【最新】危険運転致死傷罪の改正法|改正自動車運転死傷処罰法とは?

2026/06/30

【最新】危険運転致死傷罪の改正法|改正自動車運転死傷処罰法とは?

2026年6月25日、国会で危険運転に関する法律の改正が決定されました。

この法律は、2026年7月中旬までに施行される予定です。

今回は、危険運転致死傷罪の改正内容や、自動車運転致死傷処罰法について解説します。

危険運転致死傷罪とは?

危険運転致死傷罪とは、故意に極めて危険な運転行為を行い、その結果としてひとを死傷させた者を厳罰に処するための規定です。

この罪が制定された目的は、ひとの生命や身体の安全です。

また、危険な運転行為を厳しく処罰することにより、交通の安全も担保していると考えられます。

危険運転致死傷罪が成立するには、その危険運転を故意に行ったことが前提です。

ただし、事故によって生じた死傷の結果次第で、故意のない場合にも本罪が成立する性質を持っています。

その意味では、結果的加重犯のような側面も有していると言えます。

なお、本罪の対象となる運転行為は、必ずしも道路上のものに限られない点にも注意が必要です。

自動車運転死傷処罰法とは?

自動車運転死傷処罰法は2013年の法改正によって、刑法から独立しました。

現在は、自動車の運転によりひとを死傷させる行為等の処罰に関する法律として規定が引き継がれています。

従来の規定では、正常な運転が困難な状態や、進行を制御することが困難な高速度といった抽象的な表現が用いられていました。

そのため、捜査機関や裁判所において危険性の立証が難しく、実際の判決において適用が見送られるケースが多発していたという深刻な課題がありました。

しかし、2026年6月25日に成立した改正法により規定が具体化されることで、施行後は適用しやすくなることが期待されています。

【明確化】改正法による要件の変更点

2026年6月25日に成立した改正自動車運転死傷処罰法の変更点は、これまで抽象的であった危険運転の要件に、明確な客観的数値基準が導入されたことです。

改正によって制定された基準を確認していきましょう。

アルコール数値基準

自動車運転死傷処罰法の変更点として、アルコール数値基準の明確化が挙げられます。

現行法では、アルコールの影響によって現実に正常な運転が困難な状態に陥っていたことの因果関係を個別具体的に立証する必要がありました。

しかし、改正法によりこの要件が抜本的に見直され、誰の目にも明らかな客観的数値基準が導入されています。

対象行為として追加された基準は、以下の通り規定されています。

  • 身体に血液1mLにつき1.0mg以上のアルコールを保有する状態
  • 呼気1Lにつき0.5mg以上のアルコールを保有する状態
  • その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態

上記のいずれかの基準を満たす状態で自動車を走行させた場合は、構成要件に該当するとみなされます。

明確な数値が設定されたことで、悪質な飲酒運転に対する迅速かつ厳格な処罰が可能になると期待されます。

酒気帯び運転・酒酔い運転との基準値比較

道路交通法における酒気帯び運転は、呼気1Lにつき0.15mg以上のアルコール保有で成立する規定です。

改正自動車運転死傷処罰法で定められた呼気1Lにつき0.5mg以上という数値は、酒気帯び運転の基準の3倍を超える泥酔状態といえます。

今回の改正に伴い、道路交通法における酒酔い運転についても要件の明確化がおこなわれました。

酒酔い運転の要件にも同一の客観的な数値基準が新たに適用されることになります。

これにより一定の基準を超える状態での運転は、取り締まられることになります。

高速度

改正自動車運転死傷処罰法では、速度超過による危険運転について、具体的な数値基準が追加規定されました。

現行法では直線道路であればかなりの高速度を出していても、進行を制御することが困難とは認定されにくい実態がありました。

このような実態との乖離と暴走行為を適切に処罰するため、以下の行為が対象として新たに追加されています。

  • 最高速度が60km/h以下の道路において最高速度を50km/h以上超える速度で運転する行為
  • 最高速度が60km/hを超える道路において最高速度を60km/h以上超える速度で運転する行為
  • 重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度で運転する行為

