在留資格が取消に?犯罪とビザへの影響
2026/07/08

日本で働く外国人にとって、在留資格(ビザ)は日本で生活し、働き続けるための生命線です。
もし業務中に何らかの犯罪に巻き込まれたり、罪を犯してしまったりした場合、その後の刑事手続きだけでなく、在留資格にも深刻な影響が及ぶ可能性があります。
本記事では、業務上の犯罪が在留資格に与える影響や直面した際に取るべき行動について解説します。
【結論】犯罪で在留資格が危ういと感じたら?まず知るべきこと
結論から言うと、在日外国人が業務上の犯罪で有罪判決を受けたりした場合、在留資格が取り消され、日本からの退去強制(強制送還)となる可能性があります。
たとえ執行猶予付きの判決であっても、その後の在留期間の更新や資格変更において不利に働くことは避けられません。
刑事事件の対応と在留資格の保持は、同時並行で進めなければならない複雑な問題であり、初動の遅れが取り返しのつかない結果を招く恐れがあります。
そのため、ご自身やご家族、あるいは従業員が業務上の犯罪に関与してしまった場合は、一刻も早く国際法務に精通している弁護士に相談することが重要です。
外国人でも日本の法律が適用される!刑事手続きの基本的な流れ
日本国内で発生した犯罪については、原則として日本国籍の有無にかかわらず、日本の法律が適用されます。
これは属地主義と呼ばれる原則に基づいています。
したがって、外国人が業務上の犯罪に行った場合も、日本人と同様の刑事手続きに服することになります。
逮捕・勾留|身柄が拘束される期間
外国人の方が、警察などの捜査機関によって犯罪の嫌疑をかけられると、日本人と同様の手続きで逮捕される可能性があります。
逮捕されると、最大で72時間身柄が拘束され、警察や検察官による取り調べを受けます。
その後、検察官が引き続き身柄の拘束が必要と判断し、裁判官がそれを認めた場合、勾留という手続きに移行します。
勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない事由がある場合はさらに最大10日間延長されることがあります。
つまり、逮捕から起訴・不起訴の決定まで、最長で23日間にわたって身柄が拘束されることになるのです。
逮捕期間中は、家族であっても面会は許されません。
また勾留決定後に関しては、逮捕期間中よりは制限が緩くなるものの、外部との連絡は厳しく制限され、仕事に行くこともできなくなります。
外国人の方の場合、日本人に比べ、取り調べで十分な意思疎通ができないことや、逃亡の可能性が高いと判断され勾留される可能性が90パーセントと高いといわれています。
起訴・不起訴の判断|検察官の処分が重要
勾留が決定すると、検察官は勾留期間の満了までに収集した証拠や取り調べの内容に基づいて、被疑者を起訴するかどうかを判断します。
これは、刑事裁判を行うかどうかの判断で、起訴された場合約99パーセントの確率で有罪となります。
一方、不起訴処分となった場合は、その時点で刑事手続きは終了し、身柄は釈放され、前科もつきません。
不起訴処分を獲得することは、後の在留資格への影響を最小限に抑える上で非常に重要です。
なお、起訴後の身柄解放の手続きとして保釈制度というものがあります。
保釈請求を行い、裁判官に認められた場合、一定の制限はありますが留置場から出ることができます。
しかし、外国人の方の場合、海外逃亡のおそれがあることを理由に認められないケースが少なくありません。
自力での対応は、ほぼ不可能といっても過言ではないので弁護士に依頼すべきといえます。
刑事裁判|有罪・無罪と刑罰が決まる
外国人の方が起訴され、正式な裁判が開かれると裁判官が検察官と弁護側の主張や証拠を踏まえて、有罪か無罪か、有罪の場合はどのような刑罰を科すかを決定します。
日本の刑事裁判における有罪率は非常に高いため、起訴された時点で厳しい状況に立たされることになります。
判決には、拘禁刑や罰金刑などがあります。
刑事処分が在留資格(ビザ)に与える3つの影響
刑事手続きの結果として下された処分は、外国人の方の在留資格に直接的かつ重大な影響を及ぼします。
影響の度合いは、処分の重さや犯罪の性質、現在の在留資格の種類によって異なります。
確認していきましょう。
影響1:退去強制(強制送還)になるケース
外国人の方が、日本で有罪となった場合の影響として退去強制になるケースが考えられます。
入管法第24条は、日本から退去強制される外国人の事由(退去強制事由)を定めています。
刑事事件で一定以上の刑罰を受けた場合、この退去強制事由に該当する可能性が高くなります。
実刑判決(拘禁刑)の場合
拘禁刑の実刑判決を受けた場合、刑務所に服役することになります。
入管法第24条第4号の規定により、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者は退去強制の対象となります。
実務上は、刑期を終えて出所した直後に、そのまま入管施設に収容され、母国へ強制送還される手続きが進められるのが一般的です。
また、薬物犯罪や売春関連の犯罪など、特定の犯罪については、刑の長さを問わず有罪判決を受けただけで退去強制事由に該当します。
執行猶予付き判決の場合
拘禁刑であっても、執行猶予が付いた場合は直ちに刑務所に入る必要はありません。
