離婚時の年金分割|手続きと必要書類

2026/07/28

離婚時の年金分割|手続きと必要書類

離婚時の年金分割は夫婦が婚姻中に納めた保険料を公平に分ける制度で、老後の生活資金を確保するための重要な手続きといえるでしょう。

今回は、年金分割制度の手続きの流れや必要書類について分かりやすく解説します。

離婚時の年金分割制度とは?

離婚時の年金分割において対象となるのは厚生年金です。

つまり、婚姻していた期間中に夫婦が共同で納めたとみなされる厚生年金保険料の記録を分割するということになります。

婚姻期間中に配偶者の扶養に入っていた専業主婦であっても実質的に配偶者の働きを支えていたと評価されます。

年金そのものの金額を直接半分にするわけではなく、将来の年金受給額を計算するための基礎となる保険料納付記録を分割することになりますので、将来受け取る年金額が再計算されることになります。

分割の対象になる年金とならない年金

年金分割の対象になるものは原則として婚姻期間中の厚生年金の記録のみです。

一方で対象にならない年金も存在するため注意が必要です。

対象にならない年金は以下の通りです。

  • 国民年金
  • 企業年金
  • 確定拠出年金

国民年金は全国民に共通する基礎年金であり個人の権利として独立しているため分割の対象になりません。

国民年金基金についても第1号被保険者が独自に上乗せして加入する制度であるため対象外となります。

企業年金や確定拠出年金は会社が独自に設けている福利厚生の一環であり公的な年金制度とは扱いが異なります。

これらを離婚時に分割したい場合は年金分割の制度ではなく財産分与という別の枠組みで話し合う必要があります。

年金分割はあくまで公的な厚生年金の記録を調整するものであるという認識を持つことが大切です。

年金分割はいつから受け取れる?

