著作権の相続税評価と手続き|計算方法から必要書類

2026/06/19

著作権の相続税評価と手続き|計算方法から必要書類

著作物を創作した人に与えられる著作権は、経済的な利益を生み出す重要な資産です。

とはいえ、著作権は不動産や預貯金とは異なり、目に見えない無体財産権であるため、その価値の算定や名義変更の手続きには特殊な法務知識が求められます。

本記事では、著作権の相続税評価の手続きについて解説します。

著作権は相続できる?

被相続人が有していた権利や義務は、その人の身分や才能などによる権利をのぞき、すべて相続人に承継されます。

著作権は、大きく著作財産権と著作人格権の2つの権利に分けられます。

どちらも相続の承継対象になるのでしょうか。

確認していきましょう。

相続の対象は著作財産権のみ

著作権で相続の対象となるのは、著作財産権です。

日常的に著作権と呼んでいるものは、法律上は著作財産権という名称で定義されています。

これは、著作物を独占的に利用して経済的な利益を得るための権利の束を指します。

著作財産権として含まれる具体的な権利は主に次のようなものがあります。

  • 書籍を印刷する複製権
  • インターネット上で配信する公衆送信権
  • 演劇として上演する上演権
  • 映画化や翻訳を行う翻案権

上記の権利は、預貯金や不動産と同じように財産としての価値を持つため、相続の対象となります。

相続人は、これらの権利を引き継ぐことで、被相続人に代わって出版社から印税を受け取ったり、新たな二次利用の許諾を与えてライセンス料を得たりすることができます。

また、著作財産権はさまざまの権利の集合体のようなものなので、権利の一部を切り離し、各相続人が分割して相続することも可能です。

ただし、著作財産権を分割すると複雑になりすぎるため、通常は一人の相続人にすべての著作財産権を集中させるケースが多いです。

相続できない著作者人格権|死後も守られる権利

著作権には著作財産権とは別に、著作人格権という権利があります。

著作人格権は、以下の3つの権利から構成されています。

権利の名称具体的な内容
公表権まだ世に出ていない未発表の作品を、いつ、どのような方法で公表するかを決める権利
氏名表示権作品を公表する際に、本名やペンネームを表示するかどうか、またどのように表示するかを決める権利
同一性保持権作品のタイトルや内容を、自分の意に反して勝手に改変されたり、切り取られたりしない権利

上記の権利は、著作者という個人の人格に極めて強く結びついているため、一身専属権とされています。

一身専属権は他人に譲渡することができず、著作者の死亡と同時に消滅します。

したがって、相続人は著作人格権を相続することはできません。

ただし、著作者が死亡したからといって、他人が自由に作品を改変してよいわけではありません。

著作権法では、著作者の死後インターネットやテレビなどにその作品を公開するなどした者が、著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならないという規定が設けられています。

そのため、相続人は衆送信権を行使している者が被相続人の名誉を著しく害するような悪質な改変をした場合、差し止めを請求するなどの手段を行使することが可能です。

相続対象となる著作物の具体例

相続対象となる著作物の具体例として以下が挙げられます。

  • 活字として出版された小説・専門書などの著作物
  • 作詞作曲した楽曲の楽譜・音声データ
  • 絵画・キャラクターのデザイン
  • 写真

上記のほかにも、個人が開発したスマートフォン向けのアプリや、業務用のシステムに組み込まれたソースコードといったプログラムの著作物も対象になることがあります。

また、YouTubeなどの動画共有サイトに投稿された動画コンテンツや、自身のブログに書き溜めた記事なども、収益を生み出している場合には評価の対象となります。

著作権の相続手続きガイド

著作権を相続する場合の手続きの流れについて確認していきたいと思います。

1.相続人と著作権の全体像を把握する

被相続人の相続財産に著作権が含まれる場合、まず行うべきこととしてその権利の全体像を確認することです。

被相続人が生前にどのような作品を制作し、どこの企業と契約を結んでいたかを調査します。

遺品整理など行い、以下のような書類があるかどうかを確認してください。

  • 出版契約書
  • 著作権管理団体からの支払い明細書
  • 銀行口座への印税の入金履歴

ペンネームを複数使用していたり、同人誌などの自費出版活動を行っていたりした場合、家族であっても把握していない作品が存在する可能性があります。

したがって、パソコンやスマホのデータから電子契約を結んでいるかどうかなど入念に調査を行ってください。

2.遺言書の有無を確認する

著作権が相続財産に含まれている場合、財産調査と併せて被相続人が遺言書を残しているかどうかを確認してください。

遺言書に著作権の承継先が指定された場合、遺産分割協議の取り決めよりも優先されます。

後になって見つかった場合、相続人間でトラブルになる可能性もあるため、必ず確認すべきといえます。

遺言書の探し方は、大きく3つに分けられます。

公正証書遺言の場合は、公証役場に確認することで遺言内容を確認することができます。

自筆証書遺言の場合、法務局に保管されている可能性があります。

最寄りの法務局で遺言書保管事実証明書の請求を行うことで存在の有無などを確認することが可能です。

その他、自宅などで遺言を保管している場合もあります。

自宅などで保管している遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを行う必要がある点には注意が必要です。

