法人税の税務調査|調査対象に選ばれる基準と事前準備【2026年版】

2026/05/26

法人税の税務調査|調査対象に選ばれる基準と事前準備【2026年版】

税務調査とは、国税庁や税務署が、納税者の申告内容が客観的な事実に基づいているか、また、税法に従って適正に行われているかを確認するために実施される行政調査です。

多くの経営者は、調査官が来ることに強い不安や緊張を感じがちですが、税務調査は決して犯罪の捜査ではありません。

今回は、税務調査の調査対象に選ばれる基準と事前準について解説します。

法人税の税務調査とは?基本を理解する

法人税の税務調査は何を目的に行われているのでしょうか。

確認していきましょう。

税務調査の目的と重要性

法人税の税務調査がおこなわれる最大の目的は、申告納税制度の適正な運用を維持し、課税の公平性を確保することにあります。

日本の税制は、納税者自らが所得金額と税額を計算して申告する申告納税制度を基礎としています。

この制度のもとでは、すべての納税者が誠実かつ正確に申告をおこなっていることが前提となります。

しかし、複雑な税法の解釈の違いや、単純な入力誤り、あるいは意図的な所得隠しなどにより、不適切な申告がおこなわれる可能性があります。

そこで、税務署などの行政機関が定期的に、あるいは特定の指標に基づき、提出された申告書が客観的な事実と合致しているかを精査します。

税務調査は、適正に納税している者が不利益を被らず、誤った処理をしている者が適切に是正される環境を整えるために重要な役割を担っています。

税務調査の種類:任意調査と強制調査の違い

税務調査には、大きく分けて任意調査と強制調査の2種類が存在します。

一般的な企業が対象となるものの多くは、任意調査と呼ばれるものです。

任意調査は、納税者の合意と協力のもとでおこなわれる調査であり、あらかじめ日程の通知がなされるのが基本となります。

ただし、任意という名称ではありますが、税務職員には質問検査権が法的に認められており、正当な理由なく調査を拒否したり妨害したりすることは法律で禁じられています。

これに対し、強制調査とは、国税局査察部が裁判所の令状を得て強制的に立ち入りをおこなう調査です。

これは、巨額の脱税や悪質な所得隠しの疑いがある場合に限られ、証拠の差し押さえや捜査が強制的に実行されます。

通常の企業経営においては、事前通知を伴う任意調査に適切に備えることが中心的となります。

税務調査の頻度と時期は?いつ、どのくらいの確率で来るのか

実務上、税務調査の連絡が来やすい時期には一定の傾向があります。

もっとも調査が活発に行われるのは、税務署内の大規模な人事異動が完了した後の秋口である8月から11月頃です。

新しい体制が整った直後は、調査官が新規の案件に着手する時期であり、年間でもっとも多くの通知が発送されます。

次に連絡が多いのが、春先である4月から6月頃です。

2月から3月までの確定申告時期は税務署の業務が非常に多忙となるため、実地調査は一時的に控えられますが、申告作業が一段落した後のこの時期に、前年度の申告内容に不審な点がある企業へ連絡が入ります。

一般的に、黒字企業であれば3年から5年程度の周期で調査が入ることが多いとされていますが、これは一律に定められたものではありません。

【2026年最新】税務調査の対象に選ばれる基準

税務署では、企業から提出された申告書の内容について、申告書に添付された勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、および財務諸表を照合します。

