相続の相談先はどこ?弁護士・税理士・司法書士・行政書士の役割と費用の違い
2026/06/27

ご家族が亡くなった場合に必ず行わなければならないものとして、相続手続きがあります。
亡くなった方(以下被相続人)の財産は一部を除きすべて、その配偶者や子どもなどに承継されます。
相続の手続きにおいて、困ったときにどの専門家に相談すればいいのかわからない方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、相続に関する悩みをどの専門家に相談すべきなのかについて紹介していきたいと思います。
相続の悩みと相談先の専門家
相続に関する主な悩みと、それぞれに適した相談先を整理しました。
この表は、直面している課題に対して、誰に最初のアプローチをかけるべきかの指標となります。
| 悩みや課題 | 主な相談先 |
| 相続人同士の争いや交渉 | 弁護士 |
| 相続税の申告や節税対策 | 税理士 |
| 不動産の名義変更 | 司法書士 |
| 遺産分割協議書の作成(※) | 弁護士、司法書士、行政書士 |
| 遺言書の作成 | 弁護士、司法書士、行政書士 |
| 相続放棄の検討 | 弁護士、司法書士 |
※司法書士や行政書士が遺産分割協議を作成できるのは紛争がない場合に限られます。
まずはこの表で大まかな方向性を把握し、各専門家の詳細な役割を確認していきましょう。
相続の相談先と専門家の役割
相続においては、ご自身の抱えている問題が法律のトラブルなのか、税金の申告なのかなどによって相談先が変わります。
各専門家の専門領域について確認していきたいと思います。
弁護士の専門領域
弁護士は、相続トラブルや交渉の専門家として、争いのある相続案件において重要な役割を果たします。
紛争の代理人として活動できるのは法律上、弁護士だけです。
相続で争いになりがちな遺留分の問題などで調停や訴訟が必要になった場合でも一貫してサポートを受けることが可能です。
遺産分割協議で争いがある場合や相手方との交渉が必要なケースにおいて、もっとも頼りになる存在といえるでしょう。
弁護士に相続問題を依頼するメリットは、依頼者の方の権利を法律の知識を駆使して守ってくれる点にあります。
たとえば、以下のようなケースは法的な主張と感情的な要求が入り混じってしまい、当事者間での解決が非常に困難な場合があります。
- 特定の相続人が生前に多額の援助を受けており特別受益の主張をしたい場合
- 親の介護を長年献身的に行ってきたことを理由に寄与分の主張をしたい場合
- 不動産の遺産分割で代償金をめぐり争いになっている場合
- 遺言書や生前贈与で遺留分を侵害されており請求したい場合
しかし、弁護士に依頼すれば、代理人としてご自身の代わりに相手方との連絡や交渉を任せることができます。
感情ベースではなく、事実を前提として話し合いを進めるため、ご自身で対応するよりも早期に解決できる可能性が高まります。
話し合いで解決しない場合でも、弁護士は家庭裁判所での調停や地方裁判所での民事訴訟の対応を行うことができます。
これは弁護士にしかできない領域と言えるでしょう。
税理士の専門領域
相続においての税理士の専門領域は、相続税にかかわる業務です。
相続税には、以下のように基礎控除額というものが設定されています。
■基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
遺産総額が上記の基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要となります。
被相続人の遺産額や保有していた資産の種類によっては、計算が非常に複雑になり、自力で正確な数値で申告を行うことが難しくなります。
また、相続税の申告期限は、相続が開始した翌日から10か月と定められています。
相続人になった場合、その間に各調査や遺産分割の話し合い、また税の申告を行わなければなりません。
このような場合、税理士に依頼すれば、相続税の申告を代理してもらうことができます。
相続税は、税務調査が入る確率が10パーセントと他と比べると高い税金であるといえるため、将来的な税務リスクを減らしたいと考えるのであれば税理士に依頼すべきと言えるでしょう。
税理士に相続税申告を依頼するメリットとして、相続税の納税額を低くするための特例や控除を状況に合わせて適用できる点が挙げられます。
たとえば、遺産に土地がある場合には、小規模宅地等の特例を使うことによって、居住用や事業用の土地の評価額を最大で80パーセントも減額することができます。
また、税務調査の連絡が来た際にも、税務署の指摘に対して専門的な見地から対応できる点もメリットといえるでしょう。
司法書士の専門領域
相続における司法書士の専門領域は、登記業務といえます。
不動産を相続した場合、土地や建物の所有権を被相続人から相続人へと名義変更する相続登記という手続きを行わなければなりません。
相続登記には、法律で期限が定められており、自身の相続と不動産を取得できることを知った日から3年以内に行う必要があります。
正当な理由なく相続登記を怠った場合には、10万円以下の過料というペナルティが科される可能性があるのです。
相続登記は、必要書類が多く、また正確に申請をしないと法務局が受理してくれません。
そのため、遺産に不動産が含まれている場合には司法書士に依頼することを検討すべきです。