3.相続方法を決める|単純承認・限定承認・相続放棄

著作権を含む遺産の全容が明らかになった段階で、実際に承継するかどうかを決めます。

相続するかどうか決める期間のことを熟慮期間と呼び、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に以下の選択をしなければなりません。

選択肢の名称内容と法的な効果
単純承認プラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべて引き継ぐ方法
限定承認プラスの財産の範囲内でのみ負債を返済する折衷的な手法です。相続人全員での申し立てが必要
相続放棄遺産の一切を引き継がない決断です。家庭裁判所への申述により、初めから相続人でなかったものとみなされる

遺産を相続する場合には、特別な手続きを行う必要はありません。

著作権と別に大きな債務があり、財産価値が熟慮期間中にはかれない等の場合には、限定承認や相続放棄を検討する必要があります。

4.遺産分割協議で相続人を決める

遺言書がない、あるいは遺言書に著作権の扱いが記載されていなかった場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。

遺産分割協議では、誰が著作権を承継するのか、またそのほかの財産に関しても誰が所有するのかを決めます。誰が預貯金や不動産を受け取るのかを話し合い、合意形成を図ります。

著作権の遺産分割の方法として、主に以下が考えられます。

分割手法具体的な内容と特徴
現物分割特定の著作権をそのまま誰か一人が単独で取得する方法
代償分割著作権という価値の高い財産を誰か一人が取得する代わりに、その人が他の相続人に対して自己の資金から代償金を支払う方法
換価分割著作権そのものを第三者に売却し、得られた現金を相続人で分ける方法

上記以外にも著作権を共同で管理する方法もあります。

とはいえ、著作権はその価値の算定が難しく、また共同で管理すると後々紛争に発展する可能性があります。

そのため、単独で相続し、法人化などして管理を行い、その利益を相続人に分配するなどといった手段を検討してみても良いかもしれません。

5.出版社や管理団体への手続き

遺産分割協議などによって新たな著作権者が確定した後は、関係各所に対して権利の移転を通知し、今後の印税の支払い先を変更する手続きに移行します。

JASRACなど著作権管理団体への連絡

音楽の著作権については、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)などの管理団体に権利が信託されていることがほとんどです。

この場合、著作権そのものではなく、管理団体から分配金を受け取る権利、信託受益権を相続したことになります。

管理団体に対して被相続人の死亡を報告し、戸籍謄本や遺産分割協議書、指定の届出用紙を提出して、権利承継の手続きを完了させます。

出版社との契約内容の確認と名義変更

書籍など著作権の場合、被相続人が生前に出版社と交わした出版契約書が存在します。

まずはこの契約書を探し出し、契約期間や印税率、そして相続が発生した際の条項を確認することが重要です。

出版社に対して著作権の承継者が誰であるかを記載した通知書を送り、印税の支払い口座の変更手続きを行います。

出版社に連絡する際には、今後の増刷や、文庫化、電子書籍化などに関する窓口が誰になるかなどを明確にしておくとトラブルのリスクヘッジになります。

共同相続する場合の権利と文化庁への移転登録

遺産分割で著作権を複数人で共有したいという結論に至る場合もあります。

共有著作権とするには文化庁の著作権登録原簿に相続による移転登録を行ってください。

移転登録を行わないと、第三者に対して対抗することができないので、必ず手続きを行うべきといえます。

なお、著作権法では、共有著作権の場合、その権利を行使するためには共有者全員の合意が必要であるということが規定されています。

そのため、将来作品を映画化したいなどという話が持ち上がった際、共有者が反対し、著作権を行使できず映像化できないなどトラブルが発生する可能性がある点には注意が必要です。

6.相続税申告

著作権やそれ以外の財産が、相続税の基礎控除額を上回る場合には、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に所轄の税務署へ相続税の申告を行わなければなりません。

