中小企業の税務調査|対象になりやすい企業と税理士への上手な相談方法
2026/10/24

税務署から税務調査の連絡が来て、何を準備すればよいのか分からず不安を感じている経営者の方もいるはずです。
税務調査は、売上の規模や黒字か赤字かにかかわらず、どの会社にも起こりうる手続きです。
今回は、中小企業の税務調査の仕組みと対象になりやすい企業の特徴、調査で確認されやすい論点、税理士への相談方法を解説します。
中小企業の税務調査とは?
税務調査とは、税務署などの職員が会社の申告内容が正しいかどうかを帳簿や書類で確かめる手続きです。
税務調査の目的と種類、調査で実際に誤りが見つかる割合を順に確認します。
税務調査の目的と申告納税制度
法人税や消費税は、会社が自ら税額を計算して申告し、その申告によって納める税額が確定する仕組みとなっています。
これを申告納税制度といい、国税通則法16条に定められています。
しかし、申告がない場合や申告した税額の計算が法律に従っていない場合は、税務署長が調査をして正しい税額に改めます。
税務調査は、この申告納税制度を支えるための手続きです。
調査では、証拠資料を集め、法律で定められた課税の要件にあてはまる事実があるかを確かめます。
誤りが見つかれば、修正申告を勧められたり、税務署長が更正という処分で税額を改めたりします。
法人税の調査では、法人税だけでなく、消費税、源泉所得税、印紙税もあわせて確認されるのが一般的です。
なお、税務調査の手続きは国税通則法で定められており、原則として、調査の前に日時や場所、対象となる税目と期間などが通知されます。
税務調査の種類:任意調査と強制調査・査察
税務調査は、大きく任意調査と強制調査に分けられます。
一般に税務調査と呼ばれているのは任意調査で、税務署が納税者の協力を得ながら帳簿や書類を確認します。
任意といっても、納税者には調査に応じる義務があり、正当な理由なく質問に答えなかったり検査を拒んだりすると、罰則の対象になります。
強制調査は査察とも呼ばれ、国税局の査察部が担当します。
悪質で多額の脱税が疑われる場合に、裁判官の許可状を得て、捜索や差し押さえをする手続きです。
査察で脱税が確認されると検察庁に告発され、刑事責任を問われることがあります。
実地調査の7割超で非違発見?準備の重要性
国税庁が2025年12月に公表した資料によると、2024年7月から2025年6月までの1年間に、法人税の実地調査は約5万4000件行われました。
そのうち、申告内容の誤りや税法の決まりに沿っていない処理が見つかった件数は約4万2000件で、7割を超えています。
こうした誤りを、税務調査では非違と呼びます。
非違には意図的な不正だけでなく、経費を計上する時期の誤りのような単純なミスも含まれます。
その前の1年間も、約5万9000件のうち約4万5000件で非違が見つかっています。
調査官が会社を訪れて帳簿や書類を確認する実地調査が入れば、多くの会社が何らかの指摘を受けているのが実情です。
調査の連絡が来てから慌てるのではなく、日頃から帳簿と証拠書類を整えておくことが、指摘を減らすことにつながります。
税務調査の対象になりやすい中小企業の特徴
税務調査の対象となる会社は、国税当局が集めた資料情報や、提出された申告書を分析して選ばれます。
一般に、対象になりやすいとされる特徴は、次の5つです。
特徴①売上が急増した
売上が前年より大きく伸びた会社は、税務調査の対象となりやすい傾向にあります。
売上が増えれば利益も増えるはずなのに、申告された利益が売上の伸びに見合っていなければ、売上の計上漏れや経費の過大計上が疑われるためです。
急成長の時期は、経理の体制が事業の拡大に追いつかず、記帳の誤りが起きやすいタイミングでもあるため、注意しましょう。
特徴②数期にわたり不自然な勘定科目の増減があった
国税当局は、同じ会社の複数年の申告内容を並べて、勘定科目ごとの推移を確認しています。
売上が横ばいなのに外注費だけが毎年増えている、特定の年だけ雑費や交際費が急に増えている、といった動きは説明を求められやすくなります。
