会社設立の相談は誰にすべき?税理士・司法書士・行政書士・弁護士・社労士など専門家の選び方
2026/07/17

事業を法人化するにあたり、手続きの進め方や相談先に悩む方は数多くいらっしゃると思います。
会社を設立するためには、法務局への登記だけでなく、税務署への届出や許認可の取得など多岐にわたる手続きが求められます。
本記事では、会社設立を検討したとき、どの専門家に相談すべきなのかなどについて解説します。
会社設立で相談できる専門家とその役割
会社設立を相談できる専門家は、5つに分けることができます。
各専門家によって、得意とする業務や独占領域が異なるのでそれぞれ確認していきましょう。
税理士:税務と資金調達のプロフェッショナル
会社設立を検討したときに相談する専門家として税理士が考えられます。
税理士は、税務申告の代理や税務相談を独占業務として行う税金に関する専門家です。
会社を設立する場合、資本金の額によって消費税の免税期間が変わるなど、設立時の決定事項が将来の納税額に関わってくるケースは少なくありません。
また、役員報酬は税務上のルールに則って決定しなければ経費として認められないことがあります。
このような悩みがある場合、税理士に相談することで決算期の設定や資本金や役員報酬をいくらにするかなどのアドバイスを受けることができます。
また、税理士は日本政策金融公庫や民間金融機関からの創業融資に関する支援も得意としています。
事業計画書の作成をサポートし、金融機関の担当者と面談に同席するなどのサポートを行うこ都が可能です。
司法書士:会社設立登記の専門家
会社を設立したいときに相談できる専門家として司法書士がいます。
司法書士は、法務局に対する登記申請の手続きを独占業務として行う専門家です。
会社を設立するためには、本店の所在地を管轄する法務局へ設立登記申請を行わなければなりません。
会社登記申請の代理業務を適法に行えるのは司法書士および弁護士のみに限られています。
司法書士に依頼することで、会社の根本規則を定めた定款の作成から法務局への申請までをスムーズに完了させることができます。
また、電子定款の作成システムを導入している司法書士事務所であれば、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円を節約することが可能です。
さらに定款に記載する事業目的の文言についても、将来の事業展開を見据えた適切な表現を提案できます。
行政書士:許認可申請と書類作成の専門家
会社を設立して許認可の必要な事業を行いたい場合、相談できる専門家として行政書士が挙げられます。
行政書士は、官公庁へ提出する許認可申請書類の作成や提出の代理を主な業務とする専門家です。
日本では、行政機関からの特別な許可や認可を受けなければ、営業を開始できない業種が多数あります。
たとえば、以下のような業種は、すべて所轄庁に許可などを受ける必要があります。
- 建設業
- 宅地建物取引業
- 飲食店営業
- 古物商
- 産業廃棄物収集運搬業
許認可の要件は非常に複雑であり、資本金の額や役員の経歴、営業所の設備などに厳しい基準が設けられています。
要件を満たさずに会社を設立してしまうと、後から要件を満たすために増資や役員の変更といった余計な手間と費用がかかります。
しかし、行政書士に事前に相談していれば、事業に必要な許認可の要件をクリアした状態での会社を設立することが可能になります。
また、各種契約書の作成や、補助金申請のサポートを行うことも可能です。
弁護士:法律全般の専門家
会社設立を行う場合に相談できる専門家として弁護士が考えられます。
弁護士は、法律事務全般を取り扱うことができ、制限なく訴訟の代理権限を持つ唯一の専門家です。
また、他の士業の業務範囲であっても、弁護士であれば原則として対応することが法律上認められています。
会社設立時における弁護士の主な役割は、将来起こりうる法的トラブルを未然に防ぐためのリスクマネジメントです。
複数の共同創業者で会社を立ち上げる場合、創業者間契約書を作成して株式の取り扱いや権限を明確にしておくことが求められます。
提供するサービスや商品の利用規約、プライバシーポリシーの作成なども弁護士に依頼すべき重要な業務といえるでしょう。
革新的なビジネスモデルを展開したい場合、弁護士による適法性の確認は欠かせません。
社会保険労務士(社労士):人事・労務の専門家
