飲食店開業の資格・許認可
2026/10/06

飲食物を提供する店舗を営業するためには、管轄する行政機関から法的な許可を取得し、必要な資格者を配置しなければなりません。
本記事では、飲食店開業前に求められる資格について解説します。
開業前に必ず取得すべき資格
飲食店を開くためには、店舗ごとに責任者となる以下のような管理者を配置する必要があります。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
それぞれ確認していきましょう。
食品衛生責任者|すべての飲食店に1名必要
食品衛生責任者とは、施設内の衛生管理や食中毒予防の取り組みを統括する役割の資格者をいいます。
食品衛生法により、規模の大小にかかわらずすべての飲食店において店舗ごとに1名以上の設置が義務付けられています。
調理師や栄養士、製菓衛生師などの国家資格を保有している場合は、試験無しで食品衛生責任者になることができます。
資格を持たない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が開催する6時間程度の講習会を受講して修了すれば取得可能です。
講習会は予約が混み合う傾向があるため、開業の数か月前までに日程を確認して受講を済ませておく必要があります。
防火管理者|収容人数30名以上の店舗で必要
防火管理者はとは、多数の人が出入りする建物において火災の発生を防ぎ、消防計画の作成や避難訓練を指揮する責任者のことをいいます。
飲食店の従業員とお客を合わせた店舗全体の収容人数が30名以上となる場合に設置が義務付けられます。
収容人数の計算は、従業員数に客席数を足して算出します。
店舗の床面積が300平方メートル未満の場合は乙種防火管理者、300平方メートル以上の場合は甲種防火管理者の講習を受ける必要があります。
消防署が実施する1日から2日程度の講習を受講して修了証を受け取ることで資格が得られます。
飲食店営業許可
飲食店営業許可とは、食品衛生法に基づいて店舗が安全に飲食物を調理・提供できる基準を満たしていることを保健所長が認める公的な許可です。
許可を得ずに営業を行うと、2年以下の拘禁刑、または200万円以下の罰金が科される可能性があります。
手続きの流れを表にまとめてみましたので確認してください。
| 手続きの流れ | 実施する内容 | 目安となる時期 |
| 事前相談 | 設計図面を持参して設備基準の確認 | 工事着工の2週間から1か月前 |
| 申請書類提出 | 必要書類の提出と検査日時の確定 | 完成予定の1週間から10日前 |
| 施設検査 | 保健所職員による現地での立入確認 | 店舗工事の完了直後 |
| 許可証交付 | 営業許可証の受け取りと営業開始 | 検査合格から数日から1週間後 |
保健所への事前相談
内装工事の契約を結ぶ前に店舗の設計図面を持参して保健所の衛生課担当者に見てもらってください。
保健所には、厨房と客席の区画、手洗い器の設置数や蛇口の形状、扉付き食器棚の有無など細かい施設基準が定められています。
工事が終わった後に基準を満たしていないことが判明すると、壁の作り直しや給排水設備の再工事など多額の追加出費が発生します。
無駄な工事を防ぐため、必ず図面の作成段階で保健所の窓口へ図面を持ち込み、基準に合致しているかの確認が必要です。
申請書類の準備と提出
店舗の完成予定日の1週間から10日ほど前に、完成後の店舗の検査を受けるために必要な書類一式を保健所に提出し、検査日を予約します。
提出に必要な書類の一般的な項目は以下の通りです。
- 営業許可申請書
- 施設の構造および設備を示す図面
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類
- 水質検査成績書(貯水槽や井戸水を使用する場合)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 申請手数料
申請手数料は自治体や業態によって異なりますが、概ね1万5000円から2万円程度を窓口で納付します。
店舗の施設検査
店舗の施設検査は、保健所の食品衛生監視員が実際に店舗を訪れ、図面通りに施設が作られているかを目視で確認する検査です。
検査日には店舗の工事が完全に終了し、電気や水道、ガスが開通して厨房機器が稼働する状態にしておく必要があります。
検査官は手洗い器のお湯が出るか、冷蔵庫に温度計が設置されているか、排水設備にゴミ受けがついているかなどを細かくチェックします。
検査時に不備が見つかった場合は再検査となり、開業日が遅れる原因となるため、事前相談通りの施工を徹底しておくことが大切です。
営業許可証の交付
営業許可証の交付とは、施設検査に合格した後に保健所から正式な許可証が発行される手続きを指します。
検査合格後、許可証が実際に手元に届くまでには数日から1週間程度の日数がかかります。
原則として、営業許可証が交付されて初めて店舗での営業を開始することが認められます。
受け取った営業許可証は、店内の見やすい場所に額縁などに入れて掲示することが義務付けられています。
保健所への営業許可申請における手続きの進行と目安期間は以下の表の通りです。
提供サービスによって必要な追加の許可・届出
飲食店の営業形態や扱う商品によっては、通常の飲食店営業許可に加えて別の届出や許可が必要となります。
無届での営業は法令違反となるため、自店のサービス内容を正確に把握して手続きを行う必要があります。
深夜0時以降にお酒を提供する場合|深夜酒類提供飲食店営業開始届
深夜酒類提供飲食店営業開始届は、深夜(午前0時から午前6時)に酒類をメインで提供する店舗が警察署へ提出する届出です。
居酒屋やバーなどが該当し、店舗を管轄する警察署の生活安全課へ営業開始の10日前までに提出しなければなりません。
この届出を行う場合、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づき、住居専用地域などの営業禁止地域に出店していないことが要件となります。
