【企業担当者向け】年末調整の書き方|確定申告との違いも解説

2026/10/20

【企業担当者向け】年末調整の書き方|確定申告との違いも解説

年末調整は、会社が従業員に代わって1年分の所得税を精算する手続きです。

今回は、年末調整の進め方と必要書類の書き方、確定申告との違いを、企業の担当者の方に向けて解説します。

年末調整とは?

年末調整とは、毎月の給与から天引きした所得税の合計と、1年間の給与に対して本来かかる所得税との差額を、年の最後の給与で精算する手続きです。

以下で、具体的に確認していきます。

なぜ年末調整が必要なのか?源泉徴収との関係

年末調整が必要なのは、毎月の天引きだけでは1年分の所得税を正しく納められないからです。

所得税は1月から12月までの1年間の所得に対してかかりますが、会社は給与を払うたびに、その時点で分かる情報だけで税額を見積もって天引きしています。

しかし、実際には、残業代や賞与で月ごとの支給額は変わります。

年の途中で結婚して扶養する家族が増えることもあれば、従業員が個人で生命保険料を払っていることもあります。

こうした事情は毎月の天引き額に反映されていないため、12月の時点で天引きの合計と本来の税額とにずれが生じます。

この見積もりと1年分の本来の税額との差を埋めるため、給与を支払う会社には年末調整が義務付けられています。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は、どちらも1年分の所得税を確定させる手続きですが、手続きをする人や時期、対象になる所得などが異なります。

主な違いは次の表のとおりです。

項目年末調整確定申告
手続きをする人会社従業員本人
時期年最後の給与の支払時翌年2月16日から3月15日
対象の所得その会社から受け取った給与のみ給与以外も含むすべての所得
受けられる控除一部に限られるすべての所得控除

例外的に、給与所得者でも給与の収入が2000万円を超える方や、給与以外の所得が20万円を超える方は確定申告が必要です。

年末調整は、確定申告をしなくて済む人の手続きを会社が代わりに進める仕組みだと考えると、両者の関係がつかみやすくなります。

年末調整で受けられる控除 

年末調整では、従業員から提出された申告書をもとに、次の表の控除を反映できます。

控除の名称内容
基礎控除本人の合計所得金額に応じて受けられる控除
配偶者控除合計所得金額が62万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除
配偶者特別控除配偶者の合計所得金額が62万円を超え133万円以下の場合に受けられる控除
扶養控除16歳以上で、合計所得金額が62万円以下の扶養親族がいる場合に受けられる控除
特定親族特別控除19歳以上23歳未満の親族の合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合に受けられる控除
障害者控除本人や配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる控除
寡婦控除夫と離婚または死別したあと再婚していない女性で、一定の要件を満たす場合に受けられる控除
ひとり親控除婚姻をしておらず、生計を一にする子がいる場合に受けられる控除
勤労学生控除本人が学生で、所得が一定額以下の場合に受けられる控除
社会保険料控除本人や家族の健康保険料、国民年金保険料などを支払った場合に受けられる控除
小規模企業共済等掛金控除iDeCoや小規模企業共済の掛金を支払った場合に受けられる控除
生命保険料控除生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に受けられる控除
地震保険料控除地震保険の保険料を支払った場合に受けられる控除
所得金額調整控除給与の収入が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合などに受けられる控除
住宅借入金等特別控除の2年目以降住宅ローンの年末残高に応じて、所得税額から差し引ける控除

確定申告でのみ受け取れる控除 

以下の控除は、年末調整では扱えません。 

控除の名称内容
医療費控除1年間に支払った医療費が、原則として10万円を超える場合に受けられる控除
セルフメディケーション税制対象となる市販薬の購入費が、1年間で1万2000円を超える場合に受けられる控除で、医療費控除とはどちらか一方しか選べない
寄附金控除ふるさと納税など、国や地方公共団体、特定の団体に寄附をした場合に受けられる控除
雑損控除災害や盗難などで、住宅や家財などの資産に損害を受けた場合に受けられる控除
住宅借入金等特別控除の1年目住宅ローンを組んで住宅を取得した最初の年は、確定申告で手続きする必要がある

従業員には、年末調整後に交付する源泉徴収票を使って確定申告をするよう案内しましょう。

年末調整の対象者は?

