少年事件とは?刑事事件との違いや手続きの流れ
2026/07/04

日本では、20歳未満の少年が罪を犯してしまった場合の手続きが、成人の刑事事件とは大きく異なります。
手続きに違いがある理由は、少年事件の場合の目的や最終的な処分を決める場所などが少年法によって特別に定められているからです。
この記事では少年事件の対象となるケースから手続きの流れや最終的な処分の内容などについて解説します。
少年事件とは?対象となる3つのケース
少年法に基づいて家庭裁判所が扱う事件のことを一般に少年事件と呼びます。
家庭裁判所が扱う少年事件には大きく分けて3つの種類が存在します。
それぞれの定義と対象となる年齢について確認してみましょう。
犯罪少年:20歳未満
犯罪少年とは、罪を犯した14歳以上20歳未満の少年法の適用対象となる少年をいいます。
一般的に少年事件と呼ばれるものの多くはこの犯罪少年に分類されます。
少年事件は警察による捜査が行われ、取り調べが終わった後、家庭裁判所に送致されます。
最終的には、家庭裁判所の審判によって処分が決定されることになります。
触法少年:14歳未満
触法少年とは、刑罰法令に触れる行為をしたものの、その犯罪を起こしたときに14歳未満である少年を指します。
日本の法律では14歳未満の子どもには刑事責任能力がないとみなされるため、法律上は罪を犯したことにはなりません。
触法少年については、児童福祉法上の措置が優先され、処分が決定されます。
ただし、知事や児童相談所長が家庭裁判所に送致した場合には、犯罪少年と同様に家庭裁判所が扱う少年事件として審理されることになります。
虞犯少年(ぐはんしょうねん):18歳未満
虞犯少年とは、18歳未満で保護者の正当な監督に従わないなどの不良行為がある少年のことをいいます。
まだ罪を犯していなくても、正当な理由がなく自宅へ寄り付かなかったり、いかがわしい場所に出入りしたりするといった行為がある場合に対象となります。
これは非行少年を早期に発見し適切な保護をすることにより少年の更生を図るとともに犯罪を未然に防止しようとする目的があります。
なお、虞犯少年に対しても状況に応じて、少年院送致などの処分か課されることもあります。
特定少年:18歳以上20歳未満
特定少年とは、成人した18歳以上20歳未満の少年のことを指します。
この年代の少年が少年法が適用対象になるかどうかは、嫌疑をかけられている罪によって大きく異なります。
以下のような罪を犯した疑いがある場合には、検察官送致の対象となります。
- 死刑
- 無期拘禁刑
- 短期1年以上の拘禁刑
法定刑が死刑や無期拘禁刑のある罪は、重大な犯罪であるため、少年と呼ばれる年齢であっても、成人と同様、刑事訴訟法に基づいた流れで行います。
また、2022年からは法定刑が1年以上ある罪も通常の刑事手続で進められることになりました。
これは、同年に成人年齢が20歳から18歳になったことが関係しています。
また、特定少年が起訴された場合、実名や写真などの報道の禁止が解除されます。
17歳以下の少年は、プライバシーや更生を阻害されないために、報道できる情報が大きく制限されているため、これは大きな違いと言えるでしょう。
少年事件と刑事事件の5つの主な違い
少年事件と成人の刑事事件の手続きには、比較していくつかの重要な違いがあります。
それぞれの違いに具体的に確認していきましょう。
目的の違い|保護と更生・処罰
少年事件と刑事事件では、処分をくだす目的の違いがあります。
刑事事件の主な目的は罪を犯したひとに対して適切な刑罰を与え処罰することにあります。
一方で少年事件の目的は少年の健全な育成を図り非行から立ち直らせるための保護と更生にあります。
少年はまだ成長の過程にあり環境や教育によって改善する可能性が高いと考えられているためです。
成人が処罰が目的であるのに愛し、少年穂王は保護・更生を目的としている点は大きな違いといえます。
手続き場所|家庭裁判所・地方裁判所など
少年事件と刑事事件の違いとして、手続きを行う場所があります。
成人の刑事事件は地方裁判所などで、公開裁判が行われます。
少年事件の場合、家庭裁判所はプライバシーに配慮し、非公開で審判を行うのが原則となります。
したがって、少年事件は全件が家庭裁判所に送致され、そこで手続きが進められます。
なお、事件が起きた場所や少年の居住地を管轄する家庭裁判所が事件を担当することになります。
処分の内容|保護処分・刑事罰
少年事件と刑事事件の違いとして、処分内容があります。
刑事事件では懲役や罰金などの刑罰が科されます。
対して、少年事件では保護観察や少年院送致といった保護処分になることがほとんどです。
