事後強盗とは?成立要件や万引きとの違い

2026/08/26

事後強盗とは?成立要件や万引きとの違い

万引きなどが見つかり、逃げるために暴行・脅迫を行うと事後強盗罪に問われる可能性があります。

本記事では事後強盗罪とは何か、成立要件や万引きとの違いについて解説します。

事後強盗とは?

事後強盗罪とは、窃盗を行ったときに逃亡するために暴行や脅迫したときに成立する罪を言います。

刑法において規定されており、準強盗罪と呼ばれることもあります。

なお、最初から強盗を行うつもりで計画していた場合、通常の強盗罪と扱われます。

また、事後強盗は窃盗が成功したときのみに成立するのではなく、結果的にものを盗めなかった未遂であっても適用されます。

事後強盗罪の成立要件

事後強盗罪は、以下の要件をすべて満たした場合に成立します。

  • 窃盗犯であること
  • 特定の目的があること
  • 窃盗の機会に暴行または脅迫が行われたこと
  • 行われた暴行・脅迫が、相手の反抗を抑圧する程度であったこと

具体的に確認していきましょう。

窃盗犯であること

事後強盗罪の1つめの成立要件として、窃盗犯であることが挙げられます。

ここでいう窃盗には、実際に盗んだ既遂の状態だけでなく、物色を始めたり商品をポケットに入れようとしたりした未遂の状態も含まれます。

一方で、まだ盗みの実行に着手していない準備段階で警察官や通行人に暴行を加えた場合は、事後強盗罪ではなく、暴行や傷害罪など別の犯罪が検討されることになります。

特定の目的があること

事後強盗罪の2つめの成立要件として、以下のような目的で暴行、脅迫を行うことが挙げられます。

  • 窃盗犯人が盗んだ品物を取り返されることを防ぐ目的
  • 逮捕を免れる目的
  • 証拠を隠滅する目的

たとえば、万引きが見つかったときに、捕まりたくないという理由で、店員などを突き倒して逃げ出した場合が考えられます。

なお、事後強盗の成立には、暴行や脅迫を受けた者が、実際に逮捕しようとする動作があったかどうかは関係ありません。

窃盗を行った者が、捕まりたくないなどの目的で、他人を暴行、脅迫したかどうかが重要となります。

窃盗の機会に暴行・脅迫を行うこと

事後強盗罪が成立する3つめの要件として、暴行や脅迫が窃盗の機会に行われたかどうかです。

窃盗の機会とは、窃盗の犯行を行ったときや、逃亡しているときなどの状況を指します。

店舗の敷地内での暴行はもちろん、店を出てから数百メートルにわたって追跡を受け、その逃走ルート上で追いつかれそうになって加えた暴行も、窃盗の機会に含まれます。

裁判例の中には、犯行後に現場付近の天井裏に約3時間隠れていた犯人が、駆けつけた警察官に対して暴行を加えたケースで事後強盗の成立を認めたものも存在します。

一方で、誰にも発見されずに完全に逃走し、いったん追跡が途切れてから数時間後に全く別の場所で職務質問を受けた際に暴行を加えた場合などは窃盗の機会とは認められず事後強盗罪は成立しません。

相手の反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫

事後強盗罪が成立する4つ目の要件として暴行や脅迫の程度が、相手の反抗を抑圧するものであることが挙げられます。

 相手の反抗を抑圧する程度の暴行や脅迫とは、以下のようなものとなります。

■暴行:一般人が抵抗を断念してしまうほど強い物理的な力

■脅迫:強い恐怖を与える害悪の告知

具体的にその基準に達しているかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 当事者双方の年齢、性別、体格など
  • 犯行が行われた時刻、場所
  • 犯行の人数
  • 凶器の有無およびその種類

たとえば、屈強な男性であれば耐えられるような突き飛ばしであっても、高齢者や小柄な女性に対して夜間の路上で行われた場合は、反抗を抑圧する程度の暴行とみなされる可能性が高くなります。

また、ナイフやモデルガンなどの危険な物を提示して脅した場合は、それだけで強い反抗抑圧性が認められます。

事後強盗罪と他の犯罪との違い

事後強盗罪と、類似したほかの犯罪との違いについて紹介します。

主な類似犯罪との違いは以下の通りです。

罪名特徴事後強盗との違い
窃盗罪・万引き暴行・脅迫なしで盗む暴行・脅迫の有無
強盗罪手段として暴行・脅迫を用いる暴行・脅迫と盗みの順番
恐喝罪脅して物を差し出させる目的と暴行・脅迫の強さ