年末調整の対象かどうかは、一定の指標にもとづき決まります。

以下で、対象となる従業員とそうでない従業員の条件を確認しましょう。

対象となる従業員

年末調整の対象となるのは、原則として、会社に給与所得者の扶養控除等申告書を提出していて、12月の最後の給与を受け取るまで在籍している従業員です。

この際、正社員か、パートやアルバイトかは問いません。

また、年の途中で入社した方も含まれます。

年の途中で退職した方は原則として対象外ですが、次の場合は退職時に年末調整をします。

  • 亡くなって退職した
  • 心身の重い障害で退職し、その年のうちに再就職できないと認められた
  • 12月分の給与を受け取ってから退職した
  • パートなどで退職し、その年の給与の総額が136万円以下

対象とならない従業員

在籍している従業員でも、次の方は年末調整をしません。

  • その年の給与所得が2000万円を超えている
  • 扶養控除等申告書を他社に提出している
  • 日雇いなどで日額表の丙欄が適用される
  • 非居住者
  • 災害減免法により源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた

対象外の方には年末調整をせずに源泉徴収票を交付し、必要に応じて本人に確定申告を案内しましょう。

【年間スケジュール】企業担当者が行う年末調整の進め方

年末調整の実務は10月ごろに始まり、翌年1月の書類提出で終わります。

時期ごとに担当者が行う作業は次のとおりです。

手順①準備と従業員へのアナウンス

10月から11月上旬にかけて、その年の変更点の確認を行います。

国税庁は毎年、年末調整のしかたという手引きとその年の様式を公表しています。

確認が済んだら、従業員に申告書を配り、提出期限を知らせます。

案内には、生命保険会社などから届く控除証明書を捨てずに保管しておくように書き添えましょう。

手順②申告書の回収と内容チェック

11月下旬から12月上旬にかけては、申告書を回収し、記入漏れと添付書類の有無を確認します。

特に間違いが多いのは、扶養する家族の所得の見積額と、控除証明書の金額の転記です。

家族の所得は、給与収入の額ではなく、給与所得控除を差し引いたあとの所得の額で書く欄があります。

収入の額をそのまま書いている申告書は少なくないため、金額が基準の前後にある場合は本人に確認してください。

不備が見つかったら、12月の給与計算に間に合うよう、早めに差し戻します。

回収を12月上旬までに終えておくと、差し戻しの時間を確保できます。

手順③年税額の計算と給与での精算

申告書の内容が確定したら、12月の給与支給日までに従業員ごとに1年分の税額を計算します。

大まかな流れは次のとおりです。

  1. 1年間の給与と賞与の総額を集計する
  2. 給与所得控除後の金額を求める
  3. 所得控除の合計額を差し引き、課税所得を出す
  4. 税率をかけて所得税額を出し、住宅借入金等特別控除を差し引く
  5. 102.1%をかけて復興特別所得税を含む年税額を出す