特徴③多額の設備投資や不動産の売買を行った
高額な設備の購入や不動産の売買は、取得価額の計算や修繕費か資産の取得かの区分、売却益の計算などで誤りが起きやすい取引です。
不動産の取引は登記によって外部から確認しやすいため、申告内容との照合も行われやすくなります。
特徴④前回の調査で多くの指摘を受けた
前回の税務調査で多額の申告漏れや不正を指摘された会社は、指摘された点が改善されているかを確かめられるケースが少なくありません。
そのため、次の調査までの間隔が短くなりやすいとされています。
特徴⑤個人の資金移動が頻繁にある
経営者個人や家族の口座と、会社の口座との間でお金が頻繁に動いている場合、税務調査で確認されやすくなります。
会社の売上が個人の口座に入金されていないか、家族名義の口座に会社の資金が移されていないかは、調査の定番の確認事項です。
経営者の個人資産が、役員報酬などの収入に比べて急に増えている場合も、資金の出どころを尋ねられることがあります。
【論点別】税務調査で狙われやすい6つのポイントと事前対
税務調査では、決算書のすべてを均等に確認するのではなく、誤りが起きやすく、税額への影響が大きい項目を重点的に確認します。
調査で狙われやすい6つのポイントと、それぞれの事前対策は次のとおりです。
①売上計上漏れ:期末の売掛金は適切か
売上の計上漏れは、税務調査で狙われやすいポイントです。
売上は、代金を受け取った時点ではなく、商品の引き渡しやサービスの提供が終わった時点で計上するのが原則です。
期末に納品が終わっているのに、請求や入金が翌期になった売上を当期に計上していない、という誤りはよく見られます。
対策として、期末前後の納品書や請求書の日付と、売上を計上した日付を照らし合わせておきましょう。
②貸倒損失・貸倒引当金:損金算入の要件は満たしているか
税務調査では、回収できなくなった売掛金などを損金にした処理について、税法の要件を満たしているかが確認されます。
経理上は回収できないと判断していても、要件を満たしていなければ損金として認められず、否認されて追徴課税の対象になります。
貸倒損失として損金にできるのは、主に次の3つの場面です。
- 法的な手続きや関係者の協議、書面による債務免除で債権が切り捨てられた場合
- 債務者の資産状況や支払能力から、債権の全額が回収できないことが明らかな場合
- 取引停止から1年以上たっても弁済がない売掛債権など、一定の要件を満たす場合
2つ目は債権の全額が対象で、一部だけを貸倒損失にすることは認められません。
貸倒引当金は、将来の貸し倒れに備えて費用を見積もるものですが、税務上計上できるのは資本金1億円以下の中小法人などに限られます。
対策として、取引先への督促の記録や、債務免除を通知した書面などを保存しておくことが有効です。
③棚卸資産:実地棚卸と評価方法は正しいか
税務調査では、期末の在庫が正しく数えられているか、届け出た評価方法で継続して評価しているかが確認されます。
在庫の計上漏れが見つかれば、その分だけ利益を少なく申告していたとして否認されます。
青色申告の法人は、期末に実際に在庫を数える実地棚卸をしなければなりません。
評価方法を届け出ていない場合は、期末に最も近い時期に仕入れた単価で評価する、最終仕入原価法を使うことになります。
見落とされやすいのは、製造業の仕掛品や建設業の未成工事支出金、情報サービス業の制作途中のソフトウェアにかかった費用などです。
対策として、棚卸表を作って数量と単価の根拠を残し、事業所や倉庫ごとに漏れがないかを確認しましょう。
④経費の妥当性:架空経費・私的利用を疑われないために
架空の経費や私的な支出を会社の経費にしていないかは、調査の中心となるポイントです。
調査官は、経費の金額だけでなく、取引の実態があるかを次のような点から確かめます。
- 仕入れや外注の数量が売上の数量と合っているか
- 発注した内容が取引先の業務内容と合っているか
