不動産売買契約書|登記・費用・流れを解説
2026/06/20

不動産の売買は、人生において重要な重要な取引の一つです。
円滑に売買取引を完了させるためには、不動産売買契約書の法的な効力や、手続きの全体像を正確に把握しておくことが欠かせません。
本記事では、契約書の必須項目や費用、手続きの流れについて解説します。
不動産売買契約書とは?
不動産売買契約書とは、売主と買主が不動産の取引条件に合意したことを証明する文書をいいます。
具体的な役割について確認していきましょう。
不動産売買契約書の役割と法的効力
不動産売買は口頭でも成立しますが、金額が大きく権利関係が複雑であるため、実務上は、書面による契約が必須といっても過言ではありません。
不動産売買契約書には、以下のような内容を記載します。
- 取引の目的物
- 代金の支払い時期
- 契約違反があった場合の違約金
双方が契約を確認し、署名・捺印を行うと、両当事者はその内容に法的に拘束されます。
つまり、契約書に書かれていることは原則としてその取引の絶対的なルールとなります。
契約書の種類
不動産売買契約書は、大きく分けて取引の対象物による違いと不動産業者の関与の仕方による違いで分けることができます。
契約書の種類を確認していきましょう。
1. 取引の対象物による種類
売買する不動産が何であるかによって、契約書の種類(ひな形)が変わります。 一般的な取引で用いられる代表的なものは以下の通りです。
- 土地売買契約書: 土地のみを売買する場合
- 土地建物売買契約書: 土地と建物をセットで売買する場合(一戸建てなど)
- 区分所有建物売買契約書: マンションなどの区分所有建物を売買する場合
- 借地権付建物売買契約書: 借地権(土地を借りる権利)付きの建物を売買する場合
さらに、面積の計算方法によって公簿売買と実測売買(実際の測量面積で取引)に細分化されます。
2. 不動産会社の関与の仕方による違い
不動産取引では、売主・買主の間に不動産会社がどのように関わるかによって、契約の性質や手数料の仕組みが大きく変わります。
取引態様は、大きく以下の3種類に分けられます。
- 仲介(媒介): 不動産会社が売主と買主の間に入り、契約を成立させるようサポートする取引
- 売主(直売): 不動産会社自身が所有する物件を、買主に直接販売する取引
- 代理: 不動産会社が売主の代理人として、売主に代わって契約行為を行う取引
【比較表】取引態様ごとの主体の違いと特徴
取引態様による主体の関係性や、仲介手数料の違いを以下の表にまとめましたので確認してみてください。
| 取引態様 | 概要 | 売主の立場 | 買主の立場 | 不動産会社の立ち位置 | 仲介手数料(買主側) |
| 仲介(媒介) | 売主と買主の間に立ち、取引の成立をサポートする形態。(中古物件で最も一般的) | 一般個人または法人 | 一般個人または法人 | 仲介者(契約当事者ではなく、両者の間を取り持つ第三者) | 必要(契約成立時に発生) |
| 売主(直売) | 不動産会社自身が所有、または開発・建築した物件を直接販売する形態。(新築マンションや建売住宅など) | 不動産会社(宅建業者) | 一般個人または法人 | 売主(契約当事者) | 不要(不動産会社が売主であるため) |
| 代理 | 売主から委託を受け、売主に代わって販売活動から契約までを行う形態。(新築マンションの販売などで見られる) | 一般個人または法人(不動産会社の場合もある) | 一般個人または法人 | 売主の代理人(売主の代わりに契約を締結する権限を持つ) | 原則不要(売主が代理手数料を支払うため) |
仲介の場合、不動産会社が所属する業界団体が作成した標準的な契約書のひな形が使用されるのが一般的です。
また、不動産会社を一切介さず、親族や知人間で直接取引を行う個人間売買の場合は、当事者自身で契約書を作成することになります。
個人間取引は、仲介手数料は発生しないメリットがある一方、契約書の不備によるトラブルや、住宅ローン審査のハードルが高くなるといったデメリットもあるので注意が必要です。
不動産売買の全体像|契約から引渡しまでの流れ
不動産売買の契約から引き渡しまでの流れを確認していきたいと思います。
STEP1:売却・購入の準備と不動産会社への相談