また、客席の床面積が1室あたり9.5平方メートル以上あることや、店内の見通しを妨げる仕切りがないことなど構造上の制限も課されます。
手続きを怠って深夜営業を行うと無届営業として処罰されるため、事前の地域確認が必要です。
パンや菓子をテイクアウト販売する場合|菓子製造業許可
菓子製造業許可は、店舗で手作りしたパンやケーキ、クッキーなどをテイクアウト用として包装して販売する際に必要となる保健所の許可です。
店内で飲食させるだけであれば通常の飲食店営業許可の範囲で対応できますが、持ち帰り用として製造販売する場合は別の許可基準が適用されます。
菓子製造業の許可を得るためには、飲食店用の調理場とは別に専用の製造室を区画して設けなければならない自治体が多く存在します。
設計段階からテイクアウト販売を想定していないと後からの追加許可取得が難しくなるため、事前相談の際にテイクアウトの意向を保健所へ伝えることが重要です。
その他の主な届出
飲食店を開業する場合、保健所以外に、税務署や消防署、労働基準監督署などへ提出すべき届出があります。
行政機関への主な届出先と提出期限をまとめた一覧は以下の表の通りです。
| 提出先 | 届出・申請の名称 | 提出の期限 |
| 保健所 | 飲食店営業許可申請書 | 店舗完成の1週間から10日前 |
| 消防署 | 防火対象物使用開始届 | 使用開始の7日前まで |
| 警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 深夜営業開始の10日前まで |
| 税務署 | 個人事業の開業届出書 | 開業日から1か月以内 |
| 労働基準監督署 | 労働保険関係成立届 | 労働者を雇い入れた日の翌日から10日以内 |
それぞれ確認していきましょう。
税務署|個人事業の開業届出書・青色申告承認申請書
個人で飲食店を開業する場合、事業を開始した日から1か月以内に管轄の税務署へ個人事業の開業届出書を提出します。
同時に所得税の青色申告承認申請書を提出することで、最大65万円の青色申告特別控除や赤字の3年間繰り越しといった税制上の優遇措置を受けられます。
青色申告の申請期限は開業日から2か月以内と定められているため、開業届と同時の提出がおすすめです。
これらの手続きを適切に行うことで、確定申告時の税負担を大幅に軽減することが可能になります。
消防署|防火対象物使用開始届・火を使用する設備等の設置届
建物やテナントを使用し始める7日前までに、所轄の消防署へ防火対象物使用開始届を提出しなければなりません。
また、大型の厨房機器やボイラー、熱風調理器などを設置する場合には、火を使用する設備等の設置届もあわせて提出します。
消防署の担当者が現地を訪れ、消火器の設置場所や誘導灯の作動状況、避難経路が確保されているかを確認します。
消防法に違反した状態では営業が認められないため、内装業者と連携して消防基準を満たす施工を行ってください。
従業員を雇う場合|労働保険・社会保険の手続き
アルバイトや正社員を1人でも雇用して営業を行う場合、労働保険への加入手続きが義務付けられています。
労働基準監督署へ労働保険の保険関係成立届を提出し、公共職業安定所(ハローワーク)へ雇用保険の適用事業所設置届を提出します。
法人の場合は従業員の人数に関わらず社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必須となり、年金事務所へ届出を行います。
社会保険や労働保険の手続きは専門知識を要するため、手続きが複雑な場合は社会保険労務士に依頼することを検討すべきです。
飲食店開業に関するQ&A
飲食店の開業に関するよくある質問をまとめましたので確認してみてください。
Q1. 調理師免許がなくても飲食店を開業できますか?
調理師免許を持っていなくても飲食店を開業して経営することは法的に可能です。
飲食店を開くために法律上必須となる資格は食品衛生責任者であり、調理師免許の有無は営業許可の条件ではありません。
調理師免許は調理に関する知識や技術を公的に証明する国家資格ですが、免許がなくても調理を行ってお客に料理を提供できます。
ただし、食品衛生責任者の講習を受講して修了証を取得することは必要であるため注意してください。
Q2. 料理未経験からでも飲食店を始めることは可能ですか?
料理の経験がまったくない状態からでも飲食店を開業することは可能ですが、工夫と準備が求められます。
まず、味の管理や原価率の計算、衛生管理の基本知識は経営者自身が身につけておく必要があります。
また、調理工程を簡略化できるオペレーションを構築したり、調理経験のある料理長をスタッフとして雇用する必要があります。
Q3. フランチャイズと個人開業、どちらがおすすめですか?
フランチャイズは、本部の確立されたブランド力や調理マニュアル、仕入れルートを利用できるため、未経験でも失敗のリスクを下げられるメリットがあります。
一方で、加盟金や毎月のロイヤルティの支払いが発生し、本部のルールに従うため独自色を出しにくい制約があります。
個人開業はすべての利益が自分のものとなり自由な経営ができますが、集客やノウハウの確立をすべて自力で行う必要があります。
Q4. 自宅や間借りでの開業はできますか?注意点は?
自宅の一部を改装したり既存の飲食店のアイドルタイムを間借りしたりして開業することは可能です。
自宅開業の場合は家賃を大幅に節約できますが、居住スペースと厨房を完全に壁や扉で区画し、保健所の衛生基準を満たす専用の厨房を作らなければなりません。
また、マンションなどの集合住宅では管理規約によって店舗利用が禁止されているケースが多く注意が必要です。
まとめ
今回は飲食店開業について解説しました。
飲食店を開業するためには、保健所や消防署への法令に基づく許認可手続きが必要です。
正しく手続きを行わないと、開業できなかったり、ペナルティが課されるリスクがあります。
許認可の手続きに不安がある方は、行政書士などの専門家への相談がおすすめです。




