飲食店開業の全体像|流れと費用
2026/10/16

飲食店の開業には多くの準備や費用が必要となります。
開業までの流れや必要な費用の相場、資金調達について知り、計画的に進めていくことが大切です。
本記事では飲食店を開業するときの費用などについて解説します。
飲食店開業までの流れ
一般的に、開業までには半年から1年程度の準備期間を想定してスケジュールを組むことが基本となります。
開業までの大まかなスケジュールと主な実施内容は以下の表の通りです。
| 段階 | 主な実施内容 | 準備期間の目安 |
| 事業計画 | コンセプト設計および事業計画書の作成 | 6か月から12か月前 |
| 資金調達と物件確保 | 融資申込の実施と出店物件の選定・契約 | 4か月から6か月前 |
| 設計・工事施工 | 内装・外装の施工と厨房機器の設置 | 2か月から4か月前 |
| 許認可申請と開店準備 | 保健所等の許認可取得と従業員研修 | 1か月から直前 |
ステップ1:コンセプト設計
はじめに、コンセプト設計を行います。
コンセプト設計とは、店舗が提供する独自の価値や基本方針を明確に定めることです。
考慮すべき主な要素は以下があります。
- 想定するターゲット客層
- 提供する料理の特長と価格帯
- 店舗の内装デザインと空間の雰囲気
- 想定する利用動機や客単価
- 近隣の競合店舗との差別化要素
曖昧なまま物件探しやメニュー開発を進めると、店舗の一貫性が失われ、集客が伸び悩む可能性があります。
したがって、周辺地域の競合状況やターゲット層の行動パターンを十分に調査した上で、自店ならではの強みを明確にすることが大切です。
ステップ2:事業計画書の作成
事業計画書とは、今後の事業展望や資金調達の裏付けを筋道立てて整理した書類のことで、以下のような情報を記載します。
- 創業の動機と経営方針
- 提供する商品やサービスの特長
- 市場規模と周辺環境の分析結果
- 売上計画および経費の見通し
- 資金繰り表と返済シミュレーション
金融機関へ開業資金の融資を申し込む時や、共同経営者と方針を共有する時などに提出を求められます。
作成にあたっては売上予測を過大に見積もることを避け、平日や休日の来店客数、回転率を実態に即して計算することが大切です。
事業計画書の作成や収支シミュレーションに不安がある場合は、税理士などの専門家への相談がおすすめです。
ステップ3:資金計画と資金調達
資金計画を策定する際に算出する主な項目は以下の通りです。
- 自己資金の準備総額
- 初期費用の総支出見積額
- 予備費としての確保資金
- 開業後3か月から6か月分の運転資金
上記を計算して、銀行などの金融機関から借入する金額を決定します。
新規開業などの場合、信用が足りず、地銀などからの借入を断られることがあります。
そのため、日本政策金融公庫から借り入れることをまず、検討することになります。
ステップ4:物件探しと契約
物件探しでは、策定したコンセプトやターゲット層の動線に合致するテナント候補を選定する必要があります。
駅前の商業エリア、オフィス街の路面店、住宅地のロードサイドなどから条件に合う物件を探します。
家賃の安さだけで選んでしまうと、ターゲット層の通行量が少なく集客に苦戦する可能性があるため注意してください。
また、水道メーターの口径や電気容量、ガス配管の規格など、飲食店としてのインフラ設備が不足していないか事前に確認することが大切です。
ステップ5:店舗の設計・工事
物件の内装や外装を整え、厨房機器を配置して営業可能な空間を施工します。
客席の配置や照明計画を行う内装設計と、調理器具やシンクを設置する厨房設計を並行して進めます。
設計段階でホールと厨房の動線を十分に考慮しない場合、配膳の効率が低下し、接客サービスの質を落とす恐れがあるため注意が必要です。
ステップ6:許認可の取得と各種届出
飲食店を営業するためには、法令で義務付けられた許可や届出を行政機関から得る手続きをする必要があります。