不動産売買を検討した場合、まず売却や購入の目的を整理し、資金計画を立てることから始まります。
購入を検討している場合には、自己資金はいくら用意できるか、住宅ローンはどの程度借りられるかなど、現実的な予算を設定します。
その後、信頼できる不動産会社に相談し、希望条件を伝えてパートナーを選定します。
STEP2:物件の査定と売買価格の決定
売却のおおまかな契約や、購入の資金計画に目途が立ったら、査定を依頼したり、実際に購入する不動産を確定させます。
売主の場合は、不動産会社に物件の査定を依頼し、売り出し価格を決定します。
査定のポイントは各社ことんあるので、一社のみではなく、複数の不動産会社に依頼して、比較した方が良いといえるでしょう。
買主の場合は、不動産会社の紹介やインターネットのポータルサイトを通じて物件を探し、内見を行います。
STEP3:売買条件の交渉と購入申込み
購入したい物件が決まったら、買主は売主に対して購入申込書(買付証明書)を提出します。
このときに、購入希望価格や引き渡しの時期や手付金の額などの条件を提示し、売主との間で交渉が行われます。
このとき、売主が不動産会社である場合には、買主がその不動産に対する重要事項の説明が行われます。
双方が条件に合意すれば、契約締結へと進みます。
STEP4:不動産売買契約の締結
売主と買主が合意した売買条件に基づき、不動産売買契約書を作成します。
当事者間で契約書の内容を確認し、認識の齟齬がなければ署名・捺印を行い、契約が成立します。
不動産売買契約が締結されたときに買主から売主に対して手付金が支払われます。
手付金とは、契約成立の証として支払われるものです。
また、契約違反があった場合の違約金としての性質も持ち合わせています。
STEP5:決済と所有権移転登記
契約締結後、通常は1か月から2か月後に決済(引き渡し)の日を迎えます。
買主は残代金を売主に支払い、売主は不動産を引き渡します。
これと同時に、司法書士の立ち会いのもと、法務局で所有権移転登記の手続きが行われます。
なお、買主が住宅ローンを利用して購入する場合には、銀行などの金融機関で決済手続きが行われます。
残代金の支払いと登記手続きが完了すれば、物件の引渡しが行われ、不動産売買の取引は完了となります。
引渡し後には、固定資産税の精算や、マンションの場合は管理費などの精算が行われます。
STEP6:確定申告
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、売主は翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
また、買主も住宅ローン控除などの特例を受けたいときには初年度のみ確定申告が必要です。
不動産売買契約書の書き方・内容
不動産売買契約書の書き方や内容について確認していきたいと思います。
売買物件と売買代金
不動産売買家役所に記載すべき内容として、売買する物件の情報と代金があります。
登記簿謄本の記載に従い、以下のような内容を指します。
■土地の場合:所在・地番・地目・地積
■建物の場合:所在・家屋番号・種類・構造・床面積
代金については、土地と建物の内訳や、消費税額を明記することが重要です。
代金の支払いと所有権移転・引渡し
不動産売買契約に必ず記載すべきこととして以下があります。
- 手付金の額
- 手付金の支払い時期
- 残代金の支払い時期
また、所有権がいつ売主から買主へ移転させるのか、引渡しの時期を明確に記載します。
境界の明示と面積(公簿売買・実測売買)
土地の売買において、隣地との境界を明確にすることは非常に重要です。
そのため、不動産売買契約書には売主が土地の境界などを明示する義務を定めておいた方がよいでしょう。
また、不動産売買の代金を決める場合、登記簿上の面積を用いる公簿売買と実際に測量した面積を用いる実測売買のいずれかが基準になります。
したがって、どちらの基準を使うのかを明記すべきといえます。
また、実測売買を選択した場合には、公簿売買との面積に差異が生じた場合の代金精算の方法についても規定してください。
手付解除と契約違反による解除(違約金)
不動産売買契約には手付解除や契約違反による解除の条項を盛り込む必要があります。