- 取引の金額が相場や過去の取引と比べて不自然でないか
- 支払いの方法や時期に不自然な点がないか
領収書についても、市販の用紙で発行番号や印がないものなど、取引先が発行したと確認しにくいものは、架空の取引を疑われる原因になります。
架空の取引では、領収書はあっても請求書や納品書がないことが多いため、書類がそろっているかも確認されます。
対策として、見積書や注文書などをそろえて保存し、取引の流れを示せるようにしておきましょう。
⑤役員報酬・退職金:役務提供の実態はあるか
税務調査では、役員や家族への給与について実際に働いている実態があるかが確認されます。
勤務の実態がない家族に給与を払っていれば、実態がないものとして、否認されます。
調査では、以下の点に基づき実態の確認が行われます。
- 仕事の内容
- 成果物
- 勤務場所
- ほかの従業員との給与額の比較
- 住民税や社会保険料の手続き状況
役員報酬は、毎月同じ額を支払う定期同額給与など、法人税法で定められた形で支給しなければ損金にできません。
役員の退職金も、在任期間や功績に照らして高すぎる部分は、損金にできないことがあります。
対策として、業務日報や出勤の記録、取締役会の議事録など、役務の提供を示す資料を残しておくことが重要です。
⑥電子取引データ:メールやクラウド上の証憑は適切に保存されているか
税務調査では、メールやクラウドサービスでやり取りした取引のデータが、法律の決まりどおりに保存されているかが確認されます。
帳簿や書類が十分にそろっていない場合などには、メールのやり取りそのものが確認されることもあります。
取引先とメールやクラウドサービスで見積書や請求書、領収書などをやり取りした場合、その取引は電子帳簿保存法で電子取引とされます。
電子取引のデータは、紙に印刷して保存するのではなく、データのまま保存しなければなりません。
この保存義務は、電子帳簿保存法の承認を受けた会社に限らず、すべての法人にあります。
決まりを守っていないと、青色申告の承認を取り消される可能性もあるため、注意しましょう。
対策として、保存の対象と方法を社内規程で定め、取引の日付、金額、取引先で検索できる状態で保存しておきましょう。
税務調査で税理士に相談・依頼するメリットと費用対効果
税務調査には会社だけで対応することもできますが、税理士に立ち会いを依頼すると、次のようなメリットがあります。
依頼には費用がかかるため、得られる効果と比べて判断してください。
メリット①精神的な安心感を得て本業に集中できる
税務調査の当日は、経営者が調査官からの質問に答える場面が多くあります。
税理士が関与すれば、事前に想定される質問や準備すべき資料を確認でき、当日も税理士が説明を補えます。
調査官とのやり取りの窓口を税理士に任せれば、日程の調整や追加資料の提出にかかる手間も減り、経営者は本業に時間を使いやすくなります。
メリット②法的な根拠に基づき的確な主張ができる
調査官の指摘が、常に正しいとは限りません。
税務の判断には、法令や通達の解釈が分かれる場面もあります。
税理士は、会社の処理が法令のどの規定にもとづいているかを示し、会社の立場を説明できます。
メリット③不当な指摘や過大な追徴課税を防げる
税務調査の終わりには、指摘事項にもとづいて修正申告を勧められることがあります。
修正申告をすると、その内容について、後から不服申立てをすることはできません。
税理士は、指摘の内容が妥当か、修正の範囲や金額が適切かを確認したうえで、修正申告に応じるかどうかのアドバイスをしてくれます。
メリット④調査を乗り越え、経営改善の機会に変えられる
調査で指摘された点は、会社の経理や管理体制の弱いところを示しています。
税理士と一緒に原因を整理し、記帳の方法や書類の保存の仕組みを見直せば、次の調査への備えになるだけでなく、日々の数字の正確さも上がります。
税理士への上手な相談方法
税理士に依頼するときは、以下の3点を押さえておくと、話を進めやすくなります。
依頼のタイミングは?