これは少年に罰を与えることよりも適切な教育や指導を行うことで再犯を防ぐことを重視しているためです。
ただし、一定の重大な事件などでは成人と同じように刑事裁判にかけられることになります。
実際に、連続ピストル射殺事件を起こした永山則夫という者は、事件当時19歳でした。
この事件は、一審が無期懲役判決、これに不満を持った検察が控訴、二審では死刑判決になりました。
最終的に最高裁は高裁への差し戻しを行い、再審理のうえ死刑が確定しました。
これは、現在死刑判決を行うひとつの指標となっており、永山基準と呼ばれています。
このことから、少年と呼ばれる年齢であっても、事件の態様や更生の余地がないなどの場合には、死刑や長期拘禁刑が科される可能性があることがわかります。
前科の有無
少年事件と刑事事件には前科がつくかどうかの違いがあります。
成人の刑事裁判で有罪判決を受けると前科がつきます。
一方、少年事件において家庭裁判所で保護処分を受けたとしてもそれは刑罰ではないため前科にはなりません。
保護処分は少年の将来の就職や資格取得において不利益にならないように配慮された制度だといえます。
ただし、検察官送致によって刑事裁判を受け有罪となった場合には前科がつくことになります。
手続きの原則|全件送致主義・起訴便宜主義
少年事件と成人の刑事事件の違いとして、逮捕後の手続きがあります。
成人の刑事事件では検察官が起訴するかどうかを裁量で決定する起訴便宜主義がとられています。
一方で少年事件では捜査を終えたすべての事件を家庭裁判所に送らなければならない全件送致主義が採用されています。
これは少年の処分を決めるのは検察官ではなく専門の知識を持った家庭裁判所であるべきだという考えに基づいています。
少年事件の手続きの流れ
少年事件の手続きは逮捕されるかどうかによって初期の流れが異なります。
身体を拘束された状態の身柄事件と自宅で生活しながら手続きが進む在宅事件に分けて解説します。
【逮捕された場合】身柄事件の流れ
警察に逮捕された場合は時間制限のある手続きに従って捜査が進められます。
①警察による捜査・逮捕(〜48時間)
警察は少年を逮捕してから48時間以内に取り調べなどの捜査を行います。
その後さらに身体拘束を続ける必要があると判断した場合には、事件の記録とともに少年を検察官に送致します。
②検察官への送致(〜24時間)と勾留請求
送致を受けた検察官は24時間以内に少年を取り調べます。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあるなど引き続き拘束が必要と判断した場合は、裁判官に対して勾留を請求します。
③勾留・勾留延長(最大20日間)
裁判官が勾留を認めると原則として10日間の身体拘束が続きます。
やむを得ない事由がある場合にはさらに最大10日間の延長が認められることがあり合計で最大20日間の勾留となる可能性があります。
④家庭裁判所への送致(全件送致主義)
警察や検察官の捜査が終了するとすべての事件は家庭裁判所に送致されます。
ここから先は家庭裁判所による専門的な調査と審判の手続きに移行します。
【逮捕されない場合】在宅事件の流れ
逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断された場合は逮捕されずに自宅から警察署や検察庁に呼び出されて取り調べを受けます。
捜査が終わった段階で事件の記録のみが家庭裁判所に送致され以降の手続きに進むことになります。
在宅事件であっても家庭裁判所に送致された後の流れは基本的に同じです。
家庭裁判所送致後の流れ
家庭裁判所に事件が送致された後は少年の非行の背景を探るための調査が始まります。
家庭裁判所調査官による調査
家庭裁判所から呼び出しがあり少年や保護者が家庭裁判所調査官の面接を受けます。
家庭裁判所調査官は心理学や教育学などの専門知識を活用して少年の性格や生育歴などを調査します。
事件の内容だけでなく家庭環境や友人関係などの生活歴が詳しく聴取されることになります。
これは少年が非行に至った原因を探り立ち直るための手がかりを得るためです。
家庭裁判所調査官のほうから少年の家や学校に出向いて調査をすることもあります。
調査結果は報告書としてまとめられ裁判官に提出されます。
観護措置と少年鑑別所での生活
審判を円滑に進めたり少年の処分を適切に決めるための心理検査などが必要な場合に観護措置がとられます。
観護措置とは少年を少年鑑別所に送致し一定期間そこに収容することをいいます。
