インボイス2割特例の期限迫る!新たな3割特例とは?

2026/09/04

インボイス2割特例の期限迫る!新たな3割特例とは?

2023年に始まったインボイス制度において、2026年10月から、インボイス制度の2割特例が終了し、3割特例に変更されます。

今回は、インボイス制度とは何か、2026年10月以降の変更点などについて確認していきたいと思います。

インボイスの2割特例とは?【2026年9月30日まで】

インボイス制度とは、消費税の税額控除を受けるために、売り手が買い手へ正確な適用税率や消費税額を伝える適格請求書(インボイス)の交付・保存を義務付ける制度をいいます。

この適格請求書を発行するためには、自らを課税事業者として税務署に登録を行う必要があります。

新たに課税事業者となった場合、これまでは手元に残すことが認められていた消費税額を国に納める義務が発生します。

これは小規模な事業者にとっては、資金繰りに対する大きな打撃となります。

このように、インボイスを導入することでの、急激な税負担の増加や事務作業の混乱を防ぐための緩和措置として導入されているのが、2割特例です。

2割特例とは、売上として顧客から預かった消費税額の2割だけを納税額とする計算方法を指します。

2割特例を適用すれば、経費にかかった消費税額を集計する手間が省け、売上高さえ正確に把握していれば消費税の申告を完了させることができます。

しかし、この便利な制度が適用されるのは、2026年9月30日までに限定されています。

インボイスの3割特例とは?【2026年10月以降適用】

インボイス制度は、2023年から2029年10月まで、経過措置として特例が設けられています。

2026年10月からは2割特例から3割特例の経過措置に切り替わります。

確認していきましょう。

3割特例の概要

インボイスの2割特例に代わる新たな措置が3割特例です。

3割特例とは、売上として顧客から預かった消費税額から一律で7割を差し引き、残りの3割を納税額として納付する制度を指します。

従来の2割特例と比較すると、国に納める消費税の負担割合は2割から3割へと実質的に上昇することになります。

納付額は増えますが、事務負担を軽くできるというメリットは維持されています。

この制度を利用することで、本業に専念できる時間を確保しつつ、段階的に消費税の原則的なルールに慣れていくことができます。

3割特例の対象者と適用期間

インボイスの3割特例はすべての課税事業者が自由に利用できるわけではありません。

特例が制定された趣旨が小規模な事業者の急激な負担増加を緩和することにあるため、適用対象は一定の条件を満たす事業者に限定されています。

具体的な条件は2割特例のときと同様、インボイス発行事業者として登録するために、本来は納税義務が免除される売上規模でありながら、自ら課税事業者を選択した事業者です。

適用期間については、2割特例の期限が終了した2026年10月1日以降の2027年、2028年の確定申告です。

この適用期間中に、事業者はインボイス制度下での価格設定や経費の見直しを行い、最終的な原則計算へ適応するための準備を進めることが求められます。

あなたは3割特例の対象?

ご自身がインボイスの3割特例を利用できるかどうかを確認するためには、過去の事業規模を示す売上高を遡ってチェックする必要があります。

消費税の納税義務を判定する基準となる期間を基準期間と呼び、個人事業主の場合は前々年の1月から12月までの期間がこれに該当します。

この基準期間の課税売上高が1000万円以下であることが、特例を適用するための基本的な要件となります。

インボイス制度が始まる前からすでに課税事業者であった事業者や、売上が拡大して基準期間の売上が1000万円を超えてしまった事業者は対象から外れます。

法人成りをして間もない事業者や、相続によって事業を引き継いだ事業者については、複雑な売上基準の計算方法が適用される場合があります。

特例の対象から外れた場合、申告の手間と税負担が急激に跳ね上がるため、過去の確定申告書を手元に用意し、適用要件を満たしているかを事前に確認しておくことが大切です。

3割特例の手続き方法

2026年10月より前にインボイスを利用していた事業者に関しては、3割特例を適用するための手続きが簡略化されています。

税務署へ事前の届出書をわざわざ提出する必要はなく、消費税の申告期限までに提出する確定申告書において、3割特例を適用する旨の項目にチェックを入れるだけで手続きが完了します。