会社設立前後の労務について相談できる専門家として、社会保険労務士がいます。
社会保険労務士は、労働社会保険の手続きや労務管理の相談を専門に行う人事・労務の専門家です。
会社を設立した場合、従業員を1人でも雇用した場合には、社会保険への加入が義務付けられます。
このような場合、社労士は年金事務所や労働基準監督署の書類提出を代理することができます。
また、社労士は厚生労働省が管轄する雇用関係の助成金申請を行えます。
そのため、キャリアアップ助成金など、要件を満たせば返済不要の資金を受け取れる制度の提案や申請のサポートをすることが可能です。
【悩み・目的別】専門家の選び方
会社設立を検討したときに相談すべき専門家は、ご自身の置かれている状況や、悩みによって異なります。
どのように専門家を選べばいいか、悩みや目的別に確認していきましょう。
会社の形態(株式会社・合同会社など)で迷っている場合
株式会社や合同会社など会社の形態で迷っている場合は、税理士や司法書士への相談が適しています。
税理士に相談した場合、将来的な資金調達のしやすさや、役員構成による税務上のメリット・デメリットの観点からアドバイスを得られます。
司法書士の場合には、それぞれの組織形態が持つ法的な権限の違いや、設立費用の差額について説明し、サポートを行うことができます。
融資などの資金調達の相談をしたい場合
会社を設立するにあたり、創業融資の悩みを抱えている場合には、税理士を相談先として選ぶべきといえます。
融資支援に強い税理士は、審査担当者が納得する事業計画書の作り方を熟知しているため、適切なサポートを行うことが可能です。
また、認定経営革新等支援機関の要件を満たす税理士であれば、通常よりも有利な条件で融資を受けられる制度を利用できることもあります。
登記などの設立手続きを丸ごと任せたい場合
会社設立の書類作成や役所への訪問といった煩雑な手続きをすべて任せたい場合は、司法書士やに相談すべきといえます。
多くの司法書士事務所は、税理士や社労士と連携し、設立から税務署への届出までをワンストップで提供することができます。
ワンストップ対応の事務所を選ぶことで、経営者の方の負担が減る点は大きなメリットといえるでしょう。
許認可が必要な事業を始めたい場合
許認可が必要な事業を行いたいときに選ぶべき専門家は、行政書士です。
許認可の取得要件はそれぞれで異なります。
許認可要件を無視して会社を作ってしまうと、そのままでは許可が下りず、営業を開始できないという事態になりかねません。
しかし、行政書士に事前のチェックを依頼することで許認可を取得できる会社の器を設計してもらうことができます。
ただし、日本の許認可は非常に多いため、行政書士に依頼するのであれば、その業種の許認可に精通した者を選ぶべきと言えます。
起業後の税務・会計が不安な場合
会社設立後の経理業務や毎年の決算申告に不安を抱えている場合、早期に税理士と顧問契約の相談を進めるべきです。
開業初期の段階から税理士のアドバイスを受けることで、正しい帳簿付けのルールを構築することができます。
従業員を雇う予定がある場合
会社設立後に従業員を雇い入れる計画がある場合は、社会保険労務士に相談すべきといえます。
労働基準法や社会保険に関する法令は非常に複雑であり、知らずに違反してしまう経営者も少なくありません。
また、残業代の未払いや不当解雇といった労務トラブルは、会社の存続を脅かす大きなリスクとなります。
そのため、社労士に雇用契約書のひな形を作成してもらい、労働時間や賃金のルールを明確にしておくことをおすすめします。
事業の法的リスクを最小限にしたい場合
新しい技術を使ったサービスや、法律の規制が不明確な領域でビジネスを行う場合に選ぶべき専門家は、弁護士です。
新しい領域の事業を開始するなどの場合、知的財産権の取り扱いや営業秘密など自社しかしりえない情報を守るために、予防法務が重要となります。
また、消費者向けのサービスを展開する場合は、特定商取引法や個人情報保護法に準拠した規約を整備しなければなりません。
弁護士は、会社が事業を展開するときのリスクを最小限に抑えるためにサポートを行うことができます。
専門家に会社設立を依頼するメリット・デメリット
会社設立を専門家に相談することは多くのメリットがありますが、デメリットも生じます。
それぞれ確認していきましょう。
メリット
専門家に会社設立を依頼するメリットとして、経営者の貴重な時間を節約できることです。