まず、以下の点について申告書自体の整合性を確認します。

  • 記入誤りなど形式的な誤りの有無
  • 適用する法律関係
  • 添付書類における不備の有無
  • 前年までの申告内容との矛盾の有無

税務署には、申告書のほかにさまざまな法定調書が多くの納税者から提出されており、これら第三者が提出した法定調書との照合も行っています。

また、税務署では他の事業者に対して行った税務調査で収集した資料や情報、マスコミやインターネット等から独自に収集した資料や情報などを蓄積しています。

これらに基づいて、調査の必要度が高いと判断した企業を調査先として選定しています。

調査対象になりやすい法人の特徴

税務調査対象になりやすい企業には特徴があるのでしょうか。

それぞれ考えていきたいと思います。

売上や利益率が急変動している

準備調査において、直近5年分の数値の推移を決算書や内訳書をもとに並べて、異常に上下動が激しい科目や、新規に加わった科目、支出額の多い科目等が抽出されます。

売上高が急激に増加、あるいは減少している場合や、利益率が前年度と比較して大幅に変動している場合は、所得の操作や経費の過大計上が疑われやすくなります。

特に、急に赤字に転落した企業や、逆に急激に増収増益となった企業は、調査官の注目を集める対象となります。

同業他社と比較して特定の数値が異常

税務署は、業界ごとの平均的な原価率、人件費率、交際費率、および各種の財務比率を網羅したデータベースを保有しています。

自社の数値が、同業他社の水準から極めて大きく逸脱している場合、会計処理に特別な操作がなされているのではないかと判断されます。

たとえば、売上高に対する交際費の割合が異常に高い場合や、特定の経費の額だけが突出している場合などが該当します。

また、売上債権回転率や棚卸回転期間などの財務指標に異常な数値が現れている場合も、在庫の調整や売上の除外が疑われる原因となります。

海外取引や複雑な取引が多い

国外の企業との取引、たとえば海外への輸出入や、国外子会社との間で発生する取引は、税制上の優遇措置や租税回避の手段として利用されやすい性質を持っています。

そのため、海外取引を行っている法人は、取引規模や送金額の多寡に関わらず、税務調査の対象に選定されやすいです。

また、グループ企業内での資産の売買や、様々な事情による資金移動がある場合も、その法的な妥当性を精査するために調査が実施されます。

過去に申告漏れや不正指摘を受けている

過去の税務調査において、意図的な不正計算や多額の修正申告を行った経緯がある法人は、その後の管理体制を厳しく監視されます。

また、前回の調査時に非違金額が少額であったことから、指導事項にとどめた項目についても、次回の調査時に改善されているかどうかが確認の対象となります。

不正の再発を防ぐため、一定の短いサイクルで繰り返し調査が実施される傾向があります。

税務署内の内部格付け実況区分とは

税務署では、効果的な調査事務運営を図るため、すべての法人を過去の申告事績、調査事績および資料情報に基づいて、3つのグループに区分して管理しています。

それぞれのグループにおける判定基準、管理、接触、および判定換えの取扱いは次の通りです。

グループ区分対象となる法人の状態選定や判定における基準実施される管理や調査方法
第1グループ優良な申告法人であり、過去の申告内容や調査結果から概ね適正な申告を継続していると認められる会社です。・3年以内に開始した各事業年度において継続して青色申告を行っていること
・対象事業年度において継続して期限内に申告を行っていること
・申告所得金額が過去5年間の管内平均以上の水準であること
・実地調査において不正計算や多額の更正がないこと
・原則として統括官が管理し、申告内容や資料の分析を継続的におこなう・状況変化などの確認が必要な場合に書面による照会を実施する
・大口や悪質な不正が想定される場合にのみ適時に調査を実施する
第2グループ第1グループや第3グループに該当しない一般的な申告法人、およびまだ判定が行われていない新規の会社などが含まれます。第1グループおよび第3グループのいずれの基準にも該当しないこと・事業の規模や業種の特性に応じて、もっとも効果的な方法で実施する
・実地調査の際には、幅広い項目に対して重点的な確認をおこなう
第3グループ過去の申告状況や調査結果、および収集した情報から不正な計算が行われている可能性があり、特に注視すべきと判断された会社です。・調査結果から常習的に多額の不正が把握された会社
・調査で不正は未発見だが、多額の不正が潜在していると想定される会社
・代表者に関する情報から多額の不正が疑われる会社
・重要資料があり、継続的な情報収集が必要な会社
・他社の不正に加担していると認められる会社
・事業規模が急激に拡大している会社
・他署の管内に多数の事業所を所有する会社
・同族グループで広域的に事業を展開する会社
・海外取引の規模が大きい会社
・多額の使途不明金が把握された会社
・暴力団と関係がある会社・調査困難な会社など
・個々の会社ごとに判定理由や重点事項を整理し、分析を継続的におこなう
・早期に担当者を定めて予備的検討を進め、必要に応じて重点管理対象に指定する
・原則として深い実地調査をおこない、中長期的な計画を策定して臨む