事前の準備が不要であるため、決算期を迎えて1年間の実際の売上や経費の数字を確定させてから、適用するかどうかを事後的に決めることができます。

市販のクラウド会計ソフトなどを利用する場合も、該当する項目を選択することで自動的に売上税額の3割が納付税額として計算されます。

ただし、計算チェックを入れ忘れて申告書を提出してしまうと、本来の複雑な計算が求められることになるため注意が必要です。

2割特例終了後の3つの選択肢

インボイスの2割特例の期間終了後、事業者は今後の事業運営を見据えて消費税の申告方法について以下3つの選択肢があります。

  • 引き続き3割特例を適用して申告を行う
  • 所定の手続きを経て簡易課税制度に移行する
  • 原則的な計算方法である本則課税で申告する

それぞれ確認していきましょう。

①3割特例を適用する(個人事業主)

インボイスの2割特例の期間終了後に個人事業主がとる選択肢として、3割特例を利用して申告を継続する方法です。

売上にかかる消費税額の3割を納めるというシンプルな計算構造であるため、日々の記帳負担を軽く保つことができます。

経費として支払ったレシートについて、取引先がインボイス登録事業者であるかどうかを確認したり、軽減税率の対象品目と標準税率の品目を分けたりする面倒な作業が発生しません。

ただし、利益率が低く経費が多くかかっている事業の場合は、他の計算方法を選んだ方が税金が安くなる可能性があるため、注意が必要です。

②簡易課税制度に移行する

インボイスの2割特例の期間終了後に事業者がとる選択肢として、簡易課税制度を利用することです。

簡易課税とは、実際の経費にかかった消費税額を一つひとつ計算する代わりに、国が業種ごとに定めた一定の割合を売上税額から差し引いて計算する制度を指します。

売上から差し引く一定の割合を、みなし仕入率と呼びます。

実際の経費を細かく計算しなくてよいという点では、3割特例と似た特徴を持っています。

みなし仕入率は、事業の性質に応じて第一種事業から第六種事業までの6つの区分に分けられており、自身の事業にかかる実際の経費率が低かったとしても、法律で定められたみなし仕入率を用いて計算することが認められています。

事業内容によっては3割特例よりも国に納付する消費税額を低く抑えられる可能性があります。

簡易課税制度を利用して申告を行うためには、原則として適用を受けたい課税期間の初日の前日までに所轄の税務署へ事前の届出が必要です。

個人事業主であれば、適用を受けたい年の前年の12月31日までに書類を提出しなければなりません。

期限を一日でも過ぎてしまうと希望する申告方法を選べなくなるので、利用したいときには早めに税務署への書類提出をすませておくべきといえます。

③本則課税(一般課税)で申告する

インボイスの2割特例の期間終了後に事業者がとる選択肢として、本則課税で申告を行うことが考えられます。

本則課税とは、売上として顧客から受け取った消費税額から、仕入れや経費として実際に支払った消費税額を全額差し引いて、その差額を国に納める納税方法です。

この方法を選択した場合、すべての取引についてインボイスの有無を確認し、税率を区別して正確に帳簿へ記録するという事務作業が発生します。

手作業で処理を行うのは限界があるため、最新の会計ソフトの導入が前提となります。

事務負担は増大しますが、経費にかかる消費税が売上にかかる消費税を上回るような大きな投資を行った場合には、払いすぎた消費税が還付されるメリットがあります。

ただし、本則課税は、高額な資産を取得した場合、一度還付を受けてから3年間他の申告方法に変更できなくなる制限があるため、切り替えには慎重に判断することが求められます。

還付の手続きや3年縛りのルールは複雑であるため、税理士の助言を受けながら長期的な視点で選択することが求められます。

【一覧表】3割特例・簡易課税・本則課税のメリット・デメリット

消費税の3つの納税方法のメリットとデメリットを簡単にまとめてみましたので確認してみてください。

申告方法メリットデメリット
3割特例計算が容易で税務署への事前の届出も必要ない要件を満たす小規模な一部の事業者しか利用することができない
簡易課税特定の業種においては税負担を低く抑えることができる事前の届出が必要であり一度選ぶと継続して適用する縛りがある
本則課税大きな経費がかかった年や赤字の年に消費税の還付を受けられる可能性がある日々の細かな帳簿入力やインボイスの確認作業の手間が重い

3割特例と簡易課税はどちらがお得?

