代襲相続の手続き|必要書類や相続税への影響などについて解説
2026/10/10

親より先に子どもが亡くなっていると、その子に代わって孫が相続権を持つことになります。
このような仕組みを代襲相続といい、通常の相続とは集める書類や相続税の計算が変わります。
今回は、代襲相続人の範囲や手続きに必要な書類などについて解説します。
代襲相続とは?
代襲相続とは、相続人になるはずだった人が相続権を失っているときに、その人の子どもが代わりに相続人になることをいいます。
亡くなった人を被相続人、本来相続人になるはずだった人を被代襲者、代わりに相続する人を代襲相続人と呼びます。
代襲相続が発生する3つのケース
代襲相続が発生する原因は、法律で3つに限られています。
それぞれ確認していきましょう。
被相続人より先に相続人が亡くなっていた
代襲相続が生じるケースとして、被相続人より先に相続人が亡くなっていたことがあります。
たとえば、父が亡くなったとき、その子どもである長男がすでに亡くなっていれば、被相続人からみると孫にあたる長男の子どもが相続人になります。
相続人が相続欠格に当たる
代襲相続は、相続人が相続欠格にあたるときに生じます。
相続欠格とは、被相続人に対する法律に定められた重大な非行行為をした相続人が、法律上当然に相続権を失う制度をいいます。
具体的に欠格事由にあたるものは、次の表のとおりです。
| 区分 | 該当する事由 | 詳細 |
| 1 | 被相続人などを死亡させ、または死亡させようとして刑罰を受けた人 | 自分より先の順位や同じ順位の相続人を狙ったケースも含まれ、たとえば遺産を多く得ようとして兄弟の殺害を図った人も該当します。 |
| 2 | 被相続人が殺害されたと知りながら、警察などに届け出なかった人 | 善悪を判断できない幼い子どもなどは除かれます。また、殺害したのが自分の配偶者や直系の血族であるときも該当しません。 |
| 3 | だましたり脅したりして、被相続人が遺言を書くことを妨げた人 | 遺言を書き直したり取り消したりするのを妨げた人も含まれます。 |
| 4 | だましたり脅したりして、被相続人に遺言を書かせた人 | 被相続人の意思に反して遺言を書き直させたり取り消させたりした人も含まれます。 |
| 5 | 被相続人の遺言書を偽造したり、書き換えたり、捨てたり、隠したりした人 | 該当する行為をした場合に適用されます。 |
相続欠格に当たる人は相続できません。
ただし、その人の子どもは、代襲相続人として相続できます。
相続欠格はその非行行為をした相続人だけが責任を負うべきもので、その子どもである代襲相続人には効果が及ばないと考えられているためです。
相続人が廃除された
相続人廃除とは、被相続人を虐待したり、重大な侮辱を加えたりした相続人の相続権を、家庭裁判所が失わせる制度です。
被相続人が生前に家庭裁判所へ請求するほか、遺言で相続人廃除の意思を示すこともできます。
相続人廃除の効果は、廃除された人だけに及びます。
したがって、廃除された人の子どもは、代襲相続人になることができます。
【要注意】相続放棄では代襲相続は発生しない
本来の相続人が相続権を失う制度として、相続放棄があります。
相続放棄をした人は、初めから相続人でなかったものとみなされ、相続権は被相続人の父母や兄弟姉妹など、相続順位の低い人に移ることになります。
相続人でなかった以上、相続権自体を持っていなかったことになるため、代襲相続は発生しない点に注意してください。
なぜ代襲相続という制度があるのか?
代襲相続という制度は、亡くなる順番によって子や孫の取り分が変わる不公平を防ぐために設けられています。
たとえば、祖父、その息子である父、父の子どもである孫という3世代の家族で考えてましょう。
祖父が先に亡くなれば、祖父の遺産はまず父が相続します。
その後に父が亡くなると、父が受け継いだ財産を孫が相続します。
亡くなる順番どおりであれば、祖父の遺産は父を通じて孫に届くわけです。
ところが、代襲相続がない場合、父が祖父より先に亡くなっていると、孫は祖父の遺産を受け取る機会を失ってしまいます。
亡くなる順番が入れ替わっただけで、孫の受け取る財産がなくなるのは公平とはいえません。
このような不公平を解消するために代襲相続の制度があります。
代襲相続人の範囲はどこまで?孫・甥姪・養子のケース
代襲相続人の範囲は、亡くなった相続人が被相続人とどのような関係であったかによって異なります。
それぞれのケースを確認していきましょう。
ケース1:子どもが亡くなっている場合(孫が代襲相続)
被相続人の子どもが亡くなっているときは、孫が代襲相続人になります。
孫も被相続人より先に亡くなっていれば、ひ孫が相続人になります。
これを再代襲相続といいます。
直系の子孫のことを直系卑属といいます。
直系卑属であれば、再代襲相続に世代の制限はありません。
ケース2:兄弟姉妹が亡くなっている場合(甥・姪が代襲相続)
被相続人の兄弟姉妹が相続人になるのは、被相続人に子どもや孫がおらず、父母や祖父母もすでに亡くなっているときです。
この兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっていれば、その子どもである甥や姪が代襲相続人になります。