年金分割の手続きを行ったとしてもすぐに現金を受け取れるわけではありません。

分割された記録に基づく年金を受け取るためには自分自身が年金の受給資格を満たしている必要があります。

公的年金を受け取るための原則的な年齢は65歳と定められています。

また老齢年金を受け取るためには保険料を納めた期間と免除された期間などを合わせて10年以上必要です。

これを受給資格期間と呼びます。

この受給資格期間を満たして初めて65歳から年金を受給することができます。

あなたはどっち?年金分割の2つの方法である合意分割と3号分割

年金分割の方法には、合意分割と3号分割があります。

それぞれ確認していきましょう。

合意分割:夫婦の話し合いで分割割合を決める方法

合意分割とは、夫婦の話し合いによって年金分割の割合を決定する方法をいいます。

分割の割合は話し合いによって自由に決めることができますが上限は50パーセントと定められています。

下限については分割を受ける側の分割前の持分相当割合となります。

少し難しいので、以下を確認してみてください。

【例】夫の標準報酬総額が9000万円、妻の標準報酬総額が3000万円である場合

上記の場合、年金分割割合の下限は、夫婦の合計額である1億2000万円で割った25パーセントとなります。

したがって、この夫婦は25パーセントから50パーセントの間で割合を決めることになります。

なお、話し合いで合意が得られないときには家庭裁判所に離婚調停を申し立てて割合を決定します。

2026年4月1日の法改正により合意分割制度の請求期限がこれまでの2年以内から5年以内に延長されました。

これにより離婚後すぐに手続きができなかった人でも余裕を持って請求できるようになりました。

3号分割:専業主婦などが相手の合意なしで請求できる方法

離婚時に、相手の合意を得ることなく年金を請求できる方法を3号分割といいます。

3号分割の対象者は専業主婦などの第3号被保険者であった人です。

年金分割の対象となる期間は2008年4月1日以降の第3号被保険者であった厚生年金記録です。

この期間については相手の合意がなくても自動的に2分の1の割合で分割されます。

2008年4月以降の期間に専業主婦であった場合は自分一人で年金事務所に行き手続きを完了させることが可能です。

ただし2008年3月以前の期間については合意分割の手続きが必要となります。

婚姻期間が2008年をまたいでいる場合は合意分割と3号分割の両方を同時に請求することになります。

なお、同時に請求した場合は合意分割の割合が優先して適用されます。

自分に合う分割方法を簡単チェックできるフローチャート

自分がどちらの分割方法に該当するかを判断するための基準を紹介します。

確認すべき条件は以下の通りです。

  • 婚姻期間がいつからいつまでか
  • 婚姻期間中に専業主婦であった期間があるか
  • 専業主婦であった期間は2008年4月以降のみか

年金分割は、ご自身の年金加入履歴を内容によって、請求する方法が異なる可能性があります。

したがって、年金事務所で提供される情報を元にどちらの制度が適用されるかを正確に判断することが重要です。

シミュレーション:年金分割でいくらもらえる?金額の計算方法

離婚時に年金分割をしたからといって、年金をもらえる条件に達していなければ、もらうことはできません。

しかし、将来的に受け取れる年金額が多くなる可能性があります。

早速確認していきましょう。

年金分割の計算の基本である標準報酬とは

年金分割の計算において最も重要な概念が標準報酬です。

標準報酬とは厚生年金の保険料を計算するための基準となる金額のことです。

毎月の給与を基準にした標準報酬月額とボーナスを基準にした標準賞与額から構成されます。

年金分割では婚姻期間中の夫婦それぞれの標準報酬の記録を合算します。

その合算した記録を指定された割合に基づいて再配分します。

配分された標準報酬の記録を基に将来受け取る老齢厚生年金の額が複雑な数式によって再計算されます。

したがって、納めた保険料の履歴に基づいて国が再計算を行うため個人の計算で正確に算出するのは難しいといえるかもしれません。

ケース別における年金分割の受給額シミュレーション

年金分割の具体的な事例を用いて受給額のシミュレーションをしてみましょう。

夫が会社員であり妻が専業主婦であるケース

夫の厚生年金期間:40年

婚姻期間:30年

妻:全期間第3号被保険者

標準報酬月額:41万円

夫が40年間にわたり会社員として働き、妻が全期間を通じて専業主婦であった事例を想定します。

婚姻期間を30年とし分割の割合を夫婦で合意のうえで半分に決定したとします。

この場合、15年分の年金記録が、妻の国民年金の基礎年金額に上乗せされます。

夫の年金額は分割により譲り渡した分だけ厚生年金が減少します。

ただし、夫自身の基礎年金や婚姻期間外に形成した厚生年金の記録には影響が及びません。

夫婦ともに会社員である共働きの場合のケース

夫婦が共に40年間にわたり会社員として働き婚姻期間も40年であった事例を考えます。

夫と妻それぞれの平均的な標準報酬の月額を設定します。

共働きの場合でも収入に差があることが一般的です。

年金分割の割合を当事者間で平等に分けることで合意したと仮定します。

夫婦の標準報酬の記録を完全に合算しそれを半分ずつに再配分します。

結果として、夫と妻の厚生年金記録は同額となります。

お互いに自分自身の基礎年金を受け取りつつ同額の厚生年金を受け取る形になります。

婚姻期間中に夫婦が共同で経済基盤を築いたという考え方が直接的に反映された計算結果と言えます。

収入が少なかった側の厚生年金額が底上げされ収入が多かった側の年金額は調整されます。