著作権の評価額を算出するための専門的な計算式を正確に適用し、根拠となる資料を添付して提出します。

申告期限を1日でも過ぎると、無申告加算税や延滞税といった重いペナルティが課されるため、非常に厳密なスケジュール管理が要求されます。著作権の相続税評価額の計算方法

目に見えない著作権の価値を金額に直す作業は、国税庁が定める財産評価基本通達の第148項に基づく独自のルールによって行われます。

著作権評価の基本計算式

著作権の相続税評価額は、以下の計算式で算出することができます。

著作権の評価額 = 年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率

著作権は将来得られるであろう印税収入の予測値から作品を世に出し続けるために必要となる経費や税金を概算で50パーセントとして差し引きます。

それからを現在の価値に割り引いて計算するという順序を踏みます。

年平均印税収入の算出

著作権の相続税評価額となる、年平均印税収入額は、被相続人が亡くなる前までの過去の印税実績を基に算出します。

課税時期(死亡した日)の属する年の前年以前3年間の印税収入の平均額を用いることが実務上の通例となっています。

たとえば、亡くなる前の3年間の印税が、それぞれ300万円、200万円、400万円であった場合、合計900万円を3で割った300万円が年平均印税収入の額となります。

出版社からの支払調書や、確定申告書の控えなどの客観的なデータに基づいて正確に集計することが求められます。

将来の収入期間から評価倍率を求める

著作権の相続税評価額を産出するために必要な評価倍率は、その著作物が今後何年間にわたって印税を生み出し続けるかを予測した上で、将来の受け取り分を現在の貨幣価値に割り引くための特殊な係数です。

この倍率は、国税庁が公表している複利年金現価率の表を用いて決定します。

重要なのは、印税収入等が生ずると推算される期間を何年に設定するかという点です。

著作権の保護期間自体は死後70年と非常に長いですが、すべての作品が70年間売れ続けるわけではありません。

書籍であれば数年で絶版になることもあれば、名作として数十年読まれ続けることもあります。

専門書なのか、流行の小説なのか、作品の性質や過去の販売推移を総合的に分析し、合理的な収入期間を予測して倍率を当てはめるという、極めて高度な判断が求められます。

印税収入がない・不明な場合の評価方法

過去に印税収入の実績がない未発表の作品や、長年絶版となっていて収入が途絶えている作品の場合、評価倍率を求めることができません。

しかし、著作物は、著作者が亡くなったことを契機に作品が再評価され、死後に爆発的な売り上げを記録する事案も少なくありません。

そのような将来の収益化が確実に見込まれる場合には、専門の鑑定人や出版業界の有識者の意見を交え、類似の作品の市場取引価格などを参考に評価額を決定する例外的な措置がとられます。

相続税申告|著作権評価明細書の書き方のポイント

相続税の申告書を作成する際、著作権については国税庁が定めた著作権評価明細書を使用し、計算の根拠を税務署に対して明示しなければなりません。

この明細書には、以下のような項目を記載します。

  • 作品ごとの名称・種類
  • 過去3年間の印税収入の実績額
  • 設定した将来の収入予測期間
  • 適用した複利年金現価率

記入を誤ると再計算を求められるリスクがあるため、正確に記述することが大切です。

また、明細書の記述を裏付けるための客観的な証拠として、以下の書類を添付してください。

  • 出版社から発行された過去の支払調書のコピー
  • 被相続人の過去の所得税確定申告書の写し
  • 将来の収入期間を予測した根拠を示す説明書

上記を添付することによって、税務署に著作権の評価が妥当であると判断されやすくなります。

【著作物の種類別】相続時の特有の注意点

著作権は表現形態や流通するメディアによって特有の問題があります。

それぞれの注意点を確認していきましょう。

音楽・楽曲|JASRACなど信託契約がある場合

音楽や楽曲の著作権に関する注意点として、適切な用語を用いて遺産分割協議書を作成することが挙げられます。

作詞家や作曲家が残した音楽作品の多くは、JASRACなどの著作権管理事業者に権利が信託譲渡されています。

この場合、被相続人は著作権そのものではなく、作品が使用された際に分配金を受け取る権利を有している状態にあります。

したがって、遺産分割協議書を作成する際には、「〇〇の著作権」と記載するのではなく、「JASRACとの信託契約に基づく信託受益権」と適切な用語で記載することを意識してください。