新設|ドリフト・ウィリー走行

今回の自動車運転死傷処罰法改正では、新たに特殊な暴走行為への規制が強化されます。

殊更にタイヤを滑らせまたは浮かせることにより、進行を制御することが困難な状態にさせて自動車を走行させる行為が新たに処罰対象として、追加されました。

これはいわゆる四輪自動車による意図的なドリフト走行や、二輪自動車によるウィリー走行などを念頭に置いた規定と言えます。

危険運転致死傷罪の構成要件

危険運転致死傷罪は複数の具体的な危険運転行為を個別に処罰の対象として詳細に規定しています。

それぞれの危険運転について確認していきましょう。

1. アルコール又は薬物の影響による運転

危険運転致死傷罪の構成要件として、アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させることがあります。

アルコールとは一般的な酒類だけでなく、アルコール分を含むものであれば、飲料用でないものも該当すると広く解釈されています。

また、薬物については麻薬や覚せい剤などの規制薬物に限らず、睡眠薬などの医薬品やシンナーなどの吸入剤も含まれます。

正常な運転が困難な状態とは、道路や交通の状況に応じた的確な運転操作をおこなうことが困難な心身の状態を指します。

判例では前方の視覚探索能力が低下し、現実に運転操作を行うことが困難な状態にあることが求められると示されています。

2. 進行を制御することが困難な高速度での走行

危険運転致死傷罪の構成要件として、進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させることが挙げられます。

進行を制御することが困難な状態とは、速度が速すぎるためカーブなどを曲がりきれず、道路状況に応じて安全に進行することが困難な状態を意味します。

裁判所の判決によると、道路に他の走行車両などの存在があるかどうかは考慮せず、道路の形状や路面の状況などといった客観的事実が優先されるべきとされています。

3. 進行を制御する技能を有しない運転

危険運転致死傷罪の構成要件には、進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させるというものがあります。

これは無免許運転であることと完全に同義ではありません。

ハンドルやブレーキなどの運転装置を操作する初歩的な技能すら有しないような、運転技量が極めて未熟な状態を指す規定となります。

ペダル操作の位置関係を正確に把握していないなど、いつ重大な事故を起こしてもおかしくないような根本的な技能欠如が処罰の対象となります。

4. 人又は車の通行を妨害する目的での運転

危険運転致死傷罪の構成要件として、人や車の通行を妨害する目的で走行中の自動車の直前に進入し著しく接近する運転行為があります

相手方の自由かつ安全な通行を妨げることを意図し、または妨害することになるのが確実であることを認識している必要があります。

ここでいう相手方とは歩行者などの自然人や、軽車両を含む車両全般を広く指しています。

判例では相手方に急な回避措置をとらせる意図がしっかりと認定されました。

いわゆる悪質なあおり運転や割り込みなどがこれに該当します。

重大な交通の危険を生じさせる速度とは、衝突すれば死傷の結果を伴うような大きな事故を生じさせる蓋然性があると認められる速度のことです。

5. 赤色信号等の殊更な無視

危険運転致死傷罪の構成要件には赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転するというものがあります。

殊更に無視とは故意に赤信号に従わない行為のうち、およそ赤信号に従う意思のないものを指します。

裁判所は、赤信号であることについて未必的な認識しかないときは、殊更に無視したことにはならないと判断されています。

一方で信号の規制自体を意に介することなく、確定的な認識を持って交差点に進入した場合はこの構成要件に該当するとみなされます。

通常は時速20km程度で走行していれば、重大な交通の危険を生じさせる速度の要件を満たすと考えられています。

複数の自動車が互いに赤信号を無視する意思を認識して暴走した場合に、共同正犯の成立が認められた判例もあります。

6. 通行禁止道路での危険な速度での運転

危険運転致死傷罪の構成要件として、通行禁止道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為があります。

道路標識などにより自動車の通行が禁止されている道路を走行し、歩行者などに大きな危険を及ぼす行為を指す規定となります。

歩行者専用道路や一方通行の逆走などにおいて、死傷事故を発生させる蓋然性の高い速度で運転した場合に適用されると考えられます。

危険運転と過失運転の違いは?関連する罪状を比較

自動車事故に適用される法律には、危険運転致死傷罪以外にも状況に応じた種類が存在します。

加害者の運転時の状態や故意の有無、あるいは事故後の行動によって適用される罪状が異なります。

それぞれ確認していきましょう。

準危険運転致死傷罪

準危険運転致死傷罪はアルコールや薬物の影響により正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転し、結果としてひとを死傷させた場合に成立します。

また、統合失調症やてんかん、低血糖症やそう鬱病などの政令で定める特定の病気の影響により事故を起こした場合も対象となりえます。

これらの影響で正常な運転が困難な状態に陥ることを認識しながら運転を開始したという重大な過失が問われます。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪、通称発覚免脱罪や逃げ得防止規定と呼ばれる罪です。