兄弟姉妹が亡くなったときに生じた代襲相続では、再代襲相続は認められておらず、1代限りです。
なお、1980年の民法改正までは、兄弟姉妹の再代襲相続も認められていました。
しかし、再代襲相続を認めると際限なく相続人の範囲が広がってしまうという問題があり、廃止されました。
ケース3:養子の子どもに関する代襲相続
養子の子どもが代襲相続人になるかどうかは、被相続人と養子縁組をした日と、養子の子どもが生まれた日のどちらが先かで変わります。
被相続人と養子縁組をした後に生まれた子どもは、被相続人の孫として扱われ、代襲相続人になります。
一方で、養子縁組をする前に生まれていた子どもは、被相続人との間に法律上の親族関係が生じないため、代襲相続人になりません。
たとえば、連れ子のいる人を養子にした場合、その連れ子は代襲相続できません。
代襲相続人の相続分と遺留分の割合
代襲相続人の相続分や遺留分について考えていきたいと思います。
法定相続分の計算方法
代襲相続人の法定相続分は、まず本来の相続人の相続分を求め、それを代襲相続人の人数で割って計算します。
法定相続分とは、民法が定めた遺産の取り分の目安です。
少しわかりにくいので、具体例を見ながら確認していきましょう。
【具体例1】亡くなった次男に代わって孫が相続するケース
被相続人の子どもが亡くなったときの代襲相続について以下を例に考えて行きたいと思います。
一郎さんが亡くなった場合、本来は花子さん、健太さん、翔太さんの3人が相続人になります。
しかし、翔太さんは一郎さんより先に亡くなっているため、翔太さんの子どもである美咲さんと大輝さんが代襲相続人になります。
翔太さんが生きていれば、法定相続分は花子さんが2分の1、健太さんと翔太さんが4分の1ずつでした。
美咲さんと大輝さんは、翔太さんが受け取るはずだった4分の1を2人で分けて相続します。
そのため、美咲さんと大輝さんの相続分は8分の1ずつです。
【具体例2】亡くなった弟に代わって甥と姪が相続するケース
甥と姪が代襲相続する以下のケースについて考えてみましょう。
和夫さんには配偶者も子どももおらず、父母もすでに亡くなっています。
この場合、本来は妹の由美さんと弟の誠さんの2人が相続人になります。
しかし、誠さんは和夫さんより先に亡くなっているため、和夫さんから見て甥と姪にあたる拓也さんとさくらさんが代襲相続人になります。
誠さんが生きていれば、法定相続分は由美さんと誠さんが2分の1ずつでした。
拓也さんとさくらさんは、誠さんが受け取るはずだった2分の1を2人で分けて相続します。
そのため、拓也さんとさくらさんの相続分は4分の1ずつです。
遺留分の有無と計算方法
代襲相続人に遺留分があるかどうかは、本来の相続人に遺留分があったかどうかで決まります。
遺留分とは、遺言の内容にかかわらず、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
遺言によって遺留分を下回る財産しか受け取れなかった代襲相続人は、多く受け取った人に不足分の金銭を請求できます。
この遺留分侵害額請求は、相続の開始と遺留分の侵害を知った時から1年以内に行わなければなりません。
遺留分権があるかの基準
被相続人の子どもに遺留分が認められているため、孫やひ孫として代襲相続する人にもその権利が引き継がれます。
一方、兄弟姉妹には遺留分が認められていないので、甥や姪が代襲相続する場合には遺留分がありません。
計算方法
代襲相続人の遺留分は、相続人全体の遺留分の割合に、代襲相続人の法定相続分をかけて計算します。
相続人全体の遺留分の割合は、相続人が父母や祖父母だけのときは3分の1、それ以外のときは2分の1です。
具体的に確認していきましょう。
【具体例】
上記の場合、代襲相続が発生しなかったときとしたときの遺留分は以下の表のとおりになります。
| 相続人 | 直樹さんが生きているときの遺留分 | 直樹さんが亡くなっているときの遺留分 |
| 夫 正さん | 4分の1 1500万円 | 4分の1 1500万円 |
| 長女 真由美さん | 8分の1 750万円 | 8分の1 750万円 |
| 長男 直樹さん | 8分の1 750万円 | なし |
| 孫 蓮さん | なし | 16分の1 375万円 |
| 孫 結衣さん | なし | 16分の1 375万円 |
直樹さんの遺留分750万円を、蓮さんと結衣さんが375万円ずつ引き継ぎます。
正さんと真由美さんの遺留分は、代襲相続が起きても変わりません。
代襲相続の手続きで必要になる書類
代襲相続の手続きで必要になる書類を紹介します。
基本的な相続手続きで必要な書類
代襲相続であるかどうかにかかわらず、相続手続きでは主に次の書類を求められます。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員が署名し、実印を押した遺産分割協議書
戸籍謄本は、2024年3月から広域交付制度がはじまり、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できるようになりました。
この広域交付と呼ばれる制度で請求できるのは、請求する人本人、配偶者、父母や祖父母、子や孫の戸籍です。
代襲相続で追加で必要になる書類
