法律のトラブルは、大きく刑事事件と民事事件の2つにわけることができます。
本記事では、刑事事件と民事事件の違いや、それぞれの流れなどについて解説します。
刑事事件:犯罪に対する国の刑罰手続き
刑事事件とは、刑法やその他の犯罪に関する法律に違反した行為に対して、国家が刑罰を科すための公的な手続きを指します。
刑事事件で取り締まる犯罪行為は、放っておくと国の秩序が乱れ、治安が悪くなり、安心して国民が生活できなくなってしまいます。
そのため、警察などの捜査機関が取り調べを行い、犯罪を行った疑いが強いときには検察が起訴をして、最終的に裁判官が公開法廷で有罪か無罪の判決をくだします。
また、裁判官は、犯罪の内容や被告人の反省度合いなどさまざまな要素を考慮し、刑罰を決定します。
この、捜査から刑罰が決定するまでの流れを刑事事件といいます。
なお、刑事事件の起訴には、公開の法廷で裁判を行う公判請求と、書面審査のみで罰金刑を科す略式命令の2つがあります。
略式起訴は、罰金刑以下で、かつ被疑者が罪を行ったことを認めているときに行われます。
民事事件:個人間のトラブルを解決する手続き
民事事件とは、個人や法人など私人間で発生した権利や義務に関する争いを解決するための手続き全般を指します。
たとえば、以下のような場合に、当事者間の話し合いや調停、裁判などで解決を目指すことになります。
- 契約上の約束が守られなかった場合の違約金請求
- 交通事故によって生じた損害賠償請求
- 離婚に伴う慰謝料
- 不当解雇の取り消し請求
なお、民事事件の解決方法は、裁判だけに限りません。
むしろ、裁判は最終手段ともいえ、当事者間での話し合いや調停を利用して解決を図るケースが多いといえます。
【比較表】刑事事件と民事事件の違い
刑事事件と民事事件の違いは、大きく5つあります。
まずは、2つの事件の違いを表にまとめてみましたので確認してみてください。
| 項目 | 刑事事件 | 民事事件 |
| 当事者 | 検察VS被告人 | 個人VS個人など法人を含めた私人間の争い |
| 目的 | 社会秩序の維持 | 個人の権利回復と損害賠償による紛争解決 |
| 裁判を起こす人 | 検察官の裁判所に請求する | 原告である個人や法人が裁判所に申立てを行う |
| 判決 | 有罪か無罪を決め、拘禁刑や罰金など刑事罰を科す | 損害賠償や権利の回復が認められる |
| 証明 | 検察官が立証責任を負う | 申立て内容に関する立証責任は原告が負う |
上記のように、刑事事件と民事事件では、手続きの目的や当事者の立場が大きく異なります。
刑事事件と民事事件の手続きの流れ
刑事事件と民事事件の手続きは進め方が大きく異なります。
それぞれ確認していきましょう。
刑事事件の流れ:逮捕から捜査・裁判・判決まで
刑事事件は、以下のような流れで捜査から裁判、判決まで進みます。
刑事事件は、警察が被害届などの提出で事件を認知したときから始まります。
警察は、犯罪を行った者を特定するために聞き込みや現場検証などの捜査を行います。
捜査線上に、犯罪を行った疑いが強い者がいた場合には、裁判所の許可を取って逮捕します。
なお、犯罪の嫌疑をかけられた者は、必ず逮捕されるとは限りません。
理由として、逮捕は憲法で保障されている、身体の自由を制限する行為であるからです。
したがって、犯罪がその場で行われたなどのケースを除き、逃亡や罪証隠滅の恐れがあると警察が判断したときに、裁判所の許可を得て身柄を拘束します。
被疑者として逮捕された場合、警察や検察から取り調べを受けます。
取り調べの結果、犯罪の嫌疑が晴れたときや、被疑者が十分に反省していると判断された場合には、検察は不起訴処分をくだします。
一方で、取り調べにより、犯罪の嫌疑がさらに深まったときには、検察官が裁判所に対し起訴を行い、刑事裁判が行われることになります。
なお、起訴された段階で、被疑者は被告人という名称になります。
刑事裁判が始まると、検察官が立証責任を持っているので被告人が犯罪を行ったということを、捜査資料などを用いて主張します。