契約締結後相手方が履行に着手するまでのあいだに自己都合などにより契約解除する可能性がある場合には手付解除の条項を契約に入れる必要があります。
手付解除は、買主側の都合の場合手付金の放棄を明記することが一般的です。
売主都合のときには、手付金の倍額を買主に支払う条件で契約を解除できる旨を定めることが多いです。
また、当事者の一方が契約上の義務に違反し、契約解除になったときを想定し、違約金についても明確に定めるべきでしょう。
住宅ローン特約(融資利用特約)
不動産売買契約書を作成するときには、住宅ローン特約を定めておくべきです。
住宅ローン特約とは、買主がローンの審査に落ちてしまった場合に、買主がペナルティなしで契約を白紙解除できる条項をいいます。
この条項は、買主にとって非常に重要なので、売主が契約書を作成した場合には、規定されているかどうかをチェックしてください。
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
不動産売買契約に定めて置くべき条項として契約不適合責任があります。
契約不適合責任とは、引き渡された不動産が契約の内容と適合していないときに、売主が負う責任のことを指します。
一般的に規定される内容は、買主が購入した不動産の不適合を知った時から1年以内に売主へ通知することで、修補の請求や損害賠償請求、契約の解除を行うことができるというものが考えられます。
なお、売主が個人である場合には責任期間を引渡しから数ヶ月に限定したり、免責としたりする特約が設けられることもあります。
【特に注意】表明保証・土壌汚染・反社会的勢力排除条項
不動産売買契約を行うときに取り決めて置くべき条項として、表明保証や土壌汚染、反社会的勢力の排除条項が考えられます。
これらの取り決めは、近年不動産取引において重要視されている条項です。
表明保証とは、売主が物件に関する一定の事実が真実であることを買主に保証するものです。
土壌汚染については、発覚した場合の責任の所在や修復費用の負担を明確にしておきます。
また、反社会的勢力との取引を排除するための条項は、企業間だけでなく個人間の取引でも必須となっています。
不動産売買にかかる費用と税金一覧
不動産売買には、不動産を購入する費用のほかに様々な諸費用や税金が発生します。
売主・買主共通でかかる費用
売主、買主双方、共通してかかる費用は以下になります。
- 仲介手数料
- 印紙税
仲介手数料とは、不動産会社に支払う報酬です。
上限は売買価格の3%+6万円+消費税と法律で定められています。
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の代金です。
売買金額に応じて税額が決まります。
売主が負担する費用
不動産売買の売主は以下になります。
| 費用の種類 | 具体的な内容および法的な規定 |
| 抵当権抹消登記費用 | 住宅ローンの残債を一括返済し抵当権を抹消するための登録免許税と司法書士報酬 |
| 譲渡所得税および住民税 | 不動産の売却によって利益が出た場合に課税される税金所有期間が5年を超えるか否かで適用される税率が異なる |
| 測量費用 | 境界確定や実測売買を行う場合に土地家屋調査士に支払う専門家報酬 |
| 引越し費用および処分費 | 物件を明け渡すための実費や不用品処分費用 |
買主が負担する費用
不動産取引で、買主が負担するおもな費用をまとめましたので確認してください。
| 費用の種類 | 具体的な内容および法的な規定 |
| 所有権移転登記費用 | 自分名義に変更するための登録免許税と司法書士報酬 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得したことに対して都道府県から課税される税金取得後数か月して納付書が送付されます |
| 固定資産税等の精算金 | 引渡し日以降のその年の固定資産税や都市計画税を日割り計算で売主に支払う金銭 |
| 住宅ローン関連費用 | 事務手数料や保証料および火災保険料などローンを利用する場合に発生する費用 |
不動産売買における登記手続きのすべて
不動産売買を行う場合に必ず行うべきことが不動産登記です。
具体的な手続きについて確認していきましょう。
なぜ登記が必要なのか?第三者への対抗要件としての重要性