いずれのグループにおいても、管理の過程で判定基準に合致しない事実が認められた場合には、他の区分へと変更されます。

法人税の税務調査の流れ

法人税の税務調査の流れは以下のように進められます。

ステップ1:税務署からの事前通知(電話連絡)

任意調査においては、実地調査が開始される前の段階で、税務署から事前通知の連絡が入ります。

通知は、原則として顧問税理士に対して、または税理士がいない場合は代表者に対して直接行われます。

連絡の内容は、調査を行う日程の調整、対象となる税目の種類、対象となる事業年度、および当日準備すべき書類の範囲などが伝えられます。

対象となる税目は、法人税、消費税、源泉所得税などが代表的です。

対象となる事業年度は、通常は過去3年分となります。

この際、業務の繁忙期などと重なっている場合は、合理的な理由があれば日程の調整を求めることが可能です。

ステップ2:調査当日までの事前準備

日程が確定した後は、実地調査の日に向けて必要な書類やデータを完璧に整理する段階に入ります。

税務調査は客観的な資料に基づいて進行するため、提示を求められる可能性のある帳簿や、領収書、請求書、および各種の契約書などを年度ごとにファイリングしておきます。

事前準備においては、顧問税理士と入念な打ち合わせを行い、過去の申告内容に計算誤りや説明が困難な取引がないかを事前に再点検しておくことが極めて大切です。

もし明らかな誤りが見つかった場合には、調査が始まる前の段階で自主的に修正申告を行うことで、過少申告加算税を免れることができます。

ステップ3:実地調査(通常2〜3日間)