店舗の設備が保健所の定める基準を満たしていない場合、手直し工事が発生してオープン日が延期になるリスクが生じるため、内装工事に着手する前の段階で、図面を持参して保健所の窓口へ事前相談を行うことが重要です。
飲食店開業時に必要となる主な届出や許可は以下の記事を参考にしてください。
ステップ7:開業準備とオープン
店舗の完成後にオープン日に向けて原材料の調達やオペレーション確認を行う最終的な開業準備を行います。
具体的には以下の通りです。
- 仕入れ先との契約締結
- メニュー表や販促用チラシの印刷
- 接客トレーニング
- 決済端末の動作確認
- プレオープンによる検証
準備不足のままオープンを迎えると、オペレーションの混乱から顧客満足度を大きく損なう可能性があります。
知人や関係者を招いたプレオープンを実施し、実際の注文から提供までの流れに問題がないか検証することが効果的です。
飲食店開業に必要な資金
飲食店開業に必要な資金の目安割合は以下の表の通りです。
| 資金の分類 | 主な支出項目 | 全体に占める割合の目安 |
| 物件取得費 | 保証金、礼金、仲介手数料、前家賃 | 20%から30% |
| 店舗投資費用 | 内装工事費、厨房設備費、外装看板費 | 45%から60% |
| 開業準備費 | 広告宣伝費、メニュー作成費、備品購入費 | 5%から10% |
| 運転資金 | 数か月分の固定費、材料仕入れ代 | 15%から25% |
開業資金(初期費用)
開業資金のうち初期費用とは、店舗の契約から内外装の工事、厨房設備の導入など、営業を開始するまでに生じるすべての支出をいいます。
初期費用は全体の支出の大部分を占めるため、予算管理を徹底しないと想定金額を超過してしまいます。
物件取得費
物件取得費とは、店舗となるテナントを賃貸借契約する際に、不動産の貸主や仲介業者に対して支払う費用の総額を指します。
飲食店の保証金は、退去時の原状回復費用や家賃滞納のリスクに備えるため、一般的な住居用物件よりも高く設定される傾向があります。
物件取得費の主な内訳と相場の目安は以下の表の通りです。
| 項目名 | 概要 | 金額の相場目安 |
| 保証金(敷金) | 解約時まで貸主に預ける担保金 | 家賃の6か月から12か月分 |
| 礼金 | 契約時に貸主へ支払う謝礼金 | 家賃の1か月から2か月分 |
| 仲介手数料 | 物件を紹介した不動産会社への報酬 | 家賃の1か月分 |
| 前家賃 | 入居月および翌月分の賃料 | 家賃の1か月から2か月分 |
| 造作譲渡料 | 前テナントの設備や内装を買い取る費用 | 50万円から300万円程度 |
居抜き物件を契約する際には、前のテナントオーナーに対して造作譲渡料を支払う契約形態が存在します。
造作譲渡料は設備の年数や状態によって金額が大きく変動するため、設備が正常に動作するかを入念に確認することが大切です。
店舗投資費用
店舗投資費用とは、借りた物件を飲食店として営業できるように改修・施工し、必要な設備を整えるための費用のことです。
客席のテーブルや椅子の設置、壁や床の仕上げ工事、業務用冷蔵庫やガスレンジの購入費用などがこれに該当します。
店舗投資費用は初期費用の中で最も大きな割合を占めるため、過剰な仕様にすると予算超過を招く大きな要因となります。
店舗投資費用の主な構成要素と費用の目安は以下の表の通りです。
| 工事・設備項目 | 工事内容の例 | 費用の相場目安 |
| スケルトン内装工事 | コンクリート状態からの床・壁・配管新設 | 坪あたり50万円から100万円 |
| 居抜き内装改修 | 既存の内装を活かした一部の改装 | 坪あたり20万円から50万円 |
| 厨房設備購入費 | 冷蔵庫、製氷機、コンロ、シンク等の導入 | 150万円から400万円程度 |
| 外装・看板工事 | ファサード改修、看板設置、外灯工事 | 50万円から150万円程度 |
| 什器備品購入費 | テーブル、イス、調理器具、食器、POSレジ | 50万円から150万円程度 |
インフラ設備に不足がある場合、電気の引き込み容量の増設や給排水管の太径化など、追加の工事費用が発生する可能性があります。
