【自己破産】破産財団になる財産・ならない財産の基準と処分ルール

2026/05/27

【自己破産】破産財団になる財産・ならない財産の基準と処分ルール

自己破産は債務者の一定の範囲内の債務を免責する手続きであるとともに、債権者への公平な清算が目的でもあります。

本記事では、破産財団になる財産とならない財産の基準や処分に関するルールについて解説します。

自己破産における破産財団とは?

自己破産の手続きが開始されると、債務者が所有している価値のある財産は、裁判所が選任した破産管財人という者に管理され、各債権者へ公平に返済されることになります。

この手続きの中心的な役割を担うのが、破産財団という概念です。

破産財団とは?:債権者への公平な配当

自己破産手続の根本的な目的は、債務者の残された財産を可能な限り公平に債権者へ分配することにあります。

この目的を達成するために、法的にひとまとめにされた財産の集合体を破産財団と呼びます。

債務者が支払不能に陥った場合、一部の債権者だけが抜け駆けして財産を差し押さえたり、債務者が特定の知人にだけ借金を返したりすると、他の債権者が大きな不利益を被ることになります。

破産財団は、こうした不公平を防ぎ、債権者全員が等しく債権額の割合に応じて配当を受け取る権利を行使できるようにするために破産管財人が手続きが完了するまで管理することになります。

破産財団は誰が管理する?破産管財人の役割

破産財団を管理および処分する権限は、原則として破産管財人に専属します。

破産管財人は裁判所によって選任される実務家であり、多くの場合、地域の経験豊富な弁護士がその任に就きます。

破産手続開始の決定が下された瞬間、破産者は自身の財産に対する管理処分権を完全に失います。

つまり、勝手に財産を売却したり、特定の債権者に返済したりすることは法律上認められなくなります。

破産管財人は、破産者の財産を客観的かつ公正に評価し、可能な限り高く現金化する義務を負います。

この義務を善管注意義務と呼び、破産管財人は債権者の利益を最大化するために尽力しなければなりません。

また、破産管財人は破産者の郵便物を転送して内容を確認する権限や、破産者の居住地に立ち入って財産を調査する権限も持ち合わせています。

これらの強力な権限を行使し、調査することで、債務者の保有している財産を正確に把握します。

また、破産者は破産管財人の調査に対して真摯に協力し、必要な情報を提供する説明義務を負います。

この説明を拒否したり、虚偽の申告をしたりした場合は、免責が許可されない免責不許可事由に該当する恐れがありますので注意が必要です。

破産財団を構成する財産の範囲を決める固定主義

破産手続において、どの時点の財産を破産財団に含めるかを画定する法的な原則を固定主義と呼びます。

日本の現行の破産法では、破産手続開始の瞬間に保有していた財産のみを破産財団の対象とします。

これ以降に債務者が新たに取得した財産や、労働によって得た給与などは、原則として破産財団には含まれません。

破産事件において、固定主義が採用されている理由は、破産者の早期の経済的更生を促進するためです。

もし破産手続中も延々と新たな財産が財団に組み入れられる膨張主義をとった場合、破産者は労働意欲を失い、自立への意欲が削がれる可能性が高くなります。

このようなリスクを避けるために、手続開始決定という明確な時間的な区切りを設ける固定主義が採用されています。

ただし、開始決定時にすでに確定していた将来の請求権などについては、破産財団として扱われる点には注意が必要です。

【一覧】破産財団になる財産(換価・処分の対象)

破産財団に組み入れられる財産は、客観的な価値を持ち、換価が可能なものに限られます。

具体的にどのような財産が処分の対象となるのか、確認していきましょう。

土地・建物などの不動産

持ち家や土地、マンションといった不動産は、破産財団を構成する代表的な財産です。

自己破産を申し立てた時点で所有している不動産は、原則としてすべて破産管財人によって換価、すなわち現金化の対象となります。

住宅ローンが残っている場合でも、不動産の所有権は破産管財人の管理下へ移り、手放さなければなりません。

実務上、住宅ローンを組んでいる不動産には銀行や保証会社による抵当権が設定されていることが一般的です。

この場合、破産管財人は抵当権者と協議を行い、任意売却という方法で市場価格に近い金額での売却を試みます。

任意売却による代金は、まず抵当権者への返済に充てられ、残額があれば破産財団に組み入れられて他の債権者への配当原資となります。

もし任意売却が困難な場合には、裁判所を通じた競売の手続に回されることになります。

なお、不動産の価値が住宅ローンの残高を大きく下回るオーバーローンの状態であることが明らかな場合、破産管財人は不動産を破産財団から放棄することがあります。

放棄された不動産は破産者の管理に戻りますが、最終的には抵当権の実行によって失われることに変わりはありません。

99万円を超える現金

債務者の手元にある現金は、生活に必要な最低限の金額を除き、すべて破産財団に組み入れられるのが原則です。

具体的には、99万円を上回る部分が現金として回収の対象となります。

99万円という基準は、民事執行法において標準的な世帯の2か月分の必要生計費として定められた33万円を、さらに3倍した金額に由来しています。

破産事件では現金と預貯金は法的に別の財産として判断されます。

現金とは、紙幣や硬貨として実際に手元に存在しているものを指します。

銀行口座に入っているお金は預貯金債権という扱いになり、この99万円の枠には直接該当しません。

自己破産を申し立てる直前に口座から多額の現金を引き出し、手元に置くといった行為は、財産隠しと疑われかねない行為といえます。

最悪の場合、自己破産が認められなくなる理由にもなりえるのでこのような行動を起こすのは避けてください。

評価額が20万円を超える財産

現金や不動産以外の動産や有価証券などで、市場価値が20万円を超えると評価されるものは、原則としてすべて売却対象となります。

これは、東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所における少額管財手続の運用基準として定着しているルールです。