実地調査は、通常2日から3日間のスケジュールで、企業のオフィスや事業所に調査官が来社して行われます。

調査の初日の午前中は、主に代表者に対するヒアリングに時間が充てられます。

事業の概要、沿革、代表者の経歴、主要な取引先との取引方法、現金の管理体制、および業界の動向などについて詳細な質問がなされます。

午後からは、実際の帳簿や証憑類の精査に移ります。

調査官は、元帳の記載内容と実際の領収書や請求書を照合し、期間計算に誤りがないか、私的な支出が混ざっていないかを確認します。

実地調査の期間中は、質問に対して事実のみを正確に答え、推測での回答は避ける必要があります。

ステップ4:調査結果の通知と交渉

実地調査が完了した後、税務署内での検討や資料の精査を経て、最終的な調査結果の通知が行われます。

結果の連絡が届くまでには、数週間から数ヶ月の期間を要することが一般的です。

申告内容がすべて適正であると認められれば、申告是認の通知が届き、追加の納税は発生しません。

一方で、不備や誤りが指摘された場合には、その内容に同意した上で修正申告を行うよう勧められます。

指摘内容に法的な見解の相違がある場合は、税理士を交えて税務署と交渉を行い、妥当な着地点を模索することになります。

特別な調査:無予告調査と反面調査

税務調査の中には、事前の連絡なく突然調査官が来社する、無予告調査と呼ばれるものがあります。

これは、飲食店や小売業など、現金を直接扱う事業において、事前の通知によって帳簿や現金の隠蔽が行われる恐れがあると判断された場合に実施されます。

無予告であっても調査を完全に拒否することは困難ですが、税理士が到着するまで実地の立ち入りを待ってもらうよう求めることは可能です。

また、自社の調査だけでは事实関係が明らかにならない場合、取引先や銀行に対して調査を行う、反面調査が実施されることがあります。

反面調査は、取引が実際に行われたことを証明するための有効な手段として活用されます。

税務調査はいつまで遡る?調査対象期間と時効

通常の税務調査において、対象となるのは直近3年間の事業年度です。

しかし、申告内容に重大な誤りや申告漏れの疑いがある場合には、過去5年間まで遡って調査が実施されます。

さらに、意図的な所得隠しや偽装、隠蔽といった不正行為が認められる場合には、法律上の最長期間である7年間まで遡及して調査が行われ、そのすべての期間に対する税金と重いペナルティが科されることになります。

【チェックリスト】法人税の税務調査に向けた事前準備

法人税の税務調査の連絡があった場合、事前準備が非常に重要です。

確認していきましょう。

準備すべき必要書類一覧

税務調査の連絡があった際には調査に必要な書類を収集、確認する必要があります。

具体的には以下のとおりです。

会計帳簿・決算関係書類

申告の根拠となる会計帳簿は、税務調査におけるもっとも基本的な確認資料です。

以下の書類を、いつでも提示できるように、個別に分けた形で用意しておきます。

  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 売掛金の元帳
  • 買掛金の元帳
  • 決算報告書

これらは決算書の作成に用いた基礎となるため、原本を直ちに取り出せる状態にしておきます。

契約書・請求書・領収書などの証憑類

税務調査の連絡があった場合、証憑類を準備してください。

契約書や請求書などは取引が実在し、かつ適正に行われたことを示すための客観的な証拠資料です。

したがって仕入や外注に関する請求書、経費の支払いに係る領収書、納品書、および配送伝票などの控えを整理しておきます。

特に、金額が大きい取引や、継続的な取引については、基本契約書や発注書、検収書などの存在が重要となります。

電子データで保存している領収書等については、電子帳簿保存法の検索要件に則って提示できるようにシステムを確認しておきます。

株主総会議事録・取締役会議事録

法人の意思決定が、会社法に定められた適正な手続きを経て行われているかを証明するための書類です。

税務調査官は役員報酬の金額の決定、役員賞与の支給決議、不動産の購入など、重要な事項に関する議事録がすべて作成され、保管されているかを確認します。

議事録の欠落は、役員給与の損金不算入などを招く原因となりますので抜かりなく準備しておきましょう。

組織図・従業員名簿・給与台帳

組織図・従業員名簿・給与台帳は事業を運営している人員の実在性を証明するための書類です。

当期の組織図、従業員名簿、出勤簿やタイムカード、および給与台帳を準備します。

退職した従業員がいる場合は、退職届や源泉徴収票の控えも必要となります

税務調査で特に指摘されやすいポイント

税務調査で調査官から企業に対し、指摘があるポイントは以下のとおりです。

売上の計上漏れ・計上時期のズレ

税務調査において厳しくチェックされるのが売上の計上時期です。

原則として、収益の計上時期は目的物の引渡しまたは役務の提供の日の属する事業年度となります。

たとえば、出荷日、検収日、作業終了日、使用収益開始日などです。

したがって、翌期当初の納品書や請求書、運賃の請求書などから、当期の計上漏れがないかを事前に確認しておく段階が重要となります。

交際費と会議費・福利厚生費の区分

税務調査があったときに注意すべきポイントとして、交際費や会議費等の区分です。

交際費は、その法人の資本金額等に従って、一定の限度額を超える部分について損金不算入とする制限が設けられています。

そのため、交際費に該当する支出を、会議費や福利厚生費といった全額損金となる科目に偽装して処理していないかが細かくチェックされます。

取引先との会食について、1人あたり1万円以下の飲食代を会議費等にする場合は、参加者の氏名や関係性、人数を明確に記載した領収書の整理をしてください。

役員報酬・役員賞与(認定賞与)