司法書士に相続登記を依頼するメリットとして、遺言書や遺産分割協議書に基づく不動産の所有権移転登記を正確に行うことができる点です。
また、遺産承継業務として、預貯金の解約手続きや相続人調査などを幅広くサポートができます。
各種遺産の名義変更に必要な戸籍謄本の収集から、遺産分割協議書の作成、法務局への登記申請を代行できる点も大きなメリットといってよいでしょう。
行政書士の役割
相続における行政書士の役割として、相続人や遺産の調査、遺産分割協議書の作成などが挙げられます。
収集の難易度が高い戸籍謄本の取得や、財産目録の作成などにおいて、他の専門家と連携しながら業務を遂行することが可能です。
相続が始まると、まず誰が相続人であるかを確定させるために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて集める必要があります。
相続人が被相続人の配偶者や子どもなど直系の血族であれば、お住いの地域の役所で戸籍を一括申請を行えますが、兄弟姉妹などの場合はこの制度を利用することができません。
したがって、本籍地が遠方にあったり、転籍を繰り返していたりする場合、この戸籍収集の作業だけで数か月を要してしまうこともあります。
このような場合、行政書士に依頼すれば、職務上請求という権限を用いて全国の役所から迅速に戸籍を取り寄せ、複雑な家系図を作成することができます。
相続に関する手続きを行政書士に依頼するメリットとして、遺産分割協議書を公正証書とするときのサポートが行える点です。
遺産分割協議書に代償金や特別受益など将来にわたって金銭の支払いが生じる取り決めをしていた場合、強制執行のできる公正証書にしておくことで、不払いがあった場合に給与差し押さえなどの手段が可能になります。
公証人とのやり取りなど専門性が高いものを行政書士がサポートすることで、時間的、精神的負担の軽減につながります。
【費用で比較】専門家の費用相場
相続における、各専門家の費用、業務の難易度や遺産の規模によって異なります。
依頼を検討する上で非常に重要なポイントとなるため、費用相場をまとめてみましたので確認してみてください。
弁護士の費用相場
弁護士は、自由報酬制が採用されているため、実際にかかる費用は事務所によって異なります。
しかし、以前利用されていた旧弁護士報酬基準という金額をベースに報酬を決定している事務所も少なくありません。
以下の表は、その基準に沿った費用相場となります。
| 業務項目 | 費用相場の目安 |
| 初回法律相談料 | 5000円から1万円(30分ごと) |
| 2回目以降の法律相談料 | 5000円から2万5000円(30分ごと) |
| 法律関係調査 | 5万円から20万円 |
| 定型的な遺言書作成 | 10万円から20万円 |
| 調停事件、交渉事件 | 訴訟事件基準の3分の2(着手金最低10万円) |
※非定型の遺言書作成、公正証書作成時の加算、複雑な事情がある場合は弁護士と依頼者との協議により定まります。
上記のように、依頼する内容によって報酬は大きく異なります。
調査や書類の作成などで完結するものにおいては、比較的低い金額で設定されています。
一方で他の相続人などと話し合いが必要な調停や交渉事件においては、依頼した場合、報酬金とは別途で着手金というものを支払う必要があります。
なお、初回相談料に関しては、無料で受けている事務所も多くあります。
訴訟事件に関する報酬については、以下の表が基準となります。
訴訟準備などに時間がかかるため書類作成や交渉などよりも相場が高めになっています。
| 経済的利益の額 | 着手金 | 報酬金 |
| 300万円以下 | 経済的利益の8%(最低10万円) | 経済的利益の16% |
| 300万円超から3000万円以下 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
| 3000万円超から3億円以下 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
| 3億円超 | 2%+369万円 | 4%+738万円 |
税理士の費用相場
相続税申告を税理士に依頼する場合の費用相場は、以下の通りです。
| 業務項目 | 費用相場の目安 |
| 相続税申告報酬 | 遺産総額の0.5%から1% |
上記の報酬をベースとして、申告が必要な相続人の数によって報酬が加算されます。
また、遺産に特別な形状の土地であったり、非上場株株式だったりと評価が難しい資産が含まれている場合には、その内容に合わせて報酬が高くなります。
司法書士の費用相場
相続手続きを司法書士に依頼する場合、以下の表が目安となります。
| 業務項目 | 費用相場の目安 |
| 所有権移転登記(相続) | 5万円から10万円 |
| 遺言書作成支援 | 5万円から15万円 |
| 遺産承継業務 | 遺産総額の0.5%から1.0% |
なお、登記に関しては、不動産が複数ある場合には、報酬が高くなります。
行政書士の費用相場
相続手続きの行政書士の費用相場をまとめましたので確認してみてください。
| 業務項目 | 費用相場の目安 |
|---|---|
| 遺産分割協議書作成 | 5万円から10万円 |
| 相続人調査・戸籍収集 | 3万円から6万円 |
| 相続財産調査 | 3万円から6万円 |
| 遺言書作成サポート | 5万円から10万円 |
【ケース別】相続の悩みとおすすめの相談先
相続の悩みはその内容によっておすすめの相談先が異なります。