契約前に施工業者に現地を見てもらい、インフラの追加工事が必要かどうかを確認しておくことが推奨されます。
運転資金
運転資金とは、オープン後に日々の店舗運営を円滑に維持するために手元に確保しておくべき現金を指し、以下の用途で使われます。
- 毎月の食材仕入れ代金
- 従業員への給与
- 店舗の家賃
- 水道光熱費
開業直後は店舗の知名度が低く、売上が計画通りに推移しない期間が数か月続くことが想定されます。
売上が計画を下回った場合でも支払いが滞らないよう、最低でも3か月から6か月分の固定費を運転資金として確保しておくことが望ましい言われています。
月々の運営で発生する主な経費の内訳と目安割合は以下の表の通りです。
| 経費項目 | 費用の内容 | 月間売上に対する目安割合 |
| 原材料費(仕入れ) | 料理やドリンクに使用する食材・酒類代 | 売上の25%から35% |
| 人件費 | アルバイトや社員への給与・交通費 | 売上の25%から35% |
| 家賃(賃料) | 店舗物件の月額家賃および共益費 | 売上の10%以内 |
| 水道光熱費 | 電気代、ガス代、水道使用料 | 売上の5%から8% |
| 販促費・諸経費 | 広告掲載料、消耗品費、通信費、ゴミ処理代 | 売上の5%から10% |
クレジットカード決済やQRコード決済を利用する顧客が多い場合、売上の入金までに日数を要します。
仕入れ代金や給与の支払い期日に現金が不足しないよう、資金の出入りを事前に把握しておく必要があります。
業態別・規模別の開業費用モデルケース
飲食店開業に必要な費用は、扱うメニューの調理工程や客席の規模によって大きく異なります。
代表的な3つの業態における開業費用の目安比較は以下の表の通りです。
カフェ・喫茶店(約10坪)
カフェや喫茶店は、店舗の空間デザインや世界観が顧客の来店動機に直結しやすい業態です。
照明の配置や内装の質感、家具の選定に予算を配分し、居心地の良い空間を作ることが求められます。
重飲食に比べて大掛かりな排気ダクトやグリストラップを必要としない傾向があり、厨房工事のコストは比較的抑えやすい特徴があります。
ただし、客単価が低く滞在時間が長くなりやすい特徴があるため、席数の確保やテイクアウトメニューの導入など収益性の工夫が大切です。
約10坪のカフェを開業する場合の費用内訳モデルは以下の表の通りです。
| 内訳項目 | スケルトン物件の場合 | 居抜き物件の場合 |
| 物件取得費(家賃25万円想定) | 200万円 | 200万円 |
| 内装・外装工事費 | 500万円 | 200万円 |
| 厨房機器・什器備品費 | 200万円 | 100万円 |
| 開業準備・広告販促費 | 50万円 | 50万円 |
| 運転資金(3か月分確保) | 150万円 | 150万円 |
| 合計金額 | 1100万円 | 700万円 |
高性能なエスプレッソマシンなどの専用設備は高額になることが多いため、新品購入だけでなく中古品やリースの活用も検討できます。
居酒屋・バー(約15坪)
居酒屋やバーは、アルコール類と多彩な一品料理を提供し、幅広い客層をターゲットとする業態です。
カウンター席とテーブル席を効率よく配置し、1人客からグループ客まで受け入れられるレイアウトを構成します。
揚げ物や焼き物に対応する厨房設備や、酒類を保管する冷蔵ショーケースなど、設備投資の幅が広がる傾向があります。
客単価は高めに設定できますが、競合店舗が多いため、立地の選定と独自のメニュー作りが集客の鍵となります。
約15坪の居酒屋を開業する場合の費用内訳モデルは以下の表の通りです。
| 内訳項目 | スケルトン物件の場合 | 居抜き物件の場合 |
| 物件取得費(家賃40万円想定) | 350万円 | 350万円 |
| 内装・外装工事費 | 700万円 | 300万円 |
| 厨房機器・什器備品費 | 300万円 | 150万円 |
| 開業準備・広告販促費 | 80万円 | 80万円 |
| 運転資金(3か月分確保) | 250万円 | 250万円 |
| 合計金額 | 1680万円 | 1130万円 |