法律上は審判を行うため必要があるときとされており具体的な事案に応じて裁判官が決定します。
少年が調査に出頭しないおそれがある場合や不良仲間の悪影響から保護する必要がある場合などにとられることが多い傾向にあります。
観護措置の決定に不服があるときは少年や法定代理人などから異議申し立てを行うことが可能です。
少年鑑別所では面接や心理検査のほか健全な育成のための支援を含む観護処遇が行われます。
少年審判|非公開で行われる話し合い
調査が終わると家庭裁判所の審判廷で審判が開かれます。
審判は少年のプライバシーを守るために原則として非公開で行われます。
裁判官を中心に少年や保護者および家庭裁判所調査官などが同席して少年の問題点や今後の生活について話し合います。
事案によっては3人の裁判官の合議で審判が行われることもあります。
また少年の故意の犯罪行為などによって被害を受けたひとが亡くなったり重大な傷害を負ったりした場合は被害者などの傍聴が許されることがあります。
試験観察|処分を決定するための観察期間
少年の性格や環境によっては直ちに処分を決めることが難しい場合があります。
そのような場合には最終的な処分を決めるために少年を一定の期間にわたって家庭裁判所調査官の試験観察に付すことがあります。
試験観察の期間は数か月程度行われることが一般的です。
家庭裁判所調査官が少年に助言や指導を与えながら生活態度が改善されているかどうかを観察します。
民間ボランティアに少年を一定期間預ける補導委託という方法がとられることもあります。
この観察結果を踏まえて最終的な処分が決定されます。
少年事件の最終的な処分とは?
少年審判の結果として裁判官が最終的な処分を言い渡します。
処分の種類には大きく分けていくつかのパターンがあります。
処分なし(審判不開始・不処分)
調査の段階で教育的な働きかけなどにより少年が十分に反省し保護者の監督環境も整っていると判断された場合は審判を開始せずに事件を終了することがあります。
これを審判不開始と呼びます。
また、審判を開いた結果としてこれ以上の保護処分は必要ないと判断された場合には不処分という決定がなされます。
これらは何もしないで終わるのではなくその過程での面接や講習といった教育的な働きかけによって立ち直りが期待できると判断された結果といえます。
保護処分|少年の更生を目的とする措置
少年の再非行を防ぐために何らかの指導や教育が必要と判断された場合には保護処分が決定されます。
保護観察
施設に収容することなく社会の中で生活しながら更生を目指す処分です。
保護観察官や保護司から生活や交友関係について定期的に指導を受けることになります。
特定少年に対しては6か月の保護観察や2年の保護観察といった期間の定めがある保護観察決定がなされることがあります。
児童自立支援施設・児童養護施設送致
比較的年齢が低く家庭環境に問題がある少年などが対象となることが多い処分です。
児童福祉法上の支援を行うことを目的とした開放的な施設で生活指導や学習指導を受けます。
家庭的な環境の中で職員と児童が生活を共にすることが特徴です。
少年院送致
社会内での更生が難しく集中的な矯正教育が必要と判断された場合に少年院へ送致されます。
少年院は少年の年齢や心身の状況などに応じて複数の種類に分かれています。
心身に著しい障害がない少年を対象とする第1種や第2種などのほか刑の執行を受ける者を対象とする第4種などがあります。
また特定少年のうち遵守事項違反があった者を収容する第5種少年院という新しい区分も設けられました。
少年院では生活指導や職業指導および教科指導などのきめ細かい教育が実施されます。
都道府県知事または児童相談所長送致
児童福祉機関による専門的な指導や保護が適当であると判断された場合には事件が都道府県知事や児童相談所長に送致されます。
その後は児童相談所での指導や児童福祉施設への入所措置などがとられることになります。
検察官送致(逆送)|刑事裁判を受ける場合
犯行時に14歳以上であり拘禁刑以上の刑にあたる罪の事件を起こした場合にあたり刑事処分を受けることが相当と判断されたときに行われる手続きです。
この決定が出ると事件は検察官に送り返され成人の刑事裁判と同じ手続きで審理されることになります。
特に犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為で被害者を死亡させた場合などは原則として検察官送致としなければならないという厳格なルールが存在します。
弁護士(付添人)へ相談
少年事件において少年の権利を守り更生をサポートするために弁護士に依頼することは非常に有効な手段となります。