年税額が出たら、それまでに天引きした税額と比べます。

天引きのほうが多ければ差額を12月の給与で従業員に返し、少なければ12月の給与から追加で差し引きます。

手順④税務署・市区町村への書類提出

年末調整で精算した税額を含め、12月に天引きした所得税は、原則として翌年1月10日までに納めます。

納期の特例を受けている会社は、7月から12月分をまとめて1月20日までに納めます。

従業員には、1月31日までに源泉徴収票を交付するようにしましょう。

市区町村には、従業員の住所地ごとに給与支払報告書を1月31日までに提出します。

ただし、期限の日が土日や祝日にあたる場合は、翌平日が期限となります。

年末調整の必要書類と書き方のポイント

年末調整で従業員から集める申告書は、主に4種類です。

記入見本は国税庁の年末調整がよくわかるページで様式ごとに公開されているため、従業員への配布時にあわせて案内することをおすすめします。

必要書類①給与所得者の扶養控除等申告書

扶養控除等申告書は、配偶者や扶養する家族の情報を会社に届け出る書類です。

この書類を出しているかどうかで、毎月の天引きに甲欄と乙欄のどちらを使うかが決まり、年末調整の対象になるかどうかも決まります。

本来はその年の最初の給与を支払う日の前日までに提出するものなので、年末調整の時期には、提出済みの2026年分に変更がないかを確認します。

もし、家族の状況が変わっている場合は、本人に修正してもらいます。

あわせて、翌年の2027年分の用紙も配って回収しておくのが一般的です。

必要書類②給与所得者の保険料控除申告書

保険料控除申告書は、従業員が個人で支払った保険料や掛金を申告する書類です。

生命保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金の4つの欄があります。

生命保険料と地震保険料は、保険会社から届く控除証明書の金額を転記し、証明書の原本を添付します。

社会保険料の欄には、給与から天引きされている健康保険料や厚生年金保険料は書かず、本人が直接支払った国民年金保険料や、家族の分の国民健康保険料などを書くように案内しましょう。

必要書類③給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

この書類は、基礎控除、配偶者控除と配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除の4つの控除をまとめて申告する用紙です。

基礎控除の欄では、本人のその年の合計所得金額の見積額を書き、控除額を判定します。
2026年分の基礎控除額は次のとおりです。

本人の合計所得金額給与だけの場合の年収の目安基礎控除額
132万円以下206万円以下104万円
132万円超336万円以下475万1999円以下88万円
336万円超489万円以下665万5556円以下68万円
489万円超655万円以下850万円以下67万円
655万円超2350万円以下2545万円以下62万円

※出典:国税庁 令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし

配偶者控除の欄は、本人の合計所得金額が1000万円以下で、配偶者の合計所得金額が62万円以下の場合に使います。

配偶者の所得が62万円を超え133万円以下であれば、配偶者特別控除の対象です。

給与だけの配偶者なら、年収136万円以下が配偶者控除、136万円超207万円以下が配偶者特別控除の目安になります。

特定親族特別控除の欄は、19歳以上23歳未満の家族の合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合に使います。