居酒屋業態では初期の酒類在庫の確保に一定の資金が必要となるため、仕入れ計画を事前に綿密に立てておく必要があります。
ラーメン店・専門料理店(約10坪)
ラーメン店や専門料理店は、特定の主力商品を高い回転率で提供することを目指す業態です。
カウンター席を中心としたコンパクトな空間で、調理から提供までの動線を効率化します。
スープを炊くための強力なガスコンロや大型換気扇、排水処理用のグリストラップなど、重飲食特有の設備工事が必要となります。
約10坪のラーメン店を開業する場合の費用内訳モデルは以下の表の通りです。
| 内訳項目 | スケルトン物件の場合 | 居抜き物件の場合 |
| 物件取得費(家賃30万円想定) | 250万円 | 250万円 |
| 内装・外装工事費 | 600万円 | 250万円 |
| 厨房機器・什器備品費 | 350万円 | 150万円 |
| 開業準備・広告販促費 | 50万円 | 50万円 |
| 運転資金(3か月分確保) | 200万円 | 200万円 |
| 合計金額 | 1450万円 | 900万円 |
ラーメン店は排気や匂いに関する近隣住民への配慮が必要となるため、ダクトの排気方向や脱臭設備の設置に関して施工業者と十分な確認を行うことが大切です。
開業費用を抑えるポイント
飲食店開業の初期費用を抑えるための主な方法は以下の表の通りです。
| 削減手法 | 主な削減対象 | コスト削減の目安 |
| 居抜き物件の選定 | 内装・外装工事費、厨房設備費 | 300万円から700万円程度 |
| 中古設備・リースの導入 | 初期の一括設備購入費 | 100万円から200万円程度 |
| セルフ施工(DIY) | 塗装工事費、軽微な造作費 | 30万円から100万円程度 |
居抜き物件を最大限に活用する
居抜き物件とは、以前のテナントが使用していた内装や厨房設備、空調などがそのまま残されている物件です。
前の店舗と同ジャンルの居抜き物件を選べば、既存の配管や厨房機器をそのまま流用できます。
スケルトン物件と比較して内装工事費を大幅に圧縮できる上、工事期間が短縮されるため開業前の家賃負担を減らせるメリットがあります。
ただし、残された機器が故障していたり、型式が古くて電気代が高くなったりするリスクもあるため注意が必要です。
中古厨房機器やリースを利用する
飲食店開業の初期費用を抑える手段として、中古厨房機器を使ったり、リース契約を結んだりすることがあります。
厨房機器の調達方法による特徴の比較は以下の表の通りです。
| 調達方法 | 初期費用 | 総支払額 | メリット | デメリット |
| 新品購入 | 高い | 定価・割引価格 | 故障が少なくメーカー保証が充実 | 手元の自己資金が大きく減少する |
| 中古購入 | 安い | 新品の30%から50% | 初期費用を大幅に削減可能 | 保証期間が短く故障リスクがある |
| リース利用 | 0円から小額 | 手数料分やや高め | まとまった現金を温存可能 | 中途解約ができず審査がある |
DIYで内装コストを削減する
壁面の塗装や珪藻土塗り、簡単な飾り棚の設置、テーブルの塗装などのDIYを自分たちで行うことで、人件費を削減できます。
ただし、電気工事やガス工事、給排水管の接続などは専門資格が必要な工事であり、資格を持たない者が作業することは法律で禁じられています。
DIYを検討する際の作業区分は以下の表の通りです。
| 施工の分類 | 推奨される担当者 | 主な作業内容 |
| 資格が必要な工事 | 専門の有資格業者 | 電気配線、ガス配管、給排水管接続、排気ダクト |
| 基礎・構造工事 | 専門の施工会社 | 間仕切り壁の造作、床の土間打ち、サッシ工事 |
| 仕上げ・装飾作業 | オーナーによるDIY | 壁のペンキ塗り、飾り棚の設置、木製家具の塗装 |
まとめ
今回は飲食店の開業費用について解説しました。
飲食店の開業には、物件取得費や店舗投資費用、運転資金など多額の資金が必要となります。
不安な場合は、相談を検討しながら着実に準備を進めていきましょう。