税務調査の事前通知を受けたら、すぐに相談するのが基本です。
これは、通知から調査の当日までの期間は限られており、税理士が帳簿や書類を確認し、論点を洗い出す時間を確保する必要があるためです。
調査の日時は、業務の都合などがあれば、税務署と相談して変更できる場合があります。
準備の時間が足りないときは、税理士を通じて日程の調整を申し出る方法もあります。
理想は、調査の連絡が来る前から税理士に関与してもらい、日頃の申告の段階で誤りを防いでおくことです。
税理士に依頼できる業務範囲
税理士は、税務代理として、会社に代わって税務署とのやり取りをしたり、税務調査に立ち会ったりできます。
税理士が代理をする際は、税務代理権限証書という書面を税務署に提出します。
依頼の形には、スポット依頼と顧問契約の2つがあります。
スポット依頼
スポット依頼は、税務調査への対応だけを単発で依頼する方法です。
顧問税理士がいない会社が、調査の連絡を受けてから依頼する場合などに使われます。
依頼を受けた税理士は、過去の帳簿や申告の内容を短い期間で把握する必要があるため、早く依頼するほど準備に余裕ができます。
顧問契約
顧問契約は、日頃の記帳の確認や決算、申告を継続して依頼する方法です。
税理士が会社の取引や処理の経緯を把握しているため、調査の際にも説明がしやすくなります。
また、税理士が申告書の作成に関する書面を添付する書面添付制度を使うと、税務署は調査の事前通知の前に、まず税理士の意見を聴くことになっています。
意見を聴いた結果、疑問が解消すれば、実地調査に進まずに終わることもあります。
税務調査対応にかかる費用相場
税務調査の対応費用は事務所ごとに料金体系が異なり、一律の相場はありません。
費用は、主に次のような要素で決まります。
- 調査の日数と税理士が立ち会う日数
- 会社の売上規模や取引の量
- 調査の対象となる税目と期間
- 顧問契約の有無
一般的な費用相場の目安は以下の通りです。
| 項目 | スポット依頼顧問契約なし | 顧問契約あり |
|---|---|---|
| 事前準備・打ち合わせ | 3万〜10万円確認する年数や資料が多いと10万〜30万円 | 無料〜3万円帳簿を把握済みのため短時間で済む |
| 調査当日の立ち会い1日あたり | 5万〜10万円 | 3万〜5万円顧問料に含む事務所もある |
| 税務署との意見調整・交渉 | 通常は立ち会い費用に含む長引くと5万〜20万円 | 通常は追加なし長引くと追加費用がかかることも |
| 修正申告書の作成必要な場合・1期あたり | 5万〜20万円 | 3万〜10万円 |
| 総額費用の目安立ち会い2日・修正申告1期 | 18万〜50万円交渉が長引くと上乗せ | 9万〜23万円別途、月額の顧問料 |
顧問契約を結んでいる場合は、立ち会いの費用が毎月の報酬に含まれるのか、別途請求されるのかを確認しておきましょう。
見積もりを受けるときは、事前の準備から当日の立ち会い、調査後の修正申告の作成まで、どこまでが料金に含まれるかを確かめておくと、後から追加の費用が生じにくくなります。
中小企業の税務調査に関するよくある質問
中小企業の税務調査について、まとめてみたので確認してください。
Q1. 税務調査はどのくらいの頻度で来るのですか?
頻度は法律で決まっているわけではありません。
一般には3年から5年に1度程度といわれますが、会社の規模や申告の内容によって異なります。
Q2. 顧問税理士がいれば税務調査は来ませんか?
顧問税理士がいても、税務調査の対象になることはあります。
ただし、日頃から税理士が申告内容を確認していれば、申告時の誤りや調査での指摘を減らしやすくなります。
Q3. 帳簿や資料がない場合はどうなりますか?
帳簿や証拠書類がないと、経費として認められないものが増え、追徴税額が大きくなるおそれがあります。
青色申告の法人は、帳簿の不備を理由に、青色申告の承認を取り消されることもあります。
Q4. 税務調査は断れますか?
正当な理由なく税務調査を拒むことはできず、拒んだ場合は罰則の対象になります。
ただし、業務の都合などで日程が合わない場合は、税務署と相談して日時を変更できることがあります。
Q5. 赤字決算でも税務調査はありますか?
赤字の会社も税務調査の対象になります。
法人税のほか、消費税や源泉所得税、印紙税も調査の対象となり、赤字の金額が正しいかどうかが確認されます。
まとめ
税務調査は、申告納税制度のもとで、会社が申告した税額が正しいかを確かめるための手続きです。
法人税の実地調査では7割を超える会社で非違が見つかっており、どの会社にとっても無関係な手続きではありません。
売上の計上時期、在庫の評価、経費の実態、預金の名義など、調査で確認される点はある程度決まっています。
調査への備えや、通知を受けたあとの対応に不安がある場合は、税理士への相談を検討してください。