しかし、執行猶予付き判決であっても、1年を超える拘禁刑の判決であれば、退去強制の対象となり得ます。
ただし、執行猶予付きの場合は、後述する在留特別許可が認められる余地が実刑よりも相対的に大きくなる傾向はあります。
また、在留資格が永住者や特別永住者であっても、一定の重大な犯罪で有罪判決を受けた場合は、退去強制の対象となる可能性がありますので注意が必要です。
罰金刑の場合
罰金刑のみであった場合は、薬物事件などをのぞき、直ちに退去強制事由に該当するケースは限定的です。
しかし、罰金刑であっても前科となるため、後の在留資格の更新や変更の際に、素行善良要件を満たさないと判断され、不許可になるリスクがあります。
影響2:在留資格が取り消されるケース
外国人の方が有罪判決を受けた場合の影響として在留資格が取り消されることが考えられます。
入管法第22条の4では、在留資格の取消事由を以下のように定めています。
(1) 偽りその他不正の手段により、上陸拒否事由該当性に関する入国審査官の判断を誤らせて上陸許可の証印等を受けた場合
(2)(1)のほか、偽りその他不正の手段により、本邦で行おうとする活動を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(例えば、本邦で単純労働を行おうとする者が「技術」の在留資格に該当する活動を行う旨申告した場合) 又は本邦で行おうとする活動以外の事実を偽り、上陸許可の証印等を受けた場合(例えば、申請人が自身の経歴を偽った場合)
(3)(1)又は(2)に該当する以外の場合で、虚偽の書類を提出して上陸許可の証印等を受けた場合
(4) 偽りその他不正の手段により、在留特別許可を受けた場合
(5) 入管法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を行っておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留している場合(ただし、正当な理由がある場合を除く)
(6) 入管法別表第1の上欄の在留資格をもって在留する者が、当該在留資格に係る活動を継続して3か月以上行っていない場合(ただし、当該活動を行わ
ないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除きます。)
(7) 「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(日本人の子及び特別養子を除)又は「永住者の配偶者等」の在留資格をもって在留する者(永住者等の子を除く)が、その配偶者としての活動を継続して6か月以上行っていない場合
(8) 上陸の許可又は在留資格の変更許可等により、新たに中長期在留者となった者が、当該許可を受けてから90日以内に、出入国在留管理庁長官に住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由ある場合を除く)
(9) 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に届け出た住居地から退去した日から90日以内に、出入国在留管理庁長官に新しい住居地の届出をしない場合(ただし、届出をしないことにつき正当な理由がある場合を除きます。)
(10) 中長期在留者が、出入国在留管理庁長官に虚偽の住居地を届け出た場合
刑事事件の場合、上記の(1)の偽りその他不正の手段により在留許可を受けた場合などがあてはまるといえます。
たとえば、以下のようなことを行った場合、在留資格そのものが取り消される可能性が高くなります。
- 就労資格を持たないのに不法に就労した結果として犯罪に関与した
- 本来の在留資格の活動を3ヶ月以上行わずに犯罪行為に及んでいた
在留資格が取り消されると、日本に滞在する法的根拠を失うため、速やかに出国するか、退去強制の手続きに移行することになります。
影響3:在留期間の更新や変更が不許可になるケース
外国人の方が刑事事件で有罪となった場合の影響として、在留期間の更新や変更が認められなくなることが考えられます。
退去強制事由や在留資格の取消事由に直接該当しなくても、刑事処分を受けたという事実は、次回の在留期間の更新や在留資格の変更申請の際に大きなマイナス材料となります。
出入国在留管理庁は、更新や変更の許可において素行が善良であることを要件(素行善良要件)の一つとして審査しています。
したがって、起訴されて罰金刑を含む有罪判決を受けた場合、この素行善良要件を満たしていないと判断され、更新や変更が不許可となる可能性が高くなります。
更新が不許可となれば、現在の在留期間が満了した時点で帰国しなければならなくなります。
また、不起訴処分であっても、警察の捜査対象となった事実が入管に把握されれば、審査において厳しい目で見られる可能性があります。
在留資格を守るために!トラブル発生時に取るべき4つの行動
もしご自身が犯罪に関与し、警察の捜査を受けたり、逮捕されたりしてしまった場合、在留資格と日本の生活を守るためには以下のような行動を行うことが大切です。
1. 弁護士にすぐに相談する
外国人の方が在留資格を守るための行動として、刑事事件と入管法の両方に精通した弁護士に相談することです。
逮捕直後から弁護士のアドバイスを受け、適切な対応を行うことが、不起訴処分の獲得や刑の軽減につながります。