一方で、被告人は犯罪をしなかったことを立証する必要はなく、検察官の主張が誤っていることを証明できれば、無罪となります。
これは、「疑わしきは被告人の利益に」という原則があるからです。
言葉にすると簡単に思えるかもしれませんが、実際は起訴後の有罪率は約99パーセントと、立証は非常に難しいといえます。
裁判官は検察と被告人の主張をもとに、有罪にするかどうか、また量刑判断をくだします。
判決を受けて、検察や被告人が控訴を行わなかったときには、事件が終結します。
民事事件の流れ:訴えの提起から和解・判決・強制執行まで
私人間で紛争があった場合、まず解決をはかるために、当事者間の話し合いを行い解決をはかります。
当事者間で折り合いがつかなかったり、紛争が激化したときには民事裁判が行われます。
民事裁判の流れは以下の図のとおりです。
民事事件は、裁判所に対して原告が訴状を提出することから始まります。
訴状が受理されると、裁判所から第1回口頭弁論期日の通知が来ます。
その後、日程に変更がなければ、概ね1か月から2か月程度で初回の裁判がはじまります。
第1回口頭弁論では、裁判官が、原告に訴状の内容に誤りがないかどうかを確認します。
また、被告にも答弁書の内容に誤りがないかを確認し、終了します。
2回目以降は、原告と被告それぞれ、準備した証拠をもとに、裁判官へ自身の主張に正当性があることを伝えます。
裁判官は、双方の主張を聞き、両者で争いがない部分を事実認定します。
なお、民事では、裁判の途中で双方に和解の余地があるときには、和解勧告が行われます。
和解勧告を受け双方がそれを受けいれたときには、条件を取り決めて裁判が終了します。
一方で、合意に至らない場合は、裁判官が判決をくだします。
慰謝料など損害賠償請求が裁判で認められても、相手方から支払いがなかった場合、判決書に執行文があれば、そこで記載された内容の範囲内で強制執行を行うことができます。
弁護士に相談すべきタイミングと選び方のポイント
法的トラブルに直面したとき、どのタイミングで誰に相談すべきか悩む方は少なくありません。
適切な相談の時期と選択の基準を整理します。
すぐに弁護士に相談すべきケース
直ちに対応を要する状況について、以下の項目を挙げます。
- 警察から突然呼び出しを受けたとき
- 裁判所から訴状や支払督促が届いたとき
- 契約上のトラブルで多額の金銭が絡んでいるとき
- 事故の示談交渉で相手方の主張に納得がいかないとき
こうした状況では、時間が経過するほど不利な状況に陥るリスクが高まります。
そのため、問題が大きくなる前に速やかに弁護士へ相談することを検討してください。
失敗しない弁護士の選び方3つのポイント
弁護士を選ぶときは、以下のポイントを考慮しながら、検討した方がよいといえます。
- 該当する分野の解決実績が豊富であること
- 相談時の説明が分かりやすく親親切であること
- 費用体系が明確に提示されていること
信頼できる相談相手を見つけることで、精神的な負担を軽減しながら適切な解決を目指すことができます。
自身の状況に最も適した専門家を選ぶことが、トラブル解決に向けた確実な取り組みとなります。
弁護士費用の目と相談方法
弁護士に依頼する際にかかる費について、以下の表にまとめます。
| 費用項目 | 内容の概要 | 目安の金額 |
| 相談料 | 法律相談を行う対価 | 1時間あたり1万円程度 |
| 着手金 | 事件を依頼した初期に支払う費用 | 事件の規模により変動が20万円から40万円程度 |
| 報酬金 | 事件が解決した結果に応じて支払う費用 | 経済的利益の数パーセント |
費用は刑事事件を依頼するか、民事事件を依頼するか、また相談したタイミングによって大きく異なる場合があるので、不安があるときには弁護士へ詳細に確認すると良いでしょう。
民事事件と刑事事件の違いに関するQ&A
民事事件と刑事事件に関するよくある質問をまとめてみましたので確認してみてください。
Q1:刑事事件と民事事件の最大の違いは何ですか?