不動産の売買契約は、売主と買主のあいだで有効となる契約です。
当事者間以外の第三者に不動産の所有権を主張するには、登記を行わななければなりません。
売買契約が成立していたとしても、対抗要件として登記をしなければ、トラブルが起きた場合に、泣き寝入りしなければならないリスクがあります。
したがって、不動産売買が成立した場合には、迅速に所有権移転登記を完了させることが大切なのです。
所有権移転登記の流れと必要書類
不動産売買契約では、決済日当日に売主から買主へ所有権を移転する登記申請を法務局へ行います。
不動産売買契約書以外に主な必要書類は以下の通りです。
【売主】
- 権利証(または登記識別情報通知)
- 印鑑証明書(発行から3か月以内)
- 実印
【買主】
- 住民票
- 印鑑
登記にかかる費用|登録免許税・司法書士報酬
売買による不動産の所有権登記申請には、国に納める登録免許税と、手続きを代行する専門家に支払う司法書士報酬がかかります。
登録免許税は、固定資産税評価額に一定の税率を乗じて計算され、土地や建物の種類、特例の有無によって変動します。
司法書士報酬の相場は、数万円から十数万円程度ですが、取引の複雑さによって異なります。
これらの費用は、原則として所有権を取得する買主が負担します。
契約前に確認すべき注意点【チェックリスト】
不動産売買契約を行う前に確認すべき注意点を紹介したいと思います。
個人間売買のリスクと専門家活用の重要性
不動産売買契約を検討するときの注意点として、個人売買を避けることがあげられます。
仲介業者を入れずに個人間で直接売買を行うと法的なトラブルのリスクが高まります。
契約書の不備や重要事項の説明不足などが原因で、後々大きな損害を被る可能性があります。
したがって、安全な取引を望むのであれば、多少の費用がかかっても、不動産会社や弁護士、司法書士などに依頼すべきといえます。
契約内容で最低限確認すべきチェックリスト
不動産売買契約の最終確認として、以下の項目を必ずチェックしてください。
- 売買代金や支払い時期は合意した通りか
- 手付解除の期限や違約金の割合は妥当か
- 住宅ローン特約の期限や内容は適切に設定されているか
- 契約不適合責任の期間や範囲は明確か
- 境界の明示や測量の費用負担はどちらが行うか
- 引渡し日までに売主が行うべき義務(抵当権の抹消や残置物の撤去など)は明記されているか
少しでも疑問に思う点があれば、遠慮なく仲介業者や弁護士・司法書士に確認してください。
不動産売買契約に関するよくある質問(Q&A)
不動産売買契約に関するよくある質問をまとめましたので、確認してみてください。
Q. 契約書は誰が作成するのですか?
通常、仲介に入る不動産会社(宅地建物取引業者)が作成します。
個人間売買の場合は当事者が作成しますが、法的な確実性を高めるために、弁護士や司法書士に作成を依頼した方がよいでしょう。
Q. 不動産売買契約後にキャンセル(解除)はできますか?費用はかかりますか?
契約後であっても、手付解除の期間内であれば、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を支払うことで、理由を問わず契約を解除できます。
しかし、手付解除の期限を過ぎた後や、相手方が履行に着手した後に一方的な理由で解除する場合、違約金(売買代金の10%〜20%程度)を支払う必要があります。
また、住宅ローン特約による解除であれば、期限内であればペナルティなしで手付金が全額返還されます。
Q. 契約書を紛失した場合はどうすればよいですか?
契約書を紛失しても、契約自体の効力が失われるわけではありません。
しかし、将来トラブルが発生した際の証拠がなくなるため、相手方や仲介業者にお願いして、契約書のコピー(または写しに原本と相違ない旨の証明をしたもの)をもらうことが重要です。
登記が完了していれば権利は保全されていますが、税務申告などで契約書が必要になる場合があるため、再発行やコピーの確保に努めてください。
まとめ
今回は不動産売買契約について確認していきました。
不動産売買契約書は、取引の安全性を確保するために非常に重要です。
個人売買など独断を避け、信頼できる不動産会社や司法書士、弁護士などに相談してください。