また、弁護士は、刑事事件の結果が在留資格にどのような影響を与えるかを予測し、同時並行で入管対応の戦略を立てることができるため、心強い味方になるといって良いでしょう。
2. 不起訴処分の獲得を目指す(被害者との示談など)
外国人の方が在留資格への悪影響を最小限に抑えるためには、不起訴処分を目指すことです。
不起訴処分を獲得できれば前科はつかず、身柄も解放されます。
不起訴処分を得るためには、弁護士を通じて、被害者がいる犯罪の場合は、早期に被害者と示談を成立させることが重要です。
示談が成立し、被害者が処罰を望まない旨の意思表示を得られれば、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。
3. 会社への報告・相談
外国人の方が業務中、または業務上の犯罪を行った場合、勤務先の会社との連携が大切になります。
相談せず逮捕された場合、無断欠勤が続けば解雇されるリスクがあります。
横領事件を起こした場合には、会社と示談を行い、成立することによって事件化しない可能性があります。
4. 家族への連絡と協力依頼
身柄を拘束されている間は、外部との連絡が制限されます。
弁護士を通じて家族に状況を伝え、示談金の準備や、後述する在留特別許可を申請する際の環境調整など、様々な面での協力を仰ぐ必要があります。
特に、日本に家族がいる場合、そのことは在留特別許可の審査において重要な考慮要素となります。
退去強制になっても諦めないで!在留特別許可という可能性
刑事事件の結果、退去強制事由に該当してしまった場合でも、直ちに強制送還が確定するわけではありません。
法務大臣の裁量によって例外的に日本への在留が認められる在留特別許可という制度があります。
在留特別許可とは?
在留特別許可とは、退去強制事由に該当する外国人であっても、法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると判断した場合に、例外的に付与される在留許可のことです。
これはあくまで法務大臣の裁量による恩恵的な措置であり、要件を満たせば必ず許可される性質のものではありません。
在留特別許可で考慮される事情
在留特別許可の判断においては、外国人の日本での生活状況や家族関係、犯罪の性質など、様々な事情が総合的に考慮されます。
法務省が公表している在留特別許可に係るガイドラインによると、主に以下のような要素が考慮されます。
■プラスの要素
- 日本人や特別永住者、定住者などと適法に婚姻し、実体のある結婚生活を送っている
- 日本で出生し、長期間日本で教育を受けている実子を扶養している
- 日本での滞在期間が長く、日本社会への定着性が高い
- 難病などで日本での治療が必要である
■マイナスの要素(消極要素)
- 殺人、強盗、薬物犯罪などの重大な罪を犯した
- 過去にも退去強制歴がある
- 入管の調査に非協力的・または虚偽の申告をした
- 犯罪の背景に反社会的勢力との関わりがある
刑事事件を起こした場合、マイナスの要素が強く働きます。
そのため、日本に家族がいる、反省して更生環境が整っているなど、プラスの要素をいかに主張・立証できるかが、在留特別許可を得るための鍵となります。
外国人犯罪と在留資格に関するよくある質問(Q&A)
外国人犯罪と在留資格に関する質問をまとめてみました。
Q1. 逮捕されたらすぐに強制送還されますか?
逮捕されただけで直ちに強制送還されるわけではありません。
まず刑事手続きが進められ、起訴・不起訴の判断、そして有罪判決の確定を待ちます。
有罪判決が確定し、それが退去強制事由に該当する場合に、入管による退去強制の手続きが開始されます。
Q2. 執行猶予付き判決なら日本に残り続けられますか?
執行猶予付き判決であっても、その刑期が1年を超える懲役若しくは禁錮であれば退去強制事由に該当します。
そのため、必ずしも日本に残り続けられるわけではありません。
退去強制の手続きの中で、在留特別許可を求めていく必要があります。
Q3. 罰金刑でもビザの更新に影響しますか?
影響する可能性が高いです。
罰金刑であっても前科となるため、在留期間の更新や資格変更の審査において、素行善良要件を満たしていないと判断されるリスクがあります。
事案によっては不許可となるケースも十分にあり得ます。
Q4. 会社に解雇されてしまいますか?
業務上の犯罪で有罪判決を受けた場合、就業規則の懲戒解雇事由に該当する可能性が高く、解雇されるリスクは大きいです。
会社を解雇され、就労先を失った状態での在留資格の更新は非常に困難になります。
Q5. 弁護士費用はどのくらいかかりますか?
事案の複雑さや依頼する業務の範囲によって大きく異なります。
一般的には、着手金と報酬金を合わせて数十万円から100万円以上かかることもあります。
事前に弁護士から見積もりを取り、費用体系を明確に確認しておくことが重要です。
まとめ
外国人の方が犯罪を行った場合、刑事罰という直接的な制裁だけでなく、日本での生活基盤そのものを奪いかねない重大な結果を招く恐れがあります。
万が一、警察の捜査を受けたり逮捕されたりした場合は、パニックにならず、一刻も早く弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。