刑事事件と民事事件の大きな違いは、争う相手です。
刑事事件は、検察と争うことになります。
対して民事事件は、個人や法人間の争いになります。
Q2:民事事件であれば警察は介入してくれませんか?
警察には、民事不介入の原則があります。
したがって、お金の貸し借りなどのトラブルといった事件性がないものの場合には、介入することはありません。
ただし、DVなど暴力を伴ったトラブルに対しては、夫婦や恋人などの私人間の争いではなく、刑事事件と発展しえるので警察も介入することが可能です。
Q3:刑事裁判で加害者が有罪になれば、被害についてのお金は戻ってきますか?
刑事事件と民事事件は、別々の事件として扱われます。
したがって、詐欺などの被害に遭い、加害者の有罪が確定したとしてもお金が戻ってくる保証はありません。
ただし、詐欺や窃盗といった、お金に関する犯罪は、被害回復がなされたことは、起訴不起訴の判断や、量刑判断に関わってくるため、示談することによってお金が戻ってくることもあります。
Q4:民事裁判で負けたら、逮捕されたり前科がついたりしますか?
民事裁判は、私人間の争いであるため、敗訴したとしても逮捕や前科がつくことはありません。
Q5:刑事で不起訴(あるいは無罪)になっても、民事で損害賠償を請求されますか?
不起訴や無罪になっても、被害者の方から損害賠償請求を行われることはあります。
刑事事件は、基本的に犯罪を行う意思があったかどうかが前提として手続きが進みます。
そのため、故意なく人のものを壊してしまったときには、基本的に罪に問われません。
一方で、民事事件はわざとでなく、過失であったとしても相手の権利を侵害したときには、相手方次第では、精神的苦痛を理由に慰謝料などの損害賠償請求を行われることがあります。
Q6:刑事事件の示談金と、民事事件の和解金・損害賠償金は何が違いますか?
刑事事件で使われる示談金とは、被害者の方の権利を侵害したことに対する賠償金という性質を持ちます。
したがって、呼び方は異なりますが、和解金や損害賠償金と同じと考えて良いと思います。
Q7:裁判所は刑事と民事で別々の場所にあるのですか?
刑事事件、民事事件ともに、基本的には同じ裁判所で開かれます。
ただし、離婚など家族に関する裁判は、家庭裁判所で行われるため、内容によって異なるケースもあります。
Q8:お金がなくても弁護士に相談する方法はありますか?
刑事事件の場合、逮捕後、勾留が決定すると国選弁護人がつけられます。
国選弁護人をつけることは、憲法で保障されている権利であるため、お金がないひとでも利用できる制度です。
一方、民事事件については、内容によって法テラスを利用するとお金がそれほどなくても、弁護士に依頼できる可能性があります。
Q9:相手と「民事で和解」すれば、後から刑事告訴されることはありませんか?
告訴とは、被害者の方が加害者に対して強く処罰を望むときに行う手続きです。
そのため、被害者の方に刑事告訴をされる前であったり、事件化する前に、話し合いによって和解すれば、告訴されることはほとんどないといってよいでしょう。
ただし、示談書の内容に「告訴をしない」という条項がないと、後になってトラブルになる可能性があるため、困ったときには弁護士に相談すべきといえます。
Q10:2025年6月からの刑法改正による拘禁刑導入は、民事事件に影響しますか?
拘禁刑の導入は、刑が確定した受刑者の状況に応じた指導や刑務作業などを行い、更生を目指すことが目的であるため、民事事件との直接的な関係はありません。
まとめ
今回は刑事事件と民事事件の違いや、それぞれの手続きについて紹介しました。
刑事事件と民事事件では、目的や手続きの流れが大きく異なります。
特に刑事事件は、逮捕などされてしまうとどのタイミングで弁護士に依頼したかどうかによって、身柄拘束される期間が大きく異なるため、困ったときには直ぐに相談することをお勧めします。
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刑事事件は、動き出しの早さで結果が変わります。被害者の連絡先はご本人には開示されないため、示談交渉には弁護士が必要です。示談が成立すれば、不起訴となり前科がつかない可能性もあります。
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