相続放棄の相談は弁護士?司法書士?費用・手続きを比較
2026/10/03

相続放棄を検討するとき、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきか迷う方は少なくありません。
どちらも相続放棄の手続きをサポートできますが、対応できる業務範囲や費用、家庭裁判所での手続きにおける権限には違いがあります。
本記事では、相続放棄を検討した場合、弁護士と司法書士、どちらに依頼すべきか解説します。
相続放棄とは?
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産を一切相続しないことを、家庭裁判所に申述して認めてもらう手続きです。
相続放棄が受理されると、その相続人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。
そのため、借金や未払金などのマイナスの財産だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産を引き継ぐことができなくなります。
なお、相続放棄は、遺産分割協議において財産を受け取らないと合意することとは異なります。
遺産分割協議で財産を受け取らないと合意しても、債権者との関係では相続人として被相続人の債務を負う点に注意が必要です。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。
【早見比較表】相続放棄は弁護士と司法書士どっちに依頼すべき?
相続放棄の手続きは、弁護士と司法書士のどちらにも依頼できます。
ただし、対応できる業務範囲や権限、費用相場が異なります。
主な違いは、以下のとおりです。
| 比較項目 | 弁護士 | 司法書士 |
| 業務範囲 | 相続放棄に関する法律事務全般 | 申述書などの書類作成と戸籍の収集 |
| 費用相場(相続人1人あたり) | 5万円〜10万円程度 | 3万円〜5万円程度 |
| 家庭裁判所での手続き | 代理人として申述できる | 代理人にはなれず、本人名義の書類作成による支援 |
| 照会書への回答 | 代理人として裁判所とのやり取りができる | 助言は可能だが、回答は本人が行う |
| 債権者対応 | 代理人として交渉できる | 原則として交渉の代理はできない |
| 向いているケース | 期限経過後の申述、債権者や相続人とのトラブルがある | 期限内で、トラブルのない相続放棄 |
対応できる業務範囲
弁護士と司法書士の違いの1つ目は、対応できる業務範囲です。
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができるため、相続放棄の申述だけでなく、次のような関連業務にも対応できます。
- 相続財産や債務の調査
- 債権者からの請求への対応
- 他の相続人との紛争の解決
- 相続放棄の有効性が争われた場合の訴訟対応
一方、司法書士が相続放棄で対応できるのは、主に家庭裁判所に提出する書類の作成と、戸籍謄本などの必要書類の収集です。
司法書士は、依頼者の代理人として家庭裁判所の手続きを行うことや、他の相続人と交渉することはできません。
相続放棄の手続きは書類作成が中心となるため、争いのない事案であれば司法書士でも十分に対応できます。
ただし、相続人同士のトラブルや債権者との交渉が予想される場合は、弁護士に依頼する必要があります。
費用相場
弁護士と司法書士の違いの2つ目は、費用相場です。
相続放棄を専門家に依頼した場合の費用相場は、以下の通りです。
■弁護士:相続人1人あたり5万円〜10万円程度
■司法書士で3万円〜5万円程度
なお、弁護士と司法書士の報酬はいずれも自由化されているため、実際の金額は事務所によって異なります。
裁判所での手続きにおける権限の範囲
弁護士と司法書士の違いの3つ目は、裁判所での手続きにおける権限です。
弁護士は、相続人の代理人として家庭裁判所に相続放棄を申述できます。
申述書には代理人として弁護士の名前が記載され、家庭裁判所からの問い合わせの窓口も弁護士となります。
一方、司法書士は、家庭裁判所の手続きについて代理権を持っていません。
そのため、司法書士に依頼した場合は、司法書士が作成した申述書を相続人本人の名義で提出することになります。
家庭裁判所から届く照会書への回答や、追加資料の提出を求められた場合の対応も、本人が行う必要があります。
債権者対応が可能かどうか
弁護士と司法書士の違いの4つ目は、債権者対応です。
被相続人に借金がある場合、相続放棄の手続き中や手続き後に、債権者から相続人に対して請求の連絡が届くことがあります。
弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として債権者に通知を送り、債権者との窓口になることができます。
相続放棄の効力について債権者と争いになった場合も、交渉から訴訟の対応まで任せられます。
一方、司法書士は、原則として債権者との交渉を代理することはできません。
法務大臣の認定を受けた認定司法書士であれば、140万円以下の民事紛争について代理できますが、対応できる範囲は限られます。
債権者からの請求が続いている場合や、請求額が大きい場合は、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
あなたの状況に合う専門家は弁護士?司法書士?
