社労士に依頼できる業務内容は?選び方のポイントについても紹介
2026/05/13

社会保険労務士とは、労働保険(雇用保険・労災保険)や社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する法令に精通しており、企業の適切な労務管理や労働保険・社会保険に関する助言を行う専門家です。
企業の安定した経営には、人材・モノ・資金が必要とされていますが、その中の「人材」に関する専門家とされています。
正式名称である社会保険労務士を略して、社労士と呼ばれることが一般的です。
社労士の業務内容は大きく2つに分かれている
社労士の業務内容は、大きく次の2つに分かれています。
- 手続き代行業務である1号業務
- 帳簿作成業務である2号業務
これらの業務は、社労士にしか行うことができない独占業務とされています。
社労士の業務として、3号業務といわれる業務もありますが、社労士の独占業務ではありません。
3号業務とは、労務管理や社会保険に関する相談に応じ、指導する業務となり、労務コンサルティングの業務となります。
主に、人事制度や労務管理に関する助言をする業務のことです。
社労士の独占業務である1号業務と2号業務について、具体的にはどのような業務か、それぞれ確認していきましょう。
1号業務:手続き代行業務
1号業務とは、労働保険・社会保険の各種法令に基づいて、申請書類の作成や申請代行をする業務のことです。
また、申請書類の作成をするにあたり、手続きの相談に応じることも含まれます。
たとえば、従業員の入退社があった場合や従業員が出産・育児などで休業する場合など、各行政機関への書類の提出を代行して行います。
他にも、業務中に従業員が怪我をしてしまった場合など、労災申請を代行して行います。
そういった労働保険・社会保険に関わる書類の作成から申請の代行を行うのが、1号業務です。
労働保険・社会保険の書類作成や申請代行
社労士は、会社に代わって、労働保険・社会保険の手続きに必要な書類作成と申請の代行をすることができます。
会社が従業員を雇い入れた場合には、労働保険・社会保険への加入を行うことになります。
労働保険とは、雇用保険と労災保険の総称で、社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金保険の総称のことです。
それぞれの保険によって管轄の行政機関が異なり、必要な手続きや申請書類も異なります。
一か所に申請書類を提出すれば事足りるのではなく、保険ごとに定められた行政機関に決められた申請書を提出していくことになります。
また、従業員に関する労働保険や社会保険の手続きは数多くあるため、状況に合った適切な手続きをしなければなりません。
従業員を雇い入れた場合には、雇用保険と社会保険の資格取得の手続きが必要となりますが、雇用保険と社会保険では従業員の働き方などによってそれぞれ適用の条件が異なっています。
会社や従業員の状況に応じた必要な手続きについての相談や、申請書類の記載方法や適切な申請時期の相談などに応じる業務も1号業務の中に含まれます。
社労士は、会社や従業員などの状況に応じて、労働保険・社会保険に関わる手続きを会社に代わって行うことができます。
厚生労働省管轄の助成金申請のサポート
社労士は、助成金の申請代行を行うことができます。
助成金の申請をするためには、申請要件に適合するかの確認から、社内ルールである就業規則などの整備や各種書類の準備などをしなければなりません。
社労士に助成金の申請代行を依頼することで、適切なアドバイスを受けながら、申請をすすめることが期待できます。
また、申請書類について、労働局からの問い合わせなどにも対応してもらうことができます。
ただし、社労士が取り扱える助成金は、厚生労働省が管轄している助成金となります。
厚生労働省以外の省庁が管轄している助成金や補助金については、社労士が代行して申請することはできません。