定款の作成や各種届出書には専門的な法律用語が多く、一から調べて作成するには非常に時間がかかります。
しかし、専門家に依頼すれば書類作成や申請などを代理してくれるので、顧客開拓や商品開発といった利益を生む活動に時間を投資することができます。
また、書類の不備による役所での差し戻しリスクがない点も大きなメリットといえるでしょう。
デメリット
会社設立を専門家に依頼するデメリットとして、金銭的なコストが発生することです。
司法書士や税理士への代行手数料として、数万円から十数万円程度の出費を見込んでおく必要があります。
また、専門家のスキルや得意分野は一律ではないため、自身の事業領域に対する理解が浅い専門家にあたるリスクも考慮すべきです。
【比較表】自分で設立・専門家に依頼
会社設立を自分で手続きを行う場合と専門家に依頼する場合の違いを以下の表にまとめましたので確認してみてください。
| 比較項目 | 自分で設立する場合 | 専門家に依頼する場合 |
| 手間・時間 | 調査や書類作成に数十時間単位の膨大な手間がかかる。 | 必要書類の署名や押印のみで済み、大幅な時間短縮になる。 |
| 金銭的コスト | 法定費用のみで済む。(紙の定款の場合は印紙代4万円が別途発生)。 | 法定費用のほかに、数万円から十数万円の代行報酬が発生する。 |
| 正確性・安心感 | 知識不足による書類不備や、やり直しのリスクが高い。 | 法令を遵守した完璧な書類が作成され、安心して事業を始められる。 |
| 設立後のサポート | 自己責任で対応し、トラブル発生時は都度対処が必要になる。 | 節税アドバイスや融資支援、労務管理などの継続的な支援を受けられる。 |
相談先を選ぶ際に失敗しないための3つのポイント
会社を設立するときの専門家選びは、重要な意思決定の一つです。
失敗しないためには、次の3つのポイントを踏まえて相談先を探すといいでしょう。
ポイント1:会社設立に関する実績が豊富か
会社設立を相談する専門家を探すときのポイントとして、実績が豊富であるかどうかが挙げられます。
どの士業であっても、すべての専門分野に精通しているわけではありません。
相続税に特化している税理士や、不動産登記を専門としている司法書士など、専門領域に特化した専門家は多数います。
したがって、会社設立や起業家支援に特化し、豊富な対応実績を持つ事務所を選ぶことが大切です。
また、業界特有の商慣習やキャッシュフローの動きを理解している専門家であれば、より的確なアドバイスをもらうことができます。
ポイント2:料金体系が明確で分かりやすいか
専門家選びに失敗しないポイントとして、料金体系が明確でわかりやすいかどうかです。
会社設立の代行費用が極端に安い場合、後になって追加費用が発生することがあります。
たとえば、設立手数料を0円とする代わりに、高額な月額顧問契約を数年間解約できない条件になっているケースが考えられます。
したがって、依頼する前に代行手数料、実費、その後の顧問料を含めた総額の提示を求めましょう。
追加料金が発生する条件は何か、どこまでの範囲の業務が基本料金に含まれているのかを契約書で確認することが必須です。
料金体系に関する質問に対して、曖昧な回答しかしない事務所は避けるのが賢明です。
ポイント3:コミュニケーションが円滑で、信頼できる人柄か
会社設立を検討した際に、専門家選びを失敗しないためのポイントとして、コミュニケーションが円滑で信頼できるかどうかです。
専門家とは、会社設立時だけでなく、設立後も長く付き合っていく可能性が高いです。
そのため、専門用語を多用して一方的に話すのではなく、分かりやすい言葉で丁寧に説明してくれるかなどきちんとコミュニケーションが取れるかどうかが大切です。
また、メールやチャットでの問い合わせに対して、迅速に返答をくれるかどうかも重要です。
初回相談時には、ご自身と専門家の相性が合うかどうか確認するとよいでしょう。
費用を抑えたい方向け|会社設立の無料相談窓口
会社設立の相談は士業以外にも、無料相談窓口が設けられています。
公的な支援機関を活用することで、有益な情報を得ながら初期費用を抑えることが可能です。
それぞれ確認していきましょう。
商工会議所・商工会
全国の各地域に設置されている商工会議所や商工会では、会社設立に関する無料の相談窓口を設けています。
地域のビジネス環境に精通した経営指導員が、事業計画のブラッシュアップや資金繰りの相談に乗ってくれます。