弁護士と司法書士のどちらに依頼すべきかは、相続放棄に関するトラブルの有無や、手続きの難易度によって変わります。
それぞれへの依頼がおすすめなケースを紹介します。
司法書士への依頼がおすすめなケース
司法書士への依頼がおすすめなケースは、以下のとおりです。
- 熟慮期間内で、期限まで余裕がある
- 相続人同士のトラブルがない
- 債権者から督促や請求を受けていない
- 費用をできるだけ抑えたい
相続放棄の多くは、必要書類をそろえて申述書を提出すれば受理されます。
争いのない事案では、司法書士に書類作成と戸籍の収集を依頼することで、費用を抑えながら手続きを進められます。
また、相続放棄をしない他の相続人が不動産の相続登記を予定している場合は、登記の専門家である司法書士に家族でまとめて相談できる点もメリットです。
弁護士への依頼がおすすめなケース
弁護士への依頼がおすすめなのは、次のようなケースです。
- 熟慮期間が経過している、または経過しそう
- 債権者から督促や請求を受けている
- 他の相続人との間でトラブルがある
- 単純承認とみなされる行為をしてしまった可能性がある
- 本人が家庭裁判所とのやり取りを行うことが難しい
熟慮期間の経過後に相続放棄をするには、期限内に申述できなかった事情を家庭裁判所に説明する必要があり、法的な主張の組み立てが重要になります。
また、相続財産を処分した可能性がある場合は、その行為が単純承認にあたるかどうかの法的判断が必要です。
このようなケースでは、代理人として手続きを進められる弁護士に依頼するほうが安心です。
専門家への相談から相続放棄完了までの流れ
専門家に相続放棄を依頼した場合、一般的には以下の流れで手続きが進みます。
STEP1:無料相談・問い合わせ
相続放棄を専門家に依頼する場合、事務所へ無料相談・問い合わせを行います。
電話やメール、ウェブサイトの問い合わせフォームなどから、法律事務所や司法書士事務所に連絡します。
熟慮期間には期限があるため、相続放棄を検討し始めた段階で早めに問い合わせることが重要です。
STEP2:状況のヒアリング
専門家に相談することが決まったら、事務所に行き状況を伝えます。
専門家からは、被相続人との関係や相続財産の内容、債権者からの連絡の有無などを質問されることになると思います。
この内容をもとに専門家から依頼する業務の範囲と費用が提示されます。
STEP3:必要書類の収集
相続放棄の申述書に添付する主な書類は、以下のとおりです。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
申述人と被相続人の関係によっては、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などが追加で必要になります。
専門家に依頼すれば、戸籍謄本などの収集を代行してもらえるため、本人の負担を軽減できます。
収集した書類をもとに、専門家が相続放棄の申述書を作成します。
STEP4:家庭裁判所への申述
相続放棄の申述は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
申述書と必要書類は、家庭裁判所の窓口に持参するか、郵送で提出します。
弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人として申述します。
司法書士に依頼した場合は、司法書士が作成した申述書を本人の名義で提出します。
申述は熟慮期間内に行う必要があるため、提出日には注意が必要です。
STEP5:裁判所からの照会書への対応
申述後、家庭裁判所から申述人に対して照会書が送付ます。
照会書は、相続放棄が本人の意思によるものか、相続財産を処分していないかなどを確認するための書面です。
照会書が届いたら、内容を確認し、期限までに回答して返送します。
回答の内容によっては、単純承認とみなされる行為をしたと判断され、相続放棄が認められないおそれがありますので注意してください。
STEP6:相続放棄申述受理通知書の受領
家庭裁判所が相続放棄の申述を受理すると、相続放棄申述受理通知書が送付されます。
この通知書が届いた時点で、相続放棄の手続きは完了です。
債権者から相続放棄を証明する書類の提出を求められた場合は、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の交付を申請できます。