アルコールや薬物の影響下で自動車を運転して死傷事故を起こした者が、その影響の発覚を免れる目的で逃走するなどの行為をした場合に適用されます。

事故現場を離れて体内のアルコール濃度が下がるのを待つ行為や、事故後にさらにアルコールを摂取して事実をごまかす行為などが該当します。

飲酒運転の事実を隠蔽しようとする卑劣な行為を防ぐため、12年以下の拘禁刑という重い刑罰が明記されています。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、一般的な交通事故に対して広く適用される規定となります。

自動車の運転上必要な注意を怠り、よってひとを死傷させる行為を処罰の対象としています。

前方不注意や安全不確認、あるいはハンドル操作の単純なミスなど日常的な過失による事故が主な対象となります。

7年以下の懲役もしくは拘禁刑、または100万円以下の罰金に処せられる規定となっています。

危険運転致死傷罪との決定的な違いは、故意に危険な状況を作り出そうとする積極的な意思が存在しない点です。

危険運転致死傷罪の罰則(法定刑)と行政処分

危険な運転によってひとを死傷させた結果に対しては、刑事と行政の両面から厳しいペナルティがあります。

刑事罰:拘禁刑の内容と無免許運転による加重処罰

危険運転致死傷罪によりひとを負傷させた場合は15年以下の長期間にわたる拘禁刑に処せられます。

ひとを死亡させた場合は1年以上の有期懲役となり、最長で20年ものあいだ刑務所に収監される可能性があります。

また法律には、無免許運転による加重処罰の規定が存在します。

対象となる罪を犯した者が無免許運転であった場合は、ひとを死亡させた際の刑の下限が6か月以上の有期懲役に引き上げられます。

無免許状態での暴走行為は法秩序を軽視するものであり、重い刑事責任を問われることになります。

行政処分:免許取消しと欠格期間

危険運転は、刑事裁判で下される判決とは別に、公安委員会から厳しい行政処分が科されることになります。

重大な死傷事故を起こした場合は、違反点数が大幅に加算され、原則として運転免許は1発で取消しとなります。

さらに再び免許を取得することが一切できない欠格期間が長期間にわたって指定されます。

事故の被害状況や過去の違反歴、あるいは逃走の有無によっては、最長で10年間ものあいだ免許を取得できなくなります。

被害者との示談交渉|賠償金や慰謝料はどうなる?