たとえば、貴金属、ブランドバッグ、高級時計、骨董品、ゴルフ会員権などがこれに該当します。

また、上場株式や投資信託、仮想通貨などの金融資産も、評価額が20万円を超える場合には換価の対象となります。

これらの財産の評価は、購入時の価格ではなく、破産手続開始決定時点での処分価格で判断されます。

複数の品物がある場合、それぞれが20万円以下であっても、同じ種類の財産を合計して20万円を超える場合は財団に組み入れられるケースもあります。

たとえば、10万円の価値がある株式を3銘柄持っている場合、合計で30万円となるため、すべて換価される可能性があるということです。

解約返戻金が20万円を超える生命保険

生命保険や学資保険、個人年金保険なども大きな資産価値を持つため破産財団の対象となりえます。

具体的には、保険を解約した際に戻ってくる解約返戻金が20万円を超える場合が考えられます。

破産管財人は、保険契約を強制的に解約し、保険会社から支払われる解約返戻金を回収して配当に回します。

掛け捨ての医療保険や自動車保険など解約返戻金が存在しない、あるいはごく少額である保険については、そのまま継続することが認められます。

とはいえ、破産者の健康上の理由から生命保険の再加入が困難であるケースもあると思います。

このような場合、親族などに支援を頼み、解約返戻金と同等の金額を破産財団に対して現金で支払うことで、解約を免れる方法が実務上認められています。

これを介入権の行使と呼びます。

また、保険会社が提供する契約者貸付制度を利用し、解約返戻金の額を20万円以下に減らしておくという方法も考えられます。

ただし、申立て直前の不自然な借り入れは否認の対象となる恐れがあるため、事前に弁護士に相談した方が良いといえるでしょう。

退職金の一部

破産者がまだ受け取っていない将来の退職金の見込み額について、一定の割合で破産財団に含めるという運用が全国的に定着しています。

退職金は給与の後払いという性質を持つため、すでに働いた期間に対応する部分は現在の資産として評価されるためです。

退職金が破産財団に組み入れられる割合は、退職の時期によって異なります。

すでに退職しており、退職金の支給が確定しているが未受領の場合、支給予定額の4分の1が破産財団に組み入れられます。

自己破産の手続中に退職する予定があるときには、支給予定額の4分の1が換価の対象となります。

当面退職する予定がない場合は、現在自己都合退職したと仮定した際の退職金見込額の8分の1が破産財団に組み入れられます。

つまり、現在退職すれば800万円の退職金が出る見込みであれば、その8分の1である100万円を破産財団に納める必要があります。

実際の退職を強要されるわけではなく、この100万円に相当する現金を分割などで支払うことで調整するのが一般的です。

将来の請求権

将来的に金銭を受け取る権利、将来の請求権は破産財団として組み込まれます。

将来の請求権が破産財団になる条件として、破産手続開始の時点でその権利を発生させる原因が存在していることが挙げられます。

原因があれば、具体的な損害額が未確定であったとしても破産財団に組み込む対象となります。

代表的な例として、賃貸アパートを退去した際に戻ってくる敷金返還請求権が考えられます。

ただし、敷金は居住の継続に必要なものであるため、破産管財人が直ちに賃貸借契約を解除して敷金を回収することは稀です。

実務上は、敷金返還請求権の評価額が20万円を超える場合には、その相当額を債務者が積み立てるなどの対応が行われます。

また、交通事故などによる損害賠償請求権や、未請求の保険金請求権なども財団の対象となります。

過払い金返還請求権についても、破産管財人が債務者に代わって貸金業者に請求し、回収した金銭を配当に回します。

これらの権利を隠匿したり、申告を漏らしたりすることは、免責不許可事由にあたるため注意してください。

【一覧】破産財団にならない財産(自由財産)手元に残せるもの

破産法は、債務者の経済的な再生を図るため、生活に直接関わる一定の財産を没収の対象から除外しています。

これらを自由財産と呼び、債務者が引き続き所有し、自由に処分することができます。

具体的に確認していきましょう。

新得財産:破産手続開始後に得た財産

破産財団を構成しない財産の代表格が新得財産です。

破産手続開始の決定が出た後の時点において、債務者が自らの労働や事業によって得た収入、あるいは新たに贈与や相続によって取得した財産を指します。

固定主義の原則に基づき、手続開始後に形成された財産は破産手続から完全に切り離されます。

これは債務者の新しい生活の基盤となるため、破産財団には含まれず、債務者が自由に利用できます。

たとえば、破産手続開始決定の翌日に支給された給料のうち、開始決定日以後の労働に対応する部分は新得財産となります。

また、手続開始後に親族から生活費として援助を受けた金銭や、宝くじの当選金なども、破産管財人に没収されることはありません。

本来的自由財産:法律で定められた生活に不可欠なもの

法律上、債務者の生存権を保障するために差し押さえが禁止されている財産があり、これらは破産手続においても自由財産として扱われます。

99万円以下の現金

99万円以下の現金は最低限の生活を維持するために確保されます。

これは、破産法34条3項1号において、標準的な世帯の必要生計費として明確に規定されています。

この現金は、食費や家賃、水道光熱費などの日々の支払いに充てるためのものであり、破産手続中であっても取り上げられることはありません。

ただし、預貯金は現金には含まれないため、申し立て前に現金を生活費として手元に残すための準備が必要となります。

給与・年金・生活必需品などの差押禁止財産

民事執行法やその他の特別法によって、差し押さえが禁じられている財産は、破産手続においても当然に保護されます。

給与については、手取り額の4分の3に相当する部分は差し押さえが禁止されています。

つまり、毎月の給与の大部分はそのまま生活費として受け取ることができます。

ただし、月