役員報酬は、税務調査官がチェックするポイントになります。

定期同額給与や事前確定届出給与といった一定のルールに沿って支給されなければ、役員報酬は損金の額に算入することができません。

これに該当しない不適切な金銭の支給があった場合、税務調査において損金不算入とされるだけでなく、その役員個人に対する賞与が支給されたものとみなされますので注意してください。

棚卸資産の評価と在庫管理

税務調査の連絡があったときに準備を行うポイントとして、棚卸資産や在庫管理を適切に行うことです。

期末時点で保有している商品の在庫を過少に見積もるなどして利益を圧縮する行為は、税務調査で頻繁に発覚する非違事項です。

実地棚卸が正確に行われているか、棚卸表の原始記録が破棄されずに保存されているかが確認されます。

原始記録の改ざん、数量の意図的な削り、および仕入先への預け在庫をカウントから除外する行為などは、悪質な隠蔽と判断されますので注意してください。

外注費と給与の区分

業務委託が、実態としては従業員に対する給与に該当するのではないかという点は税務調査で確認されるポイントです。

外注費であれば消費税の仕入税額控除の対象となりますが、給与と認定された場合は、仕入税額控除が否認され、さらに源泉所得税の徴収漏れとして追徴課税を受けることになります。

判断の基準は、その外注先が独立した事業者として自己の責任で業務を遂行しているか、時間的な拘束を受けていないか、および必要な用具を自身で用意しているか、といった実態に基づきます。

各勘定科目の内訳明細書の作成上のポイント

確定申告書に添付する内訳書は、各科目における記載内容の整合性が厳しくチェックされます。

そのため、各勘定科目の内訳明細書を作成する際は、以下の表でポイントを確認してください。

項目区分確認対象・内容
現預金・外貨外貨預金の換算と為替差損益の適正性、簿外預金・個人名義口座の有無、流動比率・当座比率・預貸率の分析、受取利息の消費税処理
手形関連手形処理の適正性、受取手形回転期間の分析、不正手形(ジャンプ・融通)や裏書譲渡の整合性
売上・債権期末売上の繰延べ有無、売上債権回転率・期間の異常値分析、翌期資料による売上繰延べの確認
貸付・仮払金支出相手・科目の妥当性、代表者等への私的流用、認定利息の計上、従業員への経済的利益の課税判定
有価証券・資産譲渡損益の計上時期と評価、法人資金での運用有無、消費税の分母加算、資本的支出と修繕費の区分
私的流用・福利厚生代表者宅改築費用の法人計上、社宅・寮の適正家賃、経済的利益の判定、土地建物区分と調整計算
仕入・支払債務支払先・期日の妥当性、支払債務回転率・期間の分析、架空仕入の有無、支払手形の不正利用
預り金・簿外資金預り金(仮受金)による利益圧縮、源泉所得税の徴収・納付漏れ、借入金の原資(簿外資金)確認
譲渡・その他取引未収金・精算金の売上計上、消費税(非課税・免税・不課税)の区分、自家消費・低額譲渡の処理
人件費・給与必要書類(扶養控除等申告書)の保存、出勤簿の整合性、特殊関係使用人の過大給与判定、架空人件費の有無
経費・前払金短期前払費用の要件、役員社宅賃料の適正額、権利金・保証金の無償返還届出、固定資産売却損・貸倒損失の要件
棚卸資産評価方法の整合性、棚卸回転率・期間の異常値分析(架空在庫や棚卸除外の検知)

グループ通算制度における注意点

完全支配関係にある企業グループ、たとえば一の者が法人の発行済株式等の全部を直接または間接に保有する関係、または一の者との間に同様の関係がある法人間の相互の関係がある内国法人間では、グループ法人税制が適用されます。

グループ通算制度は、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算および申告を行い、その中で損益通算等の調整を行う制度です。