社労士が取り扱う雇用関係の助成金については、主に企業の雇用増加や人材育成への支援や、雇用の安定や労働環境の改善を図ることが目的とされています。
社労士が取り扱うことのできない補助金とは、主に新規事業や創業促進などが目的とされ、国や地方公共団体が政策目的に沿った事業を行う企業などに対して、資金面を補助するために給付されるものになります。
2号業務:帳簿作成業務
2号業務とは、会社が保管する義務のある帳簿を作成する業務のことです。
帳簿とは、主に以下の4つを指します。
- 労働者名簿
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 年次有給休暇取得管理簿
これらの帳簿については、法律上、会社が作成をして保管することが義務付けられており、法定帳簿とよばれています。
法定帳簿はそれぞれ記載事項や保存期間が定められていて、労働基準監督署などの調査の際に提出を求められる可能性がある、重要な書類です。
また、4つの法定帳簿以外に、会社内のルールである就業規則や36協定といった各種労使協定の作成業務についても、2号業務の中に含まれます。
労働者に関する帳簿の作成
社労士が作成できる4つの帳簿について、それぞれどのようなものか確認していきましょう。
■労働者名簿
労働者名簿とは、従業員の情報について記録された書類のことです。
従業員の氏名、生年月日、住所、入退社や異動の履歴などの記載が義務付けられています。
退職した従業員についても一定期間、保存が義務付けられている書類になります。
■出勤簿
出勤簿とは、各従業員の出勤状況に関する記録がされた書類のことです。
出勤日、出勤日における始業終業時刻、休憩時間、残業時間などが記録されています。
■賃金台帳
賃金台帳とは、従業員の給与に関する情報が記載された書類のことです。
支給と控除の内訳、労働日数、労働時間数など、従業員に支給した給与についての計算の根拠が記載されています。
■年次有給休暇取得管理簿
年次有給休暇取得管理簿とは、従業員の年次有給休暇について、従業員ごとに付与や取得の記録がされた書類のことです。
就業規則に関する業務
就業規則は、労働時間や賃金などの会社の労働条件が定められたもので、常時10名以上の従業員を雇用する場合には、会社で作成することが義務付けられています。
従業員の数が常時10名に達しない場合にも、法律上、義務ではありませんが定めることができます。
従業員が安心して働ける環境づくりには、会社としての明確なルールが必要です。
賃金の計算方法や休暇に関する決まり事など、一律のルールが定まることで、従業員同士で不公平感なく働きつづけられることにつながります。
会社に就業規則がすでにある場合でも、現在の法律や会社の状況に合っているかなど、社労士に見直しを依頼することも可能です。
労使協定に関する業務
労使協定とは、会社と従業員とで締結する、労働条件に関する協定のことです。
代表的な労使協定として、36協定が挙げられます。
36協定とは、正式名称を時間外・休日労働に関する協定といい、従業員に法律で定められている時間を超えて働いてもらう場合に、締結しておく必要のあるものです。
法律で定められている時間とは、原則として1日8時間、週40時間とされています。
協定の中では、従業員に対して、残業させる限度の時間や残業が必要な理由などを定めることになります。
36協定を締結せずに従業員に残業をさせることは違法とされているため、法律で定められている時間を超えて働いてもらう場合には、必ず締結が必要です。
また、36協定については1年に一回、会社で定めた起算日までの届け出が必要となりますので、社労士に依頼することで、期限に遅れることなく、手続きをすすめてもらえる可能性が高まります。
36協定以外にも、育児介護休業法に基づく労使協定や、変形労働時間制を採用する際の労使協定など、会社の状況に応じた協定を締結しておく必要があります。
2号業務の中には、様々な労使協定について、会社に代わって作成を代行することが含まれます。
社労士と顧問契約するべき理由は?
