養育費の相場と計算方法

2026/10/09

養育費の相場と計算方法

養育費の金額は、父母が合意すれば自由に決められます。
話し合いの目安として、また調停や審判で金額を決める基準として使われているのが、裁判所が公表している養育費算定表です。

裁判所の養育費算定表による基本金額の目安

養育費算定表は、裁判所のサイトで公開されており、以下を考慮して相場が決められています。

  • 父母それぞれの年収
  • 給与所得者か自営業者
  • 子どもの人数
  • 年齢の区分

年収は、給与所得者であれば源泉徴収票の支払金額、つまり税金や社会保険料が引かれる前の額を見ます。
自営業者の場合は、確定申告書の課税される所得金額をもとに計算します。

子どもの年齢は、0歳から14歳と、15歳以上の2つに分けられています。

私立学費や医療費など特別の費用はどう分担する?

養育費算定表の金額には、公立の小中学校や高校に通う場合の教育費が含まれています。
私立学校の学費や塾の費用、大学の学費は、そのままでは算定表の額に含まれません。

私立学校の学費については、支払う側が進学に同意していたり、父母の収入や学歴から私立への進学が相当であったりした場合に、算定表の額に上乗せされることがあります。
上乗せする分は、公立の教育費を超える部分を、父母の収入の割合で分ける方法が一般的です。

医療費も考え方は同じです。
通院や薬代などのふだんの医療費は算定表の額に含まれていますが、手術や長期の入院など予想を超える出費は別に分担を話し合います。

とはいえ、離婚時の子どもの年齢などによっては、すべてを予測することはできません。
したがって取り決めの書面には、進学や病気で特別な出費が生じたときは別途協議する、という条項を入れておくことをおすすめします。

再婚や収入の増減があったら?事情変更による増額・減額請求

1度決めた養育費は、取り決めた時点では予測できなかった事情が生じた場合に、金額の変更を求めることが可能です。

変更が認められやすい事情には、次のようなものがあります。

  • 支払う側が失業し、または病気で収入が大きく減った
  • 受け取る側が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした
  • 支払う側が再婚し、扶養する子どもが増えた
  • 子どもの進学で教育費が大きく増えた

受け取る側の再婚相手が子どもと養子縁組をすると、子どもを扶養する義務は、まず養親と実の親である受け取る側が負います。
そのため、支払う側の養育費は減額や免除の対象になることがあります。
再婚しただけで養子縁組をしていない場合は、扱いが異なります。

変更は、まず相手と話し合い、まとまらなければ家庭裁判所に養育費増額請求調停や養育費減額請求調停を申し立てます。
支払う側が、収入が減ったからと一方的に支払いを止めると、取り決めどおりの金額で未払いが積み上がり、差し押さえを受けるおそれがあるため注意が必要です。

改正後も離婚協議書を公正証書にする理由?作り方・費用

先取特権ができたなら、もう公正証書は作らなくてよいのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、改正民法施行後も公正証書にする理由があります。

作り方や費用などを含め確認していきましょう。

一般先取特権には制限がある

養育費に与えられたのは、相手の財産全体を対象とする一般先取特権です。
債務名義なしで差し押さえを申し立てられる一方、使える範囲には次の制限があります。

子ども1人につき月8万円までしか対象にならない

先取特権の対象は、法務省令により、子ども1人につき月8万円までと定められています。

養育費を子ども1人につき、月10万円と取り決めていた場合、先取特権で回収できるのは月8万円の部分だけです。
残りの月2万円を差し押さえるには、公正証書や調停調書などの債務名義が必要になります。
支払う側の年収が高く、算定表で月8万円を超える家庭では、先取特権だけでは全額を回収できません。

子どもが18歳に達した後の分には行使できない

先取特権が及ぶのは、子どもの監護に必要な費用として法律が定めた部分です。
子どもが18歳に達した後の分については、先取特権を行使できないとされています。

つまり、18歳以降の分を回収するには債務名義が必要であるということです。
大学への進学を見込んで支払い期間を長く取り決めているような場合には、公正証書を作っておくべきといえます。

2026年3月31日以前に支払日が来た分は対象外

改正前に離婚した方も先取特権を使えますが、対象は2026年4月1日以降に支払日が来る分に限られます。
それより前からたまっている未払い分は、先取特権では回収できません。

取り決めの内容を示す書面に不備があると使えない

先取特権で差し押さえるには、養育費の取り決めを裏付ける書面を裁判所に出す必要があります。
夫婦だけで作った離婚協議書の場合、金額、支払日、支払い期間、対象となる子どもが明確に書かれているかを裁判所が確認します。
記載があいまいだと、追加の資料を求められたり、申立てが認められなかったりすることがあります。