自分の見込額を知るためにねんきんネットや情報通知書を活用しよう

年金分割を行う際には、金額を正確に把握するためには国が提供するサービスを利用することが重要です。

日本年金機構が運営するインターネットサービスを利用することで将来の年金見込額を試算することができます。

パソコンやスマートフォンからいつでも自分の年金記録を確認することができます。

もしくは、年金事務所に出向いて情報提供の請求を行うことも有用な手段といえるでしょう。

情報提供の請求を行うことで年金分割の対象となる期間や夫婦それぞれの記録を正確に把握できます。

また、年金事務所に請求を行った場合、合意分割を行うための上限や下限の割合も明確に提示されます。

これらの情報を基に話し合いを進めることで現実的かつ公平な合意を目指すことができます。

離婚時の年金分割の手続きの流れ

離婚時の年金分割の流れについて確認していきましょう。

年金事務所で年金分割のための情報通知書を取得する

年金分割の手続きを進めるための行動は情報通知書の取得から始まります。

この通知書には分割の対象となる期間や標準報酬の総額などが記載されています。

情報通知書は、単独で請求することが可能です。

年金事務所の窓口に専用の請求書を提出することで発行されます。

この情報がないと話し合いの前提となる数値が分からないため必ず取得してください。

なお、請求から発行までには数週間程度の時間を要することがあるため、早めに行動することが大切です。

分割割合について夫婦で話し合う

情報通知書を取得した後はそのデータをもとに夫婦間で話し合いを行います。

合意分割の場合は上限と下限の範囲内で割合を決定しなければなりません。

多くの場合、50パーセントずつに分割することで合意が成立します。

話し合いで合意に至った場合はその内容を明確な文書に残す必要があります。

口約束だけでは年金事務所での手続きを進めることができませんので注意してください。

離婚協議書は書面にし、公正証書として作成するか、公証人の認証を受けた私署証書を準備することが望ましいです。

話し合いが困難な場合は家庭裁判所を利用して割合を決定することになります。

なお、家庭裁判所での手続きには数か月の期間を要することがあります。

年金事務所で標準報酬改定請求を行う

年金分割の割合が決定したら、年金事務所に対して標準報酬の改定を請求します。

所定の請求書に必要事項を記入し合意内容を証明する書類を添えて提出します。

夫婦の双方が共同で提出することも可能ですが、公正証書などがあれば一人で提出することもできます。

2026年4月の改正民法により、それ以後に離婚した合意分割制度の請求期限は離婚後5年以内となりました。

それより前に離婚した夫婦の請求期限は、2年となります。

この期限を過ぎてしまうと法的に請求する権利が消滅してしまうため注意が必要です。

標準報酬改定通知書を受け取り完了となる

年金事務所で、改定請求が受理されると日本年金機構において記録の書き換え作業が行われます。

作業が完了すると夫婦の双方に対して改定後の記録が記載された通知書が郵送されます。

この通知書をもって年金分割のすべての手続きが完了したことになります。

通知書には分割後の標準報酬の額が記載されているため必ず内容を確認して大切に保管してください。

将来年金を受け取る際にこの記録が基になって金額が計算されます。

書類の不備があった場合は再提出が求められることもあるため、届いた書類は速やかに確認することが大切です。

年金分割の手続きに必要な書類一覧

年金分割の手続きに必要な書類を紹介します。

情報通知書を請求する際の共通の必要書類

情報通知書を請求するにあたって用意しなければならない共通の書類を説明します。

以下の書類を提出窓口に持参する必要があります。

  • 年金分割のための情報提供請求書
  • 基礎年金番号通知書または国民年金手帳
  • 婚姻期間を証明するための戸籍謄本
  • 本人確認ができる身分証明書

戸籍謄本は請求日から遡って一定期間内に発行された最新のものを用意してください。

身分証明書は運転免許証やマイナンバーカードなどが有効です。

公的な証明書を適切に用意することでスムーズな発行が可能となります。

年金分割を請求する際の共通の必要書類

実際に年金分割の改定を請求する際に共通して必要となる書類を解説します。

以下の書類を漏れなく準備することが求められます。

  • 標準報酬改定請求書
  • 基礎年金番号通知書または国民年金手帳
  • 離婚した事実と婚姻期間を証明する戸籍謄本
  • 本人確認ができる身分証明書

離婚した事実を証明するためには離婚日が記載された戸籍謄本が必須となります。

これらの書類に加えて合意分割の場合、追加書類が必要になります。

書類が揃っていないと受理されないため事前の確認を怠らないようにしましょう。

合意分割の場合に追加で必要な書類

合意分割の手続きを行う場合には分割割合の合意を証明する法的文書を追加で提出しなければなりません。

以下のいずれかの書類を用意してください。

  • 夫婦の合意内容が記載された公正証書の謄本
  • 公証人の認証を受けた合意書である私署証書
  • 割合を定めた家庭裁判所の調停調書の謄本
  • 割合を定めた家庭裁判所の審判書の謄本

これらの書類を提出することで相手の同行なしに一人で手続きを完了させることができます。

書類の作成には費用や時間がかかる場合があるため計画的に準備を進めることが大切です。

公証役場や家庭裁判所の手続きを含めて総合的なスケジュールを立てることが求められます。

離婚時の年金分割に関するよくある質問

離婚時の年金分割に関する質問をまとめましたので確認してみてください。

相手が年金分割に合意してくれない場合はどうすればいいですか?