ケース別にどこに相談すべきかを確認していきましょう。
ケース1:遺産分割で親族と揉めている・揉めそう
遺産分割で親族と争いがある場合は、弁護士に相談しましょう。
遺産分割の話し合いがこじれてしまうと、感情的な対立が深まり、親族間での解決が困難になることが多々あります。
弁護士は、法律的な見地から客観的な解決策を提示し、代理人として相手方との交渉を代理することが可能です。
また、話し合いでまとまらない場合は家庭裁判所の調停手続などを利用して、法的に適正な解決を図ることができます。
代理人として交渉や調停を行うことができるのは弁護士だけです。
そのため、もし親族間のトラブルを抱えているのであれば、早い段階で弁護士に相談することを検討してください。
ケース2:遺産に不動産(実家・土地)が含まれている
遺産に不動産が含まれる場合、単純に分割することが難しいため、専門的な知識が必要です。
相続人のあいだで争いがある場合は、まず弁護士に相談して遺産分割協議の調整を行い、法的合意を得ることを優先しましょう。
争いがない場合の相続登記の手続きは司法書士に依頼することをおすすめします。
法務局への申請書類作成などは、専門的知識を要するため、遺産分割が完了した段階で相談すべきといえます。
ケース3:相続税がかかるか知りたい・節税したい
相続税の計算や節税に関するアドバイスは税理士の専門分野です。
自分自身で計算しようとすると、財産評価のルールや特例の適用など、見落としが発生しやすく、後から追徴課税を受けるリスクがあります。
早い段階で税理士に相談することで、相続税が発生するかどうかの見極めはもちろんのこと、生前からの節税対策が可能になります。
遺産の総額が基礎控除額を上回る場合はもちろんのこと、上回るかどうかの判断が難しい場合でも、一度税理士に概算を依頼しておくことが大切です。
ケース4:借金が多いので相続放棄を検討している
遺産の中にはプラスの財産だけでなく、借金などの負債が多く含まれている場合があります。
被相続人の借金を承継したくない場合には、相続放棄を検討する必要があります。
相続放棄の書類作成のサポートを行える専門家は、弁護士や司法書士です。
弁護士や司法書士であれば、家庭裁判所に提出する書類の収集や作成をスムーズに完了することができます。
なお、相続放棄は原則として相続開始を知った日から3か月以内に手続きを完了させなければなりません。
したがって、相続人・相続財産調査を含めて弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
失敗しない相続の専門家の選び方と比較ポイント
相続トラブルや手続きを専門家に相談を検討している場合、以下のポイントを考慮しながら選ぶと良いでしょう。
相続分野の実績・経験が豊富か
相続の相談先を選ぶときのポイントとして、相続分野の実績や経験が豊富であるかどうかがあります。
相続は個別事情が異なるため、過去にどれくらいの案件を扱ってきたかが重要です。
同じ相続の悩みであっても、財産の種類や相続人の構成によって、対応すべきことが大きく異なります。
したがって、過去の解決事例や相談件数を確認し、相続に特化している事務所を選ぶようにしましょう。
実績が豊富な事務所であれば、過去の様々なトラブル事例を踏まえて、起こりうるリスクを回避できるような対応を行えます。
費用体系が明確で、事前に見積もりを提示してくれるか
相続の専門家を探すときのポイントとして、費用体系が明確で、見積もりを提示してくれるかどうかが考えられます。
着手金や報酬金の基準が明確であるか、事前に見積もりを出してくれる事務所を選びましょう。
また、追加費用が発生するようなケースについても、明確に答えてくれるような専門家を選ぶべきといえます。
一括料金を提示されて納得できない場合は、詳細な内訳を出してもらうよう交渉することも大切です。
親身に話を聞き、分かりやすく説明してくれるか
相続問題を依頼するときのポイントとして、専門家が相談者の不安に対し親身になり、わかりやすく説明してくれるかどうかです。
相続の悩みはその内容によって、他人には言いにくいことを専門家に伝えなければいけないことがあります。
このような場合に、専門家との信頼関係が築けておらず、話をしないとご自身にとって不利な内容で収束してしまうことにつながりかねません。
したがって、初回相談時の対応が丁寧であるか、こちらの質問に対して真摯に答えてくれるかをチェックすることが重要です。
まずは無料相談を活用しよう
相続について不安を感じたら、まずは専門家の初回無料相談を利用して、現在の状況を整理するところから始めましょう。
専門家事務所の初回無料相談
専門家事務所では、初回相談を無料にしているところがあります。
まずは事務所の雰囲気を知るためにも、初回無料相談を積極的に利用しましょう。
複数の事務所を比較して、もっとも信頼できると感じる場所を選ぶのも良い方法です。
市役所・区役所の法律相談
専門家を探す場合、自治体が開催している無料相談を利用するのもひとつの方法です。
こちらは相談時間が短く、詳細な代理交渉までは頼めないことが多いですが、最初の方向性を決めるためのヒントを得る場所として非常に有効です。
まとめ
今回は、相続の相談先についてそれぞれの専門家の特徴とともに紹介していきました。
相続の悩みは、適切な専門家に相談することで解決の糸口が見つかります。
自分のケースに合った相談先を選んでください。