実務上の主な注意点は以下の通りです。

■所得金額の申告調整項目

受取配当等の益金不算入は各通算法人が個別に計算します。
寄附金の損金不算入については、グループ全体での合算は行わず、各法人が自己の所得金額に基づく損金算入限度額を個別に計算するてんに注意が必要です。
なお、交際費等の損金不算入についても個別に計算しますが、中小通算法人については、グループ全体で年800万円を上限とした通算定額控除限度分配額による特例が適用されます。

■税額の調整項目

所得税額控除は、各通算法人が受け取った税額について個別に計算します。

外国税額控除や試験研究費の税額控除は、グループ全体の要素に基づいて配分計算が行われます。

各制度によって個別に計算するか、合算するかが異なりますので注意してください。

■損益通算の遮断措置

通算グループ内の一法人に税務調査等による修更正事由が生じた場合、原則として、損益通算に係る金額は当初の期限内申告の金額に固定される遮断措置が適用され、他の法人の税額計算には影響を及ぼしません。
ただし、通算法人のすべてについて期限内申告の所得金額がゼロまたは欠損である場合など、一定の要件に該当する場合には、グループ全体での再計算である全体再計算が行われるため注意する必要があります。

■非違の連鎖

通算グループ内の各法人は、同一の会計基準や経理処理の基準を採用しているケースが殆どです。

したがって、一法人の資産計上ルール等に誤りがあった場合その誤りがグループ内のすべての法人に波及し、一斉に否認を受ける可能性が高くなります。
そのため、定期的な基準の見直しが重要となります。

特殊な法人の調査ポイント

特定の公益性を持つ特殊な法人に対する税務調査では、普通法人とは異なる税務上の区分や優遇措置の適否が、調査専担者によって厳格に確認されます。

それぞれの業態に合わせたチェックポイントをご紹介します。

協同組合等における調査ポイント

普通法人と異なり、軽減税率や、組合員に対する事業分量配当の損金算入、および欠損金の繰戻還付などが認められています。

調査においては、事業分量配当の計算方法の適正性や、特定の準備金の積立、取崩しが適正であるかが精査されます。

公益法人等における調査ポイント

その行う事業の公益性から、収益事業から生じた所得のみが課税の対象となり、それ以外の公益目的事業などから生じた所得は非課税とされています。

調査では、以下の項目が重点的なチェック事項となります。

■収益事業の範囲の判定

公益事業と認定されなかった事業から発生する収入について、課税対象となる収益事業に該当しないかをチェックされます。

■費用の配賦計算

公益事業と収益事業の双方に共通する事業費や管理費が、従事時間や使用面積などの合理的な基準に基づいて適正に配賦されているかがポイントになります。

■みなし寄附金の限度額の管理

税務調査官は、収益事業から生じた所得の50パーセント相当額等を公益目的事業等へ支出した場合に、寄附金とみなして損金算入するみなし寄附金が、限度額内で正しく処理されているかを確認します。

学校法人における調査ポイント

授業に必要な教科書の販売等は非課税ですが、制服、制帽、文房具の販売、あるいは学生食堂の運営などは収益事業に該当するため、正確な区分経理が確認されます。

また、企業等からの委託研究について、研究期間が3か月を超え、成果の帰属や公表に関する定めがある適格なものを除き、収益事業として課税対象となります。

特定の教授個人や医局が大学の施設を利用して受託した研究費などが、学校の収入として適正に計上されているかも、隠蔽を疑われやすい重要な確認事項です。

宗教法人における調査ポイント

お布施、戒名料、お守りやおみくじの頒布、および境内地の使用料などは非課税ですが、絵はがきや写真帳の販売、駐車場の賃貸、および墓石業者から受け取る手数料などは収益事業となります。

