の事情に対する法的な取り扱いについて、よくある質問とその回答をまとめました。

Q. 公正証書遺言を作成した後に内容の変更や撤回はできますか?

はい。

遺言者はいつでも遺言の方式に従って、遺言の全部又は一部を自由に撤回し、内容を変更することができます。

遺言はその人の最後の財産処分の意思を尊重する制度であるため、撤回の自由は法的に強く保障されています。

たとえば事情が変わって財産の分け方を変えたくなった場合、新たに別の公正証書遺言を作成することで、前の遺言を上書きすることができます。

前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。

また新しく自筆証書遺言を作成して、前の公正証書遺言を撤回することも可能です。

日付が最も新しい遺言書が、最終的な意思として法的に優先されます。

Q. 認知症の親でも作成できますか?遺言能力とは?

認知症を発症している親であっても、一律に遺言が作成できないわけではありません。

重要なのは、遺言を作成するまさにその時点において、遺言の内容を正しく理解し判断できる遺言能力が残存しているかどうかです。

認知症の症状が軽度であり、医師の診断や公証人の面談によって判断能力があると確認されれば、公正証書遺言の作成は可能です。

しかし症状が進行しており、自分が何をしているのか理解できない状態であれば、遺言能力がないとみなされ、遺言は無効となります。

判断が難しいグレーゾーンの場合は、作成当日に医師に同席してもらい、能力に問題がない旨の診断書を作成してもらうなど、事後の無効主張を防ぐための厳重な対策が必要となります。

Q. 証人が見つからない場合はどうすればいいですか?

公正証書遺言の作成には証人2名以上の立会いが必須ですが、親族が欠格事由に該当して頼めないという理由で証人が見つからないケースは多々あります。

そのような場合は、遺言作成のサポートを依頼している専門家に証人を依頼するのが最も確実で安全な方法です。

彼らには法律上の守秘義務があるため、内容が外部に漏れる心配はありません。

また専門家に依頼していない場合でも、公証役場に相談すれば守秘義務を持った書記や独自のネットワークから証人を手配してもらうことが可能です。

いずれの場合も証人への日当が必要になりますが、証人確保の壁で作成を諦める必要はありません。

Q. 亡くなった親の公正証書遺言があるか確認する方法は?

親が亡くなった後、公正証書遺言を残していたかどうかがわからない場合は、全国の公証役場で利用できる遺言検索システムを利用することで簡単に確認できます。

平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば日本公証人連合会が一元的にデータを管理しているため、どこの公証役場で作成されたものであっても最寄りの公証役場から検索をかけることが可能です。

検索を依頼できるのは相続人などの利害関係人に限られており、親の死亡を証明する戸籍謄本や、検索する人が相続人であることを証明する戸籍謄本を持参する必要があります。

生前にこのシステムを利用して検索できるのは遺言者本人のみであり、家族であっても親の生前に勝手に検索することはできません。

まとめ

今回は公正証書遺言について考えていきました。

公正証書遺言は、遺言者の最終意思を確実に実現し、残された家族間の無用な相続トラブルを回避するための非常に有効な手段です。

作成には公証役場での手続きや費用がかかりますが、その分だけ法的な安定性と確実性が強力に担保されます。

ご自身の財産状況や家族関係に合わせて、最適な遺言の形を選択することが何よりも重要です。

不安な点がある場合は専門家に早めに相談することを検討してください。

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