それぞれの犯罪と事後強盗罪の違いについて確認していきましょう。

窃盗罪・万引き

万引きなどの窃盗罪は、他人の財物を無断で持っていく行為です。

窃盗の成立要件において、暴行や脅迫することは含まれていません。

対して、事後強盗の成立には、窃盗の機会に暴行や脅迫が必要です。

これが2つの罪の大きな違いといえるでしょう。

強盗罪

通常の強盗罪は、はじめから、財物を奪い取るための直接的な手段として相手に対して反抗を抑圧するレベルの暴行や脅迫を行う犯罪です。

具体的には、金を渡さなければ命はないとナイフを突きつけてから財物を奪う行為などが挙げられます。

これに対し事後強盗罪は、窃盗後に逃亡や証拠隠滅のために、暴行や脅迫を用いることで成立します。

つまり、この2つの罪の違いは、他人の財物を窃盗する段階で、暴行や脅迫を用いていたかどうかといえます。

恐喝罪

恐喝罪は、相手を脅かして怖がらせ、その恐怖心に乗じて財物を差し出させたり、利益を得たりする犯罪です。

事後強盗罪との大きな違いは、加えられる暴行や脅迫の強さの程度にあります。

恐喝罪における脅しは、相手が怖がりつつも意思を出して財物を渡す余地が残っている程度のものを指します。

また、恐喝罪は、強盗罪と同様、財物を奪い取るために暴行や脅迫を用いることで成立します。

この2つの違いが事後強盗罪と恐喝罪の大きく異なるといえるでしょう。

事後強盗罪の刑罰

事後強盗罪は、強盗罪と同じであるとされているため、裁判で認められた場合の刑罰は極めて重く設定されています。

法定刑や執行猶予がつく可能性があるのかなどを確認していきましょう。

法定刑

事後強盗罪が成立した場合の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑となります。

罰金刑が設けられていないため、裁判で有罪判決が出た場合、刑務所に収監される可能性が高いといえるでしょう。

また、最低でも5年という長期の拘禁刑が科される点からも、事後強盗罪がどれほど重い犯罪として扱われているかが分かります。

執行猶予はつくのか?

執行猶予をつけることができるのは3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の判決が下された場合に限られます。

事後強盗罪の法定刑の下限は5年であるため、基本的には執行猶予をつくことはありません。

ただし、裁判官の裁量によって刑を減軽してもらう酌量減軽の適用を受け、3年以下の拘禁刑に書された場合には、執行猶予がつく余地があります。

裁判官から減軽を受けるには、被害者の方との示談が成立していることが前提条件といえます。

示談により、被害回復や宥恕(ゆうじょ)を得ると、執行猶予がつきやすくなるといえるでしょう。

人を傷つけた場合

窃盗を行い、逃走時などに他人を暴行し、怪我を負わせたり死亡させたりした場合は強盗致死傷罪というが適用されます。

事後強盗致死傷罪となった場合、以下のように法定刑が重くなります。

罪名内容法定刑
強盗致傷人を負傷させた無期または6年以上の拘禁刑
強盗致死人を死亡させた死刑または無期拘禁刑

強盗致傷罪が適用された場合、たとえ相手の怪我の程度が擦り傷や全治数日などの軽微なものであっても、下限が6年以上の拘禁刑という極めて重い刑罰が科されます。

さらに強盗致死傷事件は、市民が裁判官とともに審理に参加する裁判員裁判の対象となり、通常の刑事裁判よりも、起訴後勾留の期間が長くなる傾向にあります。

事後強盗に関する質問

事後強盗罪に関して、事件の当事者やそのご家族から法律相談の場でよく寄せられる代表的な質問とその回答をまとめました。

Q. 万引きで見つかって逃げる際、遮ろうとした警備員を軽く突き飛ばしただけでも事後強盗になりますか?

十分に事後強盗罪が成立する可能性があります。

単に相手の服に手が触れた程度や、接触を避けるために身をかわした程度であれば暴行とみなされないケースもありますが、相手が転倒するほどの力で押した場合や、背後から強く突いた場合は、事後強盗罪とされる可能性が高まります。

さらに、その暴行によって相手が地面に倒れて打撲などの怪我を負った場合は、強盗致傷罪となり、さらに厳しい処罰の対象となります。

Q. 万引きがバレて逃げ出す際、誰にもケガをさせていなくても事後強盗罪で逮捕されることはありますか?

誰にも怪我をさせていない場合であっても、事後強盗罪で逮捕、有罪となりえます。

理由として、事後強盗罪の成立条件には、反抗抑圧レベルの暴行・脅迫を行うことであり、相手の負傷は成立の必須条件ではないためです。

Q. 事後強盗罪は、初犯であっても実刑になって刑務所に行くことになりますか?

事後強盗罪は 初犯であっても実刑判決となり、刑務所に収監される可能性が高い犯罪といえます。

事後強盗罪の法定刑は最低でも5年の拘禁刑であり、原則、執行猶予をつけることができません。

初犯だからといって自動的に執行猶予がつくわけではなく、酌量減軽を獲得するための示談成立や反省の立証ができて初めて刑の執行が猶予されます。

Q. 家族が事後強盗罪で逮捕されてしまいました。いつになったら面会できますか?

逮捕から最初の約72時間は、弁護士以外者と面会することができません。

面会が可能となるのは、裁判所が勾留を決定してからです。

ただし、事後強盗のような重大事件では罪証隠滅の恐れがあるとして接見禁止決定が出されることもあり、勾留が決定しても家族との面会が制限されることがあります。

Q. 弁護士に刑事事件の相談をしたいのですが、費用が心配です。無料相談や、土曜日・夜間でも対応してもらえる窓口はありますか?

刑事事件を取り扱う法律事務所の中には、初回の法律相談を無料で受け付けているところや、土日・祝日・夜間の問い合わせに対応している窓口が多数存在します。

逮捕を伴う刑事事件は時間の経過とともに手続きが急速に進むため、費用の心配から相談を躊躇している間に不利な状況が作られてしまう恐れがあります。

また、資力が一定以下の方であれば、国が費用を負担・立替する国選弁護制度や法テラスの仕組みを利用できる場合もあります。

まとめ

今回は事後強盗罪について解説しました。

事後強盗罪は、窃盗行為を行った後に、逮捕を免れる目的などで暴行や脅迫を行った際に成立する非常に罪の重い犯罪です。

通常の強盗罪と同じ扱いを受けるため、初犯であっても実刑判決となって刑務所に収監されるリスクが高いといえます。

したがって、ご家族が逮捕されたなどの場合には、早期の段階で刑事事件に精通している弁護士に相談することを検討してください。

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