なお、未発表のデモ音源など、管理団体に登録されていない作品については、別途個別の著作権として評価し、管理方法を取り決める必要がある点にも注意が必要です。

キャラクター・イラスト・写真

キャラクターやイラスト、写真などの著作権の注意点として、二次的著作物の権利関係が複雑である点です。

イラストレーターや写真家が制作した視覚的な著作物については、複製だけでなくグッズ化やアニメ化といった商品化権により巨額の利益を生む可能性があります。

そのため、これらの作品については、出版社だけでなく、ライセンスを管理しているエージェント企業や広告代理店などにも契約内容の確認をしてください。

また、キャラクターのデザインなどは商標権として特許庁に登録されている場合があり、著作権とは別の知的財産権としての相続手続き(移転登録)が同時に求められる点にも注意が必要です。

電子書籍・Webコンテンツ

電子書籍やWebコンテンツを相続する際の注意点として、手続きをしないでいると収益が途絶える可能性がある点です。

Kindleなどのプラットフォームで配信されている電子書籍や、有料のメールマガジン、広告収入を得ているブログ記事などのデジタルコンテンツは、相続調査で確認漏れが生じやすい資産です。

これらのプラットフォームとの契約は、アカウントに紐付いていることが多く、利用規約によっては本人の死亡に伴いアカウントが停止され、収益が途絶えるリスクがあります。

したがって、相続人が迅速にプラットフォームの運営会社に連絡を取り、アカウントの承継の手続きを行うことが大切です。

著作権の相続に関するよくある質問(Q&A)

著作権の相続に関する質問をまとめてみましたので確認してみてください。

Q. 著作権の保護期間はいつまで?

著作権が法的に保護され、経済的な利益を生み出し続けることができる期間は、原則として著作者の死後70年を経過するまでと定められています。

かつては死後50年でしたが、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の締結に伴う法改正により、2018年12月末から70年に延長されました。

この保護期間が満了すると、著作権は消滅してパブリックドメイン(公共の財産)となり、誰でも自由に無償で利用できるようになります。

複数の人が共同で創作した共同著作物の場合、最後に死亡した人の死後70年まで保護が継続するという特殊な計算が行われます。

Q. 相続人がいない場合、著作権はどうなりますか?

被相続人に法定相続人が誰も存在せず、かつ遺言書による指定もない場合、預貯金などの一般の財産は最終的に国庫に帰属します。

しかし、著作権については著作権法第62条に特別な規定が設けられています。

相続人が不存在であることが確定した場合、その著作権は国庫に帰属するのではなく、その時点で消滅するというルールです。

権利が消滅した作品はパブリックドメインとなり、社会全体で自由に利用されることになります。

これは、国が著作権を管理して印税を徴収するよりも、文化の発展のために広く一般に開放する方が社会的な利益が大きいという思想に基づいています。

Q. 著作権を相続放棄することはできますか?

はい、家庭裁判所に対して相続放棄の手続きを行えば、借金などの負債とともに著作権の引き継ぎを拒否することが可能です。

Q. 相続した著作権を売却した場合の税金はどうなりますか?

相続によって引き継いだ著作権を、第三者の企業などに売却して現金化した場合、その売却によって得た利益は譲渡所得として所得税および住民税の課税対象となります。

ただし、著作権の売却益は総合課税の譲渡所得に分類され、50万円の特別控除額が適用されます。

さらに、被相続人が創作してから相続人が売却するまでの期間を通算して5年を超えている場合は、長期譲渡所得として課税対象額が半分に軽減されるという税務上の優遇措置があります。

Q. 生前のうちにできる相続税対策はありますか?

著作権による莫大な印税収入が予想される場合、個人のまま相続を迎えると最高で55パーセントという高額な相続税が課される恐れがあります。

有効な生前対策の一つとして、著作権管理を行うための資産管理会社を設立し、生前のうちに著作権をその法人へ譲渡しておくという方法があります。

法人の所有となれば、著作者が死亡しても著作権自体は法人に残るため、相続税の直接的な課税対象からは外れます。

相続人はその法人の株式を相続することになり、結果として税負担をコントロールしやすくなるメリットがあります。

まとめ

今回は著作権と相続について考えていきました。

著作権の相続は法務と税務の高度な専門知識が複雑に絡み合う領域です。

そのため、相続財産に著作権がある場合には、相続に精通している弁護士や税理士に相談すべきです。

著作権をめぐり、親族間の意見が対立したり、出版社との契約内容を巡る法的な解釈の違いが生じた場合には、著作権に精通した弁護士へ相談した方がいいといえます。

一方著作権の相続税評価が書くなど税金に関するお悩みは税理士に依頼すべきです。

自力で対応するには困難であるため、早期に専門家へ相談することをおすすめします。

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