少年事件における弁護士は付添人という立場で活動します。
付添人とは?弁護士がなるメリット
付添人とは家庭裁判所の手続きにおいて少年や保護者に付き添って法的な援助を行うひとのことです。
法律の専門家である弁護士が付添人になることで複雑な手続きの中で少年が不当な扱いを受けないように保護することができます。
また少年が自分の犯した罪と向き合い反省を深めるためのサポートも行います。
早期の身柄解放を目指せる
少年が逮捕や勾留をされている場合、弁護士は検察官や裁判官に対して身体拘束の必要性がないことを主張し早期の身柄解放を目指す活動を行います。
また家庭裁判所に送致された後も観護措置による少年鑑別所への収容を避けるための意見書を提出するなど学校や日常生活への影響を最小限に抑えるための働きかけを行います。
不利益な処分の回避・軽減が期待できる
弁護士は少年審判において少年にとって有利になる事情を裁判官に論理的に説明します。
少年が深く反省していることや、家庭での監督環境が十分に整っていることなどを客観的な資料に基づいて主張することで少年院送致などの重い処分を回避し、保護観察などの社会内での更生を目指すことが期待できます。
被害者との示談交渉を任せられる
被害者がいる事件においては被害者への謝罪と被害弁償を行うことが少年の更生にとっても重要となります。
しかし少年や保護者が直接被害者と接触することは感情的な対立を招くおそれがあり困難な場合がほとんどです。
弁護士が間に立つことで冷静に示談交渉を進めることができます。
被害者との示談が成立している事実は処分を決定する上で有利な要素として考慮される可能性が高いといえます。
少年の更生に向けた環境調整をサポートできる
弁護士は少年が再び非行に走らないための環境づくりをサポートします。
保護者に対して具体的な指導方法のアドバイスを行ったり学校や勤務先との調整を行ったりして少年が社会に復帰しやすい環境を整える手伝いをします。
少年事件に関するよくある質問
少年事件について保護者や関係者からよく寄せられる疑問とその回答をまとめました。
Q. 少年事件で前科はつきますか?
事件によります。
家庭裁判所で保護観察や少年院送致などの保護処分を受けた場合、刑罰ではないため前科はつきません。
一方、家庭裁判所が検察官送致を行い、刑事裁判で有罪判決を受けた場合には前科がつきます。
したがって一般的な少年事件の多くでは前科がつくことはないと考えてよいでしょう。
Q. 学校に連絡はいきますか?退学になりますか?
学校に連絡が行くかどうかは、起こした事件の内容やお住まいの地域によって異なります。
家庭裁判所や警察などが、事案の重大性や指導が必要であると判断した場合、学校に情報提供が行われることがあります。
退学になるかどうかは学校の校則や判断によります。
Q. 弁護士に依頼する費用はどれくらいかかりますか?
弁護士に依頼する費用の相場は着手金や報酬金などを合わせて数十万円から100万円程度になることが一般的といえます。
個別の事件の複雑さや少年が身体を拘束されているかどうかによって費用は変動する可能性があります。
Q. 国選付添人と私選付添人の違いは何ですか?
国選付添人は一定の要件を満たす場合に国費によって選任される付添人です。
費用負担がないというメリットがありますが、依頼者が弁護士を選ぶことができないデメリットもあります。
一方、私選付添人は少年や保護者が自費で自由に弁護士を選ぶことができます。
また、私選付添人の場合、捜査の早い段階から活動を開始することができます。
少年事件も成人の刑事事件と同様、早期の段階での対応が求められるため、これは大きなメリットといえるでしょう。
Q. 被害者の方にはどのように対応すればよいですか?
少年事件において被害者に対して誠実な対応を行うことが重要です。
家庭裁判所では被害を受けた方が事件記録の閲覧やコピーをしたり心情や意見を述べたりできる配慮の制度が設けられています。
被害を受けた方の声は、調査や審判に反映される仕組みとなっています。
少年や保護者が直接連絡をとることはトラブルを招く恐れがあるため弁護士を通じて謝罪や被害弁償の意思を伝えることがもっとも安全で確実な対応方法といえます。
まとめ
少年事件は成人の刑事事件とは異なり少年の保護と更生を最大の目的として特別な手続きが進められます。
事件を起こしてしまった少年が自分自身の行為と向き合い再び社会で生活していくためには家庭裁判所の調査や教育的な働きかけが重要な役割を果たします。
もしお子様が事件に関わってしまった場合には焦らずに少年事件特有の仕組みを理解することが大切です。