インボイスの特例の対象となる事業者にとって、3割特例をそのまま適用するのか、事前の届出を出して簡易課税に移行するのかの選択は、悩ましい問題といえます。

個人事業主にとってどちらを適用するのがお得になるのか、売上や経費、業種などの視点から考えていきたいと思います。

売上・経費から見る納税額の比較

インボイスの3割特例は、売上税額から一律70パーセントの経費分を差し引いて計算します。

一方で簡易課税は、業種ごとに細かく設定されたみなし仕入率を用いて計算を行います。

したがってどちらを選択するかは、ご自身が営む事業の簡易課税におけるみなし仕入率が、3割特例の控除割合よりも高いか低いかを確認する必要があります。

たとえば、年間の税抜売上が500万円で、消費税として50万円であるケースを考えてみましょう。

3割特例を選択した場合、預かった50万円の3割にあたる15万円が納付する消費税額となります。

ご自身の業種の簡易課税を計算し、15万円より高ければ3割特例を使った方が良いといえます。

【業種別】簡易課税の方が有利になるケースとは?

消費税の簡易課税を選択した方が納税額が少なくなるのは、みなし仕入率が80パーセント以上に設定されている事業です。

以下業種ごとにまとめましたので、確認してみてください。

それぞれの業種区分とみなし仕入率は、以下の通りです。

業種区分主な事業内容みなし仕入率
第一種事業卸売業90パーセント
第二種事業小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に限る)80パーセント
第三種事業農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡を除く)、鉱業、建設業、製造業など70パーセント
第四種事業飲食店業など(第一種、第二種、第三種、第五種および第六種以外の事業)60パーセント
第五種事業運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く)50パーセント
第六種事業不動産業40パーセント

上記を確認すると、卸売業やコンビニなどの小売業、農業などの事業は、簡易課税制度を利用した方が、消費税を低く抑えられるといえます。

一方で、エンジニアやWEB関連の事業などを行っている方は、引き続きインボイスを利用した方が良いといえます。

インボイス特例に関するよくある質問(FAQ)

インボイス制度の特例措置や移行期間のルールについてよくある質問をまとめてみました。

Q1. 2割特例は本当に延長されないのですか?

2割特例は2026年9月30日の属する課税期間をもって終了し、さらなる延長は行われません。

この制度は、消費税の申告に不慣れな免税事業者が、課税事業者という新しい環境に適応するための激変緩和措置として位置づけられています。

期限が到来した後は自動的にこの制度を利用できなくなることを前提とし、別の申告方法へと移行するための準備を前もって行う必要があります。

Q2. 3割特例と簡易課税は毎年選べますか?

3割特例は事前の届出が不要であり、要件を満たしている年であれば確定申告のたびに柔軟に選択することが可能です。

ただし、簡易課税制度については、一度選択の届出を提出すると原則として2年間は継続して適用しなければならないという制約があります。

翌年に大きな機械や社用車を購入する予定があり、本則課税に戻して消費税の還付を受けたいと考えても、簡易課税を選択している2年間のうちは還付を受けることができません。

目先の納税額を減らすことだけを考えるのではなく、数年先の事業計画を見据えた判断が必要です。

Q3. 法人が2割特例終了後に選べる選択肢は何ですか?

法人事業者については、2割特例が終了した後は簡易課税または本則課税のいずれかを選択して申告を行うことになります。

3割特例は、主にインボイス制度を機に課税事業者となった個人事業主などを想定した制度要件となっているため、法人の場合、対象外であることが少なくありません。

法人の場合は、売上高が5000万円以下という簡易課税の要件を満たしているかを確認した上で、事務負担を考慮して簡易課税制度の選択届出書を提出するかどうかを検討する必要があります。

まとめ

今回は2026年10月以降のインボイス制度について確認していきました。

インボイス制度における2割特例の期限終了に伴い、すべての対象事業者は今後の消費税申告の方向性を明確に定める必要があります。

新たな特例措置である3割特例や、みなし仕入率を用いる簡易課税制度など、事業規模や営んでいる業種によって有利となる選択肢は異なります。

ご自身で選択することが難しいと感じたときには税理士に相談することを検討してください。

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