社労士と顧問契約をすることで、会社にとって正しい労務管理を行える可能性が高まります。
従業員に関わる労働保険・社会保険の手続きを代行して行ってもらえることで、労務に関わる業務に割く時間を削減できるのは、会社にとって大きなメリットになります。
また、社内ルールである就業規則の整備をしてもらえることで、従業員にとって安心して働ける環境が整えられ、雇用の安定につなげることが期待できます。
理由①保険関連の書類の提出遅れやミスを防止できる
労働保険・社会保険の手続きは数多くあり、手続きによって様式や提出先が決まっているため、自身で行おうとすると調べるのに時間や手間がかかってしまう可能性があります。
たとえば、新しく会社に入社して、早く健康保険の手続きをしてほしいのに、会社がなかなか手続きをしてくれないなどといったことは、会社への不信感が高まる要因になるかもしれません。
従業員にとって必要な手続きは、行政機関が必要なタイミングで教えてくれるものではないので、本当は手続きが必要な場面であったのに、会社側で手続きの内容を把握しておらず、必要な手続きをすることができなかったということになりかねません。
社労士と顧問契約しておくことで、必要なタイミングで適切なアドバイスを受けることができるため、期限に遅れることなく円滑な手続きを行ってもらうことが期待できます。
特に助成金については、申請の期限を過ぎると申請を受け付けてもらえないこともありますので、そういった事態を防ぐためにも、社労士へ依頼しておくのもいいかもしれません。
理由②法改正などに対応することができる
社会保険制度や育児・介護休業法など労働に関わる法律については、社会情勢に合わせて法改正が多く行われます。
法改正に合わせて、会社としてやらなければならい手続きが発生したり、社内ルールである就業規則の見直し、社内様式の変更などを行う必要性がでてきます。
ただし、法改正の情報収集から対応までを会社内で行うには、多くの労力を割く必要があり、容易ではありません。
会社が把握していない内に法律の改正があって、必要な手続きや社内ルールの整備ができていないことで、従業員とのトラブルに発展したり、行政機関からの指摘を受けることにつながる可能性があります。
社労士と顧問契約を締結していれば、最新の法改正についての情報提供を受けることができます。
そして、法改正に即して会社にとって必要な手続きや社内ルールの整備などを支援してもらうことが期待できます。
理由③労務関連のトラブルのリスクヘッジができる
不適切で煩雑な労務管理は、従業員とのトラブルになりかねません。
労働条件について、会社と従業員との間に認識の違いがあることで、早期に退職してしまうことにつながったり、賃金の計算方法について明確な基準がないままにしておくことで、後に未払い賃金を請求されるなど、様々なトラブルが起こることが考えられます。
また、ハラスメントなどの従業員同士、または従業員と取引先とのトラブルなども起こる可能性があります。
社労士と顧問契約することで、トラブルにつながりそうな労務管理について、アドバイスを受けながら、トラブルを予防するための社内ルールの整備など、適切な労務管理へと改善をしていくことが期待できるでしょう。
社労士を選ぶときの6つのポイント
顧問社労士を検討する場合、どのようなことに注意して選べばいいのでしょうか。
自社に合った社労士を選ぶために役に立つポイントを、確認していきたいと思います。
ポイント①業務範囲を確認する
社労士へ委託することができる業務の範囲を確認することが大切です。
就業規則の作成や改定などは、顧問契約をしていても、別途料金がかかることが一般的なので、顧問契約の業務範囲についての確認と、業務範囲外で料金が発生する業務についても、事前に確認しておいた方がいいかもしれません。
また、助成金の申請を検討している場合には、助成金の対応ができない社労士もいるため、契約の締結をする前に、確認しておく必要があります。
助成金についても、顧問料金とは別に費用が発生することがほとんどで、成功報酬の15%~30%など、料金が定められていることが多いようです。
社労士の独占業務ではありませんが、給与計算については、社会保険料や雇用保険料の控除が関わるため、社労士は得意業務とされています。
労務相談や労働保険・社会保険の手続きだけではなく、給与計算についても依頼したい場合には、勤怠の集計、給与明細の配布方法など、会社が委託したい内容について、対応可能なのかも確認しておきましょう。
ポイント②電子申請について知見があるか