強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、これらの制限を受けずに、取り決めた全額について強制執行を申し立てられます。
強制執行認諾文言とは、支払いを怠った場合はただちに強制執行を受けても異議を述べない、と支払う側が認める一文のことです。

離婚協議書を公正証書にする作成手順

公正証書は、公証役場で公証人が作成する公文書です。
作成までの流れは次のとおりです。

  1. 夫婦で養育費の金額、支払日、支払い期間などの条件を話し合って決める
  2. 公証役場に連絡して日程を予約し、合意内容のメモと必要書類を渡す
  3. 公証人が作った文案を夫婦で確認し、修正があれば伝える
  4. 予約した日に公証役場へ出向き、内容の読み聞かせを受けて署名する
  5. 手数料を支払い、公正証書の正本や謄本を受け取る

必要書類は公証役場によって多少異なりますが、主に以下のようなものが櫃余殃となります。

  • 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
  • 戸籍謄本
  • 財産を証明する書類

なお、公証人は、合意された内容を法的に正しい文書に整えますが、金額が妥当かどうかのアドバイスはしません。
算定表と比べて低すぎないか、支払い期間の書き方に争いの種が残っていないかは、公証役場へ行く前に確認しておく必要があります。

公正証書にするときの費用

公証人に支払う手数料は、公証人手数料令で決まっており、全国どの公証役場でも同じ基準です。
記載する金額の合計額に応じて、次のように定められています。

目的の価額手数料
50万円以下3000円
50万円を超え100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下1万3000円
500万円を超え1000万円以下2万円
1000万円を超え3000万円以下2万6000円

なお、養育費の目的の価額は、支払い期間が長くても5年分の総額が上限になりました。
月5万円を15年間支払う取り決めであれば、5万円かける12か月かける5年で300万円となり、手数料は1万3000円です。
このほか、正本や謄本の交付には1枚あたり数百円の手数料がかかります。

強制執行の申し立てから回収までの流れと費用

養育費の差し押さえでよく使われるのが、相手の給与や預金を対象とする債権差押えです。
債務名義に基づく強制執行でも、先取特権に基づく差し押さえでも、流れはほぼ同じです。

STEP1:必要書類の準備

最初に、裁判所に出す申立書と添付書類をそろえます。
申立書の書式は、裁判所のウェブサイトに養育費等に基づく差押え用のものが用意されています。

債務名義に基づく場合に必要な主な書類は次のとおりです。

  • 債権差押命令申立書
  • 当事者や差し押さえる債権を記載した目録
  • 公正証書や調停調書など債務名義の正本
  • 債務名義が相手に届いたことを示す送達証明書
  • 登記事項証明書

公正証書の場合は、作成した公証役場で、強制執行してよいことを示す執行文を付けてもらう必要があります。
家庭裁判所の調停調書や審判書は、原則として執行文がなくても申し立てられます。

先取特権に基づいて申し立てる場合は、債務名義の代わりに、養育費の取り決めを裏付ける書面を出します。
法定養育費を請求するときには、離婚したことや子どもの人数を示す戸籍謄本、離婚時から子どもと同居していることを示す住民票の写しなどが必要です。

STEP2:地方裁判所に提出・債権差押命令の申立て

書類がそろったら、相手の住所地を管轄する地方裁判所に提出します。
家庭裁判所ではない点に気を付けてください。

裁判所が書類を審査し、問題がなければ債権差押命令を出します。
差押命令は、相手本人と、給与を支払う勤務先や預金を預かる銀行に送られます。
この勤務先や銀行を、第三債務者と呼びます。

差押命令が届いた時点で、勤務先は差し押さえられた分の給与を相手に支払えなくなります。
給与の場合、通常の借金の取り立てでは手取りの4分の1までしか差し押さえられませんが、養育費では2分の1まで差し押さえられます。
1度の申立てで、まだ支払日が来ていない将来の分についても、毎月の給与から続けて差し押さえることができます。

STEP3:取立完了届を提出

差押命令が相手に届いてから1週間が過ぎると、勤務先や銀行から直接お金を受け取れるようになります。
通常の借金の取り立てでは4週間待つ必要がありますが、養育費は1週間に短縮されています。

受け取り方は、勤務先や銀行と連絡を取り、振込先の口座を伝えるのが一般的です。
お金を受け取るたびに、裁判所へ取立届を出します。
請求していた全額を受け取り終えたら、最後に取立完了届を出して手続きが終わります。