また、収益事業を行っていない場合であっても、代表役員や職員に対する給与が適正に源泉徴収されているかを確認する、源泉所得税調査の対象となることがあります。

法人の収支と個人の生活費を明確に区分しておくことが、指摘を避けるための前提条件となります。

税務調査後の対応とペナルティ

税務調査後の企業の対応とペナルティについて確認していきましょう。

調査結果の3パターン:申告是認・修正申告・更正

税務調査が完了した後の処分には、大きく分けて3つのパターンが存在します。

■申告是認

申告内容がすべて適正であり、誤りがないと認められた場合で、もっとも望ましい結果です。

■修正申告

調査官からの指摘事項を受け入れ、納税者自らが当初の申告内容を修正する申告書を提出します。

実務上、多くの調査がこの方法で決着します。

■更正

納税者が指摘事項に納得せず、修正申告に応じない場合に、税務署長が自らの権限で所得金額や税額を決定する処分を下します。

更正処分に不服がある場合は、通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税務署長への再調査の請求、または国税不服審判所への審査請求を行うことができます。

追徴課税の種類と税率

修正申告または更正によって、不足していた本来の税金を納めることになった場合、本税とは別に以下の付帯税が課されます。

過少申告加算税

期限内に提出した申告額が不足していた場合に課されます。

税率は原則として、新たに追加となった税額の10パーセントです。

ただし、追加税額が当初の申告額または50万円のいずれか多い金額を超えている場合は、その超えている部分について15パーセントとなります。

なお、調査の事前通知を受ける前に、自ら進んで修正申告を行った場合は免除されます。

無申告加算税

期限内に申告書を提出していなかった場合に課されます。

税率は、追加税額のうち50万円以下の部分は15パーセント、50万円を超える部分は20パーセント、300万円を超える部分は30パーセントとなります。

重加算税

財産の隠蔽や、帳簿の仮装、偽装といった特に悪質な行為があったと判断された場合に課されます。

税率は、過少申告の代わりに課される場合は35パーセント、無申告の代わりに課される場合は40パーセントとなります。

延滞税

納付期限の翌日から実際に納付する日までの期間に応じて課される利息に相当する税金です。

納付が遅れるほど金額が膨らむため、迅速な対応が必要です。

修正申告の手続きと納税方法

指摘内容に合意した後は、修正申告書を作成し、管轄の税務署へ提出します。

追加となる本税および各種の付帯税は、速やかに納付する必要があります。

納付は、金融機関の窓口で支払う方法のほか、インターネットバンキングを利用したダイレクト納付や、クレジットカードによる決済が利用可能です。

税務調査のリスクを低減する方法

税務調査のリスクを低減する方法として以下が考えられます。

正確な会計処理と証憑管理の徹底

税務調査のリスクを低減する方法として、正確な記帳とそれを裏付ける証憑類をきちんと保管することが挙げられます。

取引が発生した都度、基本契約書、発注書、請求書、および領収書をセットにして、日付順にファイリングしておきましょう。

また、電子帳簿保存法やインボイス制度の要件を完全に満たしたシステムを導入し、データの検索性を高めておくことも大切です。

法人事業概況説明書・勘定科目内訳明細書の適切な作成

税務署は、申告書に添付されている法人事業概況説明書や勘定科目内訳明細書を細かくチェックしています。

したがって、平時でも定期的に主要科目の金額に元帳とのズレがないか、取引内容や決済日の状況が実態と一致しているかを確認しておくことが大切です。

ミスに気づいたら自主的に修正申告を行う

税務調査の通知が届く前、あるいは実地調査が開始される前の段階で、自社の申告内容に誤りがあることを発見した場合は、躊躇せずに自主的な修正申告を行うべきです。

調査開始前の自主申告であれば、過少申告加算税が免除されるため、ペナルティの総額を大幅に抑えることができます。

まとめ

今回は、法人税の税務調査における調査対象に選ばれる基準と事前準備について解説しました。

税務調査の準備や調査官とのやり取りはペナルティを受けるかどうかなどふくめ非常に重要となりますので、不安な方は早期の段階で税理士に相談することを検討してください。

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