相手が話し合いに応じない場合や割合に同意しない場合は家庭裁判所を利用することができます。

家庭裁判所に対して年金分割の割合を定めるための調停を申し立てます。

調停では調停委員が間に入って双方の意見を調整し合意を目指します。

調停でも解決しない場合は自動的に審判という手続きに移行します。

審判では裁判官がさまざまな事情を考慮して法的に分割の割合を決定します。

実務上は審判になると50パーセントの割合で分割されるケースがほとんどです。

相手の合意が得られなくても法的な手段を通じて権利を主張することが可能です。

離婚後に相手が死亡した場合はどうなりますか?

年金分割の手続きが完了した後に相手が死亡したとしても自分の年金記録には影響しません。

分割によってすでに自分の記録として組み込まれているためその記録は守られます。

自分が将来受け取る老齢厚生年金の額が減ることはありません。

ただし、年金分割の手続きを行う前に相手が死亡してしまった場合は取り扱いが異なります。

相手の死亡日から一定期間内に手続きを行わないと分割を請求する権利を失うことがあります。

このような事態を避けるためにも離婚後は速やかに手続きを完了させることが推奨されます。

財産分与と年金分割は別ですか?

財産分与と年金分割は法的に別の制度として扱われます。

年金分割は国が管理する公的な厚生年金の保険料納付記録を調整するための制度です。

一方で財産分与は婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を分ける手続きです。

個人型確定拠出年金であるiDeCoや民間の保険会社で契約している個人年金は公的な制度ではありません。

したがってこれらは年金分割の対象にはならず財産分与の中で話し合って清算することになります。

公的な記録の分割と私的な財産の分割を分けて整理して考える必要があります。

離婚前に別居していた期間は分割の対象になりますか?

離婚前に別居していた期間であっても、法的に婚姻関係が継続している限り分割の対象期間に含まれます。

年金分割の対象となるのは婚姻した日から離婚が成立した日までの全期間です。

別居によって生活の実態が離れていたとしても戸籍上の婚姻期間が基準となります。

そのため別居期間が長かった場合でもその期間中に納められた厚生年金の記録は分割されます。

婚姻期間中の夫婦の経済的なつながりを戸籍に基づいて客観的に評価する制度設計となっています。

年金分割をしないという合意は有効ですか?

夫婦の話し合いで年金分割をしないという合意をすること自体は可能です。

ただし、合意分割において分割割合をゼロにするという手続きを年金事務所で行うことはできません。

年金分割を請求しないという約束を夫婦間で交わすことは契約として一定の効力を持ちます。

なお、3号分割については相手の合意や承諾に関係なく一方的に請求できる法的な権利です。

そのため3号分割をしないという合意をしたとしても後から一方が年金事務所で請求すれば、実行されます。

制度の強制力が当事者間の個人的な約束よりも優先されます。

まとめ

今回は、年金分割について紹介しました。

離婚時の年金分割は夫婦が協力して納めた厚生年金の記録を公平に分けるための非常に重要な制度です。

合意分割や3号分割の違いを理解し期限内に手続きを完了させることが求められます。

必要な書類を漏れなく準備し国が提供するサービスを活用することをおすすめします。

とはいえ、状況によっては、夫婦間で取り決めが難しい場合もあるので、そのようなときには弁護士への依頼を検討しましょう。

まずは無料でWEB相談する

まずは、お気軽にお電話ください

【受付無料】24時間365日受付

050-5578-9800

自動音声サービスでご案内します

簡単ステップで気軽に相談