危険運転により逮捕された場合、刑事手続と並行して被害者に対する民事上の損害賠償問題について対応する必要があります。

被害者との示談交渉について確認していきましょう。

示談交渉の重要性とタイミング

被害者側と示談が成立しているかどうかは、刑事処分の重さを決定するうえで重要な考慮要素となります。

検察官による起訴の判断や裁判官の量刑判断において、被害者への被害弁償が済んでいることは加害者にとって有利な事情として扱われます。

したがって、事故発生後できる限り早いタイミングで誠意を持った謝罪をおこない、示談交渉を開始することが望ましいといえます。

とはいえ、加害者が身柄を拘束されていることが多く、被害者感情も峻烈を極めるため、当事者同士での直接交渉はほぼ不可能です。

したがって、勾留前であれば私選弁護人、勾留決定後であれば国選弁護人に選任された弁護士が対応することになります。

賠償金の内訳と飲酒運転による慰謝料増額

加害者が、被害者に支払うべき損害賠償金には治療費や休業損害に加え、将来の逸失利益や慰謝料などさまざまな項目が含まれます。

被害者が死亡した場合や重度の後遺障害が残った場合、賠償総額が数千万円を超えることも少なくありません。

特に飲酒運転や悪質なあおり運転などの危険運転による事故の場合、通常の交通事故よりも被害者の精神的苦痛が大きいとみなされます。

そのため示談交渉において慰謝料の金額が、通常の相場基準よりも大幅に増額して認められる明確な傾向にあります。

飲酒運転事故における過失割合

交通事故の損害賠償では双方の不注意の度合いを示す過失割合が大きな争点となります。

通常の交差点事故などであれば被害者側にも一定の過失が認められ、賠償額が減額されることがあります。

しかし加害者が極めて危険な運転をおこなっていた場合、加害者に一方的な重過失があると判断されます。

その結果被害者側の過失割合がゼロに修正され、加害者が損害の全額を賠償する義務を負うケースが大半となります。

危険運転致死傷罪の疑いをかけられたら弁護士へ相談すべき理由

危険運転致死傷罪は重い犯罪であり、初期対応を少しでも誤ると取り返しのつかない結果を招きます。

もし疑いをかけられた場合は直ちに交通事件に精通した弁護士へ相談することが大切です。

早期の身柄解放を目指せる

危険運転で逮捕された場合に、弁護士へ相談すべき理由として早期の身柄解放を見込めることが挙げられます。

重大事故を起こした場合、その場で逮捕され、長期間の身柄拘束を受ける可能性が高いです。

身柄拘束が何週間も長引けば会社を解雇されたり、学業を継続できなくなったりするなど社会生活への影響が計り知れません。

弁護士は逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを客観的証拠に基づき、捜査機関や裁判所に主張します。

これにより勾留の阻止や保釈請求を通じた早期の釈放に向けた活動をおこなうことが可能となります。

被害者との示談交渉を任せられる

重大事故の被害者や遺族は、加害者に対して強い怒りと処罰感情を抱いています。

加害者本人や家族が直接連絡をとろうとしても非常識とみなされ、面会や電話を完全に拒否されることがほとんどです。

しかし、法律の専門家である弁護士が代理人として交渉を行うことで、被害者の心情に配慮したアプローチが可能になります。

適切な時期を見計らって謝罪の意を伝え、賠償金の提示を含めた建設的な示談交渉を進めることができるようになります。

処分の軽減や執行猶予獲得に向けた弁護活動

危険運転致死傷罪で起訴された場合、結果の重大性から、実刑判決となる可能性が高いです。

しかし、弁護士に依頼することで危険運転の数値基準を満たしていないと反証できる余地が残されていることがあります。

客観的な証拠に基づく精緻な主張を展開し、ドライブレコーダーの解析などをおこなうことで事実関係を争い、過失運転致死傷罪への訴因変更を主張することが重要です。

また、弁護士が示談の成立や再犯防止に向けた環境調整といった有利な事情を裁判所に提示することで、減軽を目指す弁護活動が期待できます。

危険運転致死傷罪に関するよくある質問

危険運転致死傷罪に関するよくある質問を以下にまとめましたので確認してみてください。

初犯でも実刑判決になりますか?

死亡事故を引き起こした場合は初犯であっても、刑務所へ収監される実刑判決が下される可能性が高いです。

法定刑の下限が1年の拘禁刑となっているものの、失われた命という結果の重大性から執行猶予が付くことは稀といえます。

とはいえ、負傷事故であり被害者の傷害が比較的軽く、かつ多額の賠償を伴う示談が完全に成立している場合などは、初犯に限り執行猶予が付く可能性は残されています。

ただし、行為の悪質性が高いと裁判官に判断されれば、負傷事故であっても即座に長期間の実刑となる恐れが十分にあります。

同乗者やお酒を提供した人も罪に問われますか?

危険な飲酒運転に関しては運転者本人だけでなく、その周囲のひとにも厳しい法的責任が問われます。

道路交通法の関連規定により、運転者が飲酒していることを知りながら車両を提供したひとや、同乗したひとに対しても重い罰則が規定されています。

運転者が酒酔い運転をした場合、酒類提供者や車両提供者、そして同乗者は3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金に処せられます。

刑事罰だけでなく民事上の損害賠償においても共同不法行為として加害者と連帯して、数千万円規模の賠償責任を負うこともあります。

事故を起こしても自動車保険は使えますか?

被害者の救済を目的とする自賠責保険や対人対物賠償保険については、原則として保険金が支払われます。

加害者が飲酒運転や無免許運転などの悪質な危険運転をおこなっていた場合でも、被害者の治療費などをカバーする機能は維持されます。

ただし、加害者自身のケガに対する人身傷害補償や、自身の車両の修理代に関する車両保険については重大な免責事由に該当します。

そのため加害者自身の損害に対する保険金は一切支払われない厳しい規定となっています。

まとめ

今回は、危険運転致死傷罪について紹介しました。

2026年6月25日に成立した改正自動車運転死傷処罰法により、危険運転致死傷罪の適用要件は明確なものになります。

危険運転に当たる行為をおこなうことは許されない行為です。

しかし、実際に事故を起こしてしまった場合、時間が巻き戻るわけではありません。

したがって、重大な事故を引き起こした場合には、すぐに交通事件の解決実績が豊富な弁護士に依頼することを検討してください。。

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