大学生の子のアルバイト収入が136万円を超えた場合が典型で、所得に応じて最大63万円を控除できます。

所得金額調整控除は、給与の収入が850万円を超える従業員で、23歳未満の扶養親族がいる方などが対象です。

必要書類④給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書

住宅ローン控除を年末調整で受けられるのは、2年目以降の従業員です。

1年目に確定申告をすると、税務署から残りの年数分の申告書がまとめて本人に届きます。

従業員からは、原則として、その年の分の申告書と、金融機関が発行する年末残高等証明書の2点を提出してもらいます。

控除額は、申告書に記載された借入限度額や控除率にもとづいて計算します。

入居した年によって借入限度額や控除率が異なりますが、担当者が条件を判断する必要はなく、申告書の記載に従って計算してください。

中途入社の社員がいる場合に必要な書類

年の途中で入社した従業員がいる場合は、前の勤務先が発行した源泉徴収票を提出してもらいます。

前職の源泉徴収票が提出されないと、自社分だけで年末調整をすることはできません。

その場合は年末調整をせずに自社分の源泉徴収票を交付し、本人に確定申告を案内します。

入社時の手続きで前職の源泉徴収票を求めておくと、12月に慌てずに済みます。

年末調整の注意点と担当者が知っておくべきこと

年末調整でのミスは、従業員の手取りと住民税の両方に影響を与える恐れがあります。

以下で、ミスを防ぐ確認方法、期限に遅れた場合のリスク、電子化の進め方を順に説明します。

計算ミスや記載漏れを防ぐためのチェックリスト

申告書を回収したあと、計算に入る前に次の点を確認します。

5つ目については、共働きの夫婦が同じ会社にいる場合だけでなく、別々の会社に勤めている場合にも起こります。

会社同士では確認が難しいため、申告書を配る際に子をどちらの扶養に入れるかを夫婦で決めておくよう案内に書くとよいでしょう。

期限に遅れた場合や手続きを怠った場合のリスク

年末調整で精算した税額は、12月分の源泉所得税として会社が納めます。 

会社には、従業員の給与から所得税を差し引いて国に納める源泉徴収義務があるため、納付が遅れた場合のペナルティは会社にかかります。 

具体的には、納付が期限を過ぎると、原則として納めるべき税額の10%の不納付加算税が会社に課され、遅れた日数に応じて延滞税も加わります。 

年末調整の計算を誤って税額が不足していた場合も同様に、不足分を納める義務を負うのは会社なので注意しましょう。

また、年末調整の結果は、市区町村に提出する給与支払報告書を通じて、従業員の翌年度の住民税の計算にも使われます。

誤ったまま提出すると、従業員の住民税が誤った額で決まり、本来より多く負担させてしまうおそれがあるうえ、会社は訂正した給与支払報告書を出し直さなければなりません。 

こうした事態を防ぐため、申告書や添付書類の確認は入念に進めましょう。

年末調整の電子化によるメリット

年末調整の電子化とは、従業員が申告書を紙ではなくデータで作成して会社に提出する方法です。

国税庁が無料で提供している年末調整ソフトや、給与計算ソフトに付属する機能を使います。

担当者にとってのメリットは、手書きの申告書の読み取りや、控除額の検算が要らなくなることです。

申告書と控除証明書の突き合わせにかかっていた時間を、不備の確認に回せます。

導入するときは、まず自社の給与計算ソフトが申告書データの取り込みに対応しているかを確認してください。

そのうえで、従業員向けに操作の手順をまとめた案内を用意し、10月中には周知を始めると、初年度でも回収が遅れにくくなります。

なお、源泉徴収票を電子で交付する場合は、あらかじめ従業員の承諾を得る必要があります。

承諾していない従業員には、従来どおり書面で交付する必要があるため、注意しましょう。

従業員からの質問に備えるケース別対応Q&A

年末調整について、よく受ける質問をまとめましたので確認してみてください。

Q.年末調整をしないとどうなりますか?

源泉所得税が不足した場合、会社は不足分に加えて、不納付加算税や延滞税を負うおそれがあります。 

年末調整は法律で会社に義務付けられた手続きであり、怠れば従業員にも確定申告で精算する手間をかけることになります。

Q.パート・アルバイトの年末調整はどうする?

扶養控除等申告書を提出していて年末まで在籍しているパートやアルバイトの方も、正社員と同じく年末調整が必要です。 

2026年分は、給与だけの年収が178万円以下であれば所得税はかかりませんが、その場合も年末調整は省略できません。 

毎月の給与から所得税を天引きしていた場合は、年末調整でその全額を従業員に返すことになります。

Q.副業している社員への対応は?

2か所以上から給与を受け取っている従業員の年末調整は、扶養控除等申告書を提出している1社だけで行います。

ただし、副業先の給与と給与以外の所得の合計が20万円を超える場合は、本人が確定申告をする必要があります。

Q.iDeCoやふるさと納税のワンストップ特例はどう書く?

iDeCoの掛金を本人の口座から払っている場合は、保険料控除申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入してもらいます。 

給与から天引きしている場合は、記入は要りません。 

ふるさと納税は年末調整では扱えないため、ワンストップ特例を使う方も申告書に書く欄はありません。 

ただし、寄附先が6自治体以上の場合や、医療費控除などで確定申告をする場合は、特例が使えないため、確定申告を案内してください。

Q.医療費控除や1年目の住宅ローン控除を受けたいと言われたら?

どちらも年末調整では受けられません。

従業員本人には、確定申告を案内する必要があります。

Q.年の途中で扶養家族が増えたり減ったりした場合は?

従業員に、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を改めて提出してもらいます。 

新たに扶養に入れる家族は申告書に氏名などを記入し、扶養から外す家族は、異動月日及び事由の欄に外れた日と理由を記入してもらいましょう。

まとめ

年末調整は、毎月の概算の天引きを1年分の正しい税額に合わせる手続きで、給与所得者の多くにとっては確定申告の代わりになるものです。

担当者の計算や確認が誤れば、従業員の手取りだけでなく翌年度の住民税にも影響が残る可能性があります。

自社の従業員の状況に照らして判断がつかない点がある場合や、年末調整の事務そのものを外部に任せたいときには、税務に精通した税理士への相談を検討してください。

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