受理証明書の交付手数料は、1通150円です。
相続放棄に関するよくある質問
相続放棄に関するよくある質問をまとめてみましたので確認してみてください。
Q. 3ヶ月の期限を過ぎてしまったら、もう相続放棄できませんか?
熟慮期間を過ぎた場合でも、相続放棄が認められる可能性はあります。
判例は、相続人が相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合には、熟慮期間は相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識できた時から起算するとしています(最高裁昭和59年4月27日判決)。
ただし、この場合は期限内に申述できなかった事情を、申述書や上申書で具体的に説明する必要があります。
熟慮期間を過ぎてしまった場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
Q. 故人の借金だけを放棄することはできますか?
相続放棄では、借金などのマイナスの財産だけを放棄することはできません。
相続放棄をすると、プラスの財産も含めてすべての財産を相続しないことになります。
借金を相続財産の範囲内でのみ返済したい場合は、限定承認を検討することになります。
Q. 相続放棄をしても生命保険金は受け取れますか?
受取人として特定の相続人が指定されている死亡保険金は、受取人の固有の財産であり、相続財産には含まれません。
したがって、相続放棄をしても、受取人に指定されている人は死亡保険金を受け取ることができます。
一方、被相続人が受け取るはずだった入院給付金などは相続財産に含まれるため、相続放棄をすると受け取れません。
Q. 費用は誰が支払うのですか?
相続放棄の費用は、原則として相続放棄をする本人が負担します。
相続人が複数いる場合は、相続放棄をする人がそれぞれ費用を負担するのが一般的です。
注意したいのは、専門家への報酬を被相続人の預貯金などの相続財産から支払うことです。
相続財産から支払うと、相続財産の処分にあたるとして単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがありますので注意してください。
Q. どのタイミングで専門家に相談すべきですか?
専門家への相談は、相続放棄を検討し始めた段階で、できるだけ早く行うことが望ましいです。
熟慮期間は3か月しかなく、戸籍の収集や相続財産の調査には時間がかかることがあります。
また、相談前に相続財産を処分してしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があります。
被相続人の財産には手を付けずに、早めに専門家に相談しましょう。
Q. 親に借金がある場合、事前に対策はできますか?
相続放棄は相続が開始した後にしかできず、親が生きている間に相続放棄をすることはできません。
生前に相続人同士で相続を放棄する旨の合意書を作成しても、法的な効力はありません。
ただし、生前にできる対策として、次のようなものがあります。
- 親の財産と借金の内容を把握しておく
- 親自身が債務整理を行い、借金を減らしておく
- 相続人を受取人とする生命保険に加入してもらう
借金の全体像を把握しておけば、相続が開始した後に相続放棄をすべきかどうかを速やかに判断できます。
まとめ
今回は、相続放棄の相談先として弁護士と司法書士のどちらを選ぶべきかについて解説しました。
期限内で争いのない相続放棄であれば、書類作成を中心に支援する司法書士に依頼することで、費用を抑えながら手続きを進められます。
一方、熟慮期間の経過後の申述や、債権者・他の相続人とのトラブルがある場合は、代理人として対応できる弁護士への依頼が適しています。
不安がある場合には弁護士や司法書士に相談することを検討してください。
相続には、期限が決まっている手続きが複数あります。相続税の申告は10か月以内、相続登記は3年以内が義務化され、過ぎると過料の対象になります。何から手をつければよいか分からない段階でも、ご状況をお伺いして適した専門家をお探しします。
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