また、商工会議所などで定期的に開催される創業塾やセミナーに参加することで、起業に必要な基礎知識を体系的に学ぶことができます。
地元の経営者とのネットワークを構築する場としても非常に有用な機関といえるでしょう
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国(中小企業庁)が全国の各都道府県に設置している無料の経営相談窓口です。
中小企業診断士をはじめとする多様な分野の専門家が在籍しており、何度でも無料で相談できる点が最大の魅力です。
会社設立の手順だけでなく、売上拡大のためのマーケティング戦略やITツールの導入など、幅広い経営課題に対応しています。
起業前で目的が明確になっていない状態からでも親身に相談に乗ってくれるため、事業の方向性を整理するのに役立ちます。
自治体の創業者支援窓口
市区町村の役所内に、創業者向けの専用相談窓口が設けられている自治体は数多くあります。
特に注目すべきは、産業競争力強化法に基づく特定創業支援等事業の認定を受ける制度です。
自治体が指定する創業セミナーを一定回数受講するなどの条件を満たすと、証明書が発行されます。
この証明書を利用することで、株式会社設立時の登録免許税が半額に減免されるなど、大きな経済的メリットを得られます。
ただし、利用できる制度は自治体によって異なるため、創業予定地の役所へ事前に問い合わせることが大切です。
会社設立の流れと各段階で頼れる専門家
会社を設立して事業を軌道に乗せるまでには、いくつかの段階を経る必要があります。
設立の流れを確認していきましょう。
Step1:会社概要の決定
会社を設立する場合、以下のような基本事項を決定する必要があります。
- 商号(会社名)
- 本店の所在地
- 事業目的
- 資本金の額
- 発起人(出資者)
- 役員の構成
この段階での決定は後戻りしにくいため、事業計画に合致しているかを弁護士や司法書士、に相談しながら固めていくのが理想的です。
事業目的の適法性や許認可との兼ね合いについては、行政書士のアドバイスが非常に役立ちます。
Step2:定款の作成・認証
決定した会社概要をもとに、会社の憲法とも言える定款の文面を作成します。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に持ち込み、公証人の認証を受ける手続きが必須となります。
この手続きを代行するのは、主に司法書士や行政書士の役割です。
電子定款の作成システムを利用することで印紙代を節約できるため、代行を依頼する方がコスト面でもメリットが出やすくなります。
Step3:資本金の払い込み
定款の認証が完了したら、発起人の個人の銀行口座に対して資本金の払い込みを行います。
この作業は専門家が代行することができないため、発起人自身が金融機関の窓口やATMで振り込みを行う必要があります。
払い込みを証明するための通帳のコピー作成や書類の綴じ方については、司法書士から指示を受けながら進めます。
資本金の払い込み日が会社設立日よりも前になっていなければならないなど、細かいルールがあるため注意が必要です。
Step4:設立登記申請
会社設立に必要な書類すべて整ったら、本店の所在地を管轄する法務局へ設立登記の申請を行います。
法務局に書類を受け付けてもらった日が、法的な会社の設立日となります。
この登記申請の代理業務は、司法書士の力が必要となります。
登記申請から完了までには、法務局の混雑状況にもよりますが、おおむね1週間から2週間程度の時間がかかります。
Step5:設立後の各種届出
会社の登記が完了して会社の謄本(登記事項証明書)が取得できるようになったら、税務署や都道府県税事務所に対する開業の届出を行います。
法人設立届出書や青色申告の承認申請書などの作成と提出は、税理士の専門領域です。
社会保険の新規適用届については、年金事務所へ提出する必要があり、これは社会保険労務士が担当します。
設立後の届出には厳格な提出期限が設けられているため、登記完了と同時に速やかに各専門家へ手続きを依頼することが重要です。
まとめ
会社設立には多くの専門家が関わっており、それぞれが異なる法律に基づく独占業務と強みを持っています。
専門家への依頼は費用がかかるものの、手続きの手間を削減し、将来のリスクを回避することにつながります。
会社設立を検討している際には、ご自身の悩みや目的に合った専門家をぜひ、相談サポートで探してみてください。