労働保険・社会保険の手続きについては、電子にて申請できるものがほとんどです。
電子申請をすることで、申請書類を手書きする時間や行政機関の窓口へ行く時間などが削減できるため、スムーズに申請を完了させることができます。
そのため電子申請について知見のある社労士に顧問を依頼することで、手続きを円滑に行ってもらえる可能性が高まります。
また、社労士への業務の依頼について労務相談のみとして、会社内で労働保険・社会保険の手続きを行う場合にも、電子申請に知見のある社労士に顧問を依頼しておくと、社内で行う電子申請について教えてもらうことができます。
社内で電子申請ができる体制づくりをすすめることで、手続きを効率よく円滑にすすめられることにつながるかもしれません。
ポイント③対応が対面・オンラインなのかどうか
会社の所在地がある地域などにこだわらない場合には、オンライン対応の社労士を検討することで、選択の余地が広がる可能性があります。
オンラインに対応している社労士は、業務の効率化に力を入れていることが多く、情報のやり取りなどをスムーズにすすめたいと考えている場合には、有効な選択となる可能性があります。
直接会って詳細な相談をしたいと考えている場合には、対面で対応してくれる社労士を選択するのがいいでしょう。
対面による対応が可能な社労士の場合、契約内容によっては、月に1回などの訪問をすると定めているケースもあります。
会社の方針に合った社労士を選ぶ際のポイントとして、対応方法について確認しておくといいかもしれません。
ポイント④料金体系が会社に合っているかどうか
社労士によって、料金体系が異なっているため、どのような料金体系なのかを事前に確認していくことは重要です。
主に、従業員の人数と業務範囲によって、料金が段階的に分かれていることが多くみられます。
業務範囲については、「労務相談のみ」「労務相談、労働保険・社会保険の手続き」「労務相談、労働保険・社会保険の手続き、給与計算」の3段階によって分けられることが多いようです。
また、毎月の従業員数によって料金が変動する場合や、年に一回か二回、従業員数に応じて顧問料金の見直しをしている場合など、社労士によって料金の設定方法は異なるため、事前に確認しておくといいかもしれません。
顧問契約を締結すると、料金が毎月かかることになりますので、顧問料金が会社の方針と合っているかの確認は重要なポイントです。
ポイント⑤相性が合っているかどうか
顧問契約を締結すると、一般的には長い付き合いになることが予想されます。
そのため、契約締結前に事前の面談を行うことで、スムーズなコミュニケーションができるかなどの確認をしておくのがいいでしょう。
複数の社労士と面談をして、会社と相性の合う社労士を見定めるのもいいかもしれません。
また、社労士の中には、特定の業種や特定の業務を得意とする社労士がいます。
特に建設業や医療・福祉業などについては、労働保険・社会保険の手続きや給与計算などが特殊なケースがあります。
特定の業種を得意とする社労士に依頼することで、手続きや給与計算などをスムーズにすすめてもらえる可能性が高まります。
助成金の申請を検討している場合には、助成金の申請を得意としている社労士に依頼をすることが有効です。
顧問契約を検討している社労士がどういった経歴を持っていて、どういった業務を得意としているのか、また、できない業務はあるかなど、事前に確認して会社との相性を確認するのも大切です。
ポイント⑥レスポンスが早いかどうか
労務管理や労働保険・社会保険に関する困りごとがあった場合に、できるだけ早く回答がほしい状況もあるかもしれません。
何日も返答が来ないと、適切な労務管理や従業員との信頼関係に影響がでることもあり得ます。
そのため、レスポンスが早いかどうか、それが会社にとっての求める速さかどうかなど、見極めることは、大切なポイントです。
また、コミュニケーションツールについても、会社に合っているか確認しておくと、やり取りがスムーズにすすむ可能性があります。
まとめ
社労士に依頼できる業務内容と、顧問社労士の選び方のポイントについて、紹介していきました。
労働保険・社会保険については、法改正が多く、従業員や会社の状況に応じた手続きの種類も多くあるため、不安に思うことがあるかもしれません。
適切な労務管理を行うことは、従業員の安心につながり、雇用の安定にもつながります。
労務管理について不安に感じている場合には、継続的な会社の存続と発展のためにも、専門的な知識をもつ社労士へ業務の委託をすることを検討してみてください。