強制執行にかかる費用

養育費の債権差押命令の申立てには、申立手数料として4000円分の収入印紙が必要です。
ほかに、書類を送るための郵便切手を数千円分納めます。
切手の金額と組み合わせは裁判所ごとに異なります。

勤務先が分からず財産開示手続を使うときは2000円、第三者からの情報取得手続を使う場合は1000円の費用が別途かかります。
なお、情報取得手続では、照会先の数に応じた予納金も納めます。

なお、申立てにかかった費用は、差し押さえた財産から養育費と一緒に回収できます。

養育費の強制執行(差押え)の注意点

養育費の強制執行を行うときの注意点として、以下が考えられます。

法定養育費は2026年4月以降に離婚した者しか請求できない

法定養育費を請求できるのは、2026年4月1日以降に離婚した方に限られます。
2026年3月31日以前に離婚した方は、取り決めがないまま離婚していても、法定養育費は請求できないので注意してください。

この場合、相手と話し合うか、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てて金額を決めることになります。
調停で決まった養育費は、2026年4月1日以降に支払日が来る分であれば先取特権の対象にもなります。

差し押さえできる財産とできない財産がある

養育費の差し押さえを検討したときの注意点として、相手の財産であれば何でも差し押さえられるわけではないことです。
法律で、相手が最低限の生活を送れるよう、差し押さえてはいけない財産を定めています。

具体的に、差し押さえできる財産とできない財産は、以下のとおりです。

給与や退職金は、手取りの2分の1までであれば差し押さえられます。
残りの2分の1は、相手の生活費として手元に残ります。

なお、相手が無職で預金もない場合は、差し押さえる財産がなく、手続きをしても回収できません。

一般先取特権を行使するときは取り決めした証拠が必要

先取特権を使って養育費の強制執行を行う際の注意点として、取り決めした証拠を準備する必要があることです。
この書面には、少なくとも次の内容が書かれている必要があると考えられています。

  • 支払う人、受け取る人、対象となる子どもの氏名
  • 子どもごとの養育費の月額
  • 支払いの始まりと終わりの時期
  • 毎月の支払日と支払方法
  • 作成した日付と、父母双方の署名

口約束だったり、メッセージアプリのやりとりしか残っていなかったりしたときには、取り決めを裏付ける書面として認められない可能性があります。
離婚協議書を自分たちで作る場合でも、上の項目を漏れなく書き、双方が署名した原本を保管しておいてください。

養育費に関する質問

養育費の相談でよくある質問についてまとめてみましたので確認してください。

Q.養育費に時効はありますか?

あります。
父母の話し合いや公正証書で取り決めた養育費は、毎月の支払日から5年で時効にかかります。
時効は月ごとに進むため、5年より前の分は、相手が「支払わない」という意思表示をすると、請求できなくなっていきます。

なお、調停や審判で決まった養育費のうち、調停の成立や審判の確定の時点ですでに支払日が来ていた分は、時効が10年に延びます。
将来分は5年のままです。

Q.相手が自己破産した場合、養育費はもらえますか?

自己破産をして借金の支払い義務が免除されても、養育費の支払い義務はなくなりません。
破産法は、養育費を免責の対象から外しているためです。

とはいえ、破産の手続きが進んでいる間は、差し押さえができない期間があります。
免責の決定が出た後に、改めて給与などを差し押さえて回収することになります。

Q.離婚後に共同親権を選択した場合、養育費の支払いはどうなりますか?

共同親権を選んでも、養育費の支払い義務は変わりません。
養育費は親であることから生じる義務で、親権の形とは関係がないためです。

共同親権の場合でも、多くは子どもが主に一方の親と暮らします。
子どもと離れて暮らす親が、一緒に暮らす親に養育費を支払うという関係は、単独親権の場合と同じです。
子どもが父母の家を一定の割合で行き来して暮らす場合は、それぞれが負担している生活費を考えて金額を調整することになります。

Q.養育費は一括で受け取ることはできますか?

父母が合意すれば、一括で受け取ることもできます。
ただし、将来の分をまとめて受け取り、預金や投資に回した部分には贈与税がかかる場合があるので注意が必要です。

また、後から養育費の増額を求めにくくなるリスクもあります。

まとめ

今回は養育費の支払い義務や相場、強制執行などについて解説しました。

養育費は、親権の有無にかかわらず、親が子どもに自分と同じ水準の生活を保障するために負う義務です。
2026年4月の改正で、取り決めがなくても月2万円を請求できる法定養育費と、公正証書がなくても差し押さえができる先取特権が加わり、未払いに対応できる手段は増えました。

とはいえ、手続きは状況によって複雑になってしまいがちなので、お困りの方は弁護士に相談することを検討してください。

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