代襲相続の手続きでは、相続人が本来の相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を追加で集めます。
戸籍を集める理由は、ほかに子どもがいないかを確かめ、代襲相続人の全員を明らかにするためです。
また、甥や姪が代襲相続するときは、集める戸籍がさらに増えます。
- 被相続人に子どもや孫がいないことを示す戸籍謄本
- 被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本
- 被代襲者である兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本
被相続人の父母の戸籍は、被相続人の兄弟姉妹を確認するために使います。
甥や姪が叔父や叔母の戸籍を請求する手続きは、広域交付の対象になりません。
したがって、それぞれの本籍地の市区町村に、窓口か郵送で請求する必要があります。
なお、戸籍がそろったら、法務局で法定相続情報一覧図の写しを交付してもらうと、その後の手続きが楽になります。
法定相続情報一覧図とは、相続人の関係を1枚にまとめ、法務局が内容を証明した書面です。
銀行や法務局にこの写しを出せば、手続きごとに戸籍を出し直す必要がなくなります。
交付の手数料はかかりません。
代襲相続が相続税に与える3つの影響
代襲相続が相続税に与える3つの影響について考えていきたいと思います。
影響1:基礎控除額が増える可能性がある
代襲相続によって法定相続人の数が増えると、相続税の基礎控除額も増えます。
基礎控除額とは、遺産の総額からこの金額を差し引いてよいと定められた額で、3000万円に600万円かける法定相続人の数を足して計算します。
遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
本来の相続人が亡くなっていて、その子どもが2人以上いる場合、法定相続人が増えることになるので基礎控除額が増えます。
影響2:生命保険金・死亡退職金の非課税枠が広がる
生命保険金や死亡退職金の非課税枠は、どちらも500万円かける法定相続人の数で計算します。
したがって、代襲相続によって法定相続人の数が増えると、生命保険金と死亡退職金の非課税枠が大きくなるという影響があります。
影響3:相続税の2割加算の対象になるかが変わる
代襲相続人が孫か甥や姪かによって、相続税の2割加算の対象になるかどうかが変わります。
2割加算とは、被相続人の配偶者と、父母や子どもなどの1親等の血族以外の人が財産を受け取ったときに、相続税額を2割増しにする制度です。
孫は本来この2割加算の対象です。
しかし、代襲相続人として相続する孫は、子どもの立場を引き継ぐため、2割加算の対象から外れます。
代襲相続ではなく、養子縁組によって相続人になった孫は、2割加算の対象になります。
甥や姪は、代襲相続人であっても2割加算の対象です。
被代襲者である兄弟姉妹が、もともと2割加算の対象だったためです。
代襲相続でよくある質問(Q&A)
代襲相続について、よくある質問をまとめました。
Q1. 代襲相続をさせない方法はありますか?
代襲相続人に遺産を渡したくない被相続人は、遺言書を作り、ほかの人に財産を渡すと決めておく方法があります。
甥や姪が代襲相続人になるときは、遺留分がないのでこの方法で遺産を渡さないことができます。
孫が代襲相続人になるときは、遺言書があっても、孫が遺留分侵害額請求をする可能性があります。
Q2. 代襲相続と数次相続の違いは何ですか?
代襲相続と数次相続は、相続人が亡くなった時期が被相続人より前か後かで区別されます。
数次相続とは、被相続人が亡くなった後、遺産分割が終わる前に相続人も亡くなることです。
数次相続では、亡くなった相続人の相続権が、その人の相続人全員に引き継がれます。
2つの違いが表れるのは、亡くなった相続人の配偶者の扱いです。
代襲相続では、本来の相続人の配偶者は相続権を得られません。
一方、数次相続では、亡くなった相続人の配偶者も、その人の相続人として遺産分割の話し合いに加わることができます。
Q3. 未成年の代襲相続人がいる場合はどうすればいいですか?
未成年の代襲相続人は、遺産分割の話し合いに自分だけで加わることができません。
通常は、親権者である親が未成年者に代わって話し合いに参加します。
ただし、未成年の代襲相続人が2人以上いるときは、注意が必要です。
1人の親権者が兄弟全員を代理すると、兄弟の間で取り分が対立するため、利益相反と呼ばれる状態になります。
このときは、家庭裁判所に申し立てて、親権者が代理しない子どもについて特別代理人を選んでもらいます。
Q4. 代襲相続の手続きは自分でもできますか?
代襲相続の手続きは、相続人が自分で進めることもできます。
ただし、通常の相続よりも集める戸籍が多く、相続人同士が疎遠なことも少なくありません。
したがって、戸籍の収集に時間がかかりそうなときや、連絡を取りにくい相続人がいるときは、専門家に依頼することも検討してください。
まとめ
今回は、代襲相続人の範囲や相続分、必要書類、相続税への影響などについて解説しました。
代襲相続が起きると、集める戸籍が増え、法定相続人の数や相続税の計算も変わります。
とはいえ、相続人の範囲の確認や期限のある手続きは複雑になりがちなので、お困りの方は専門家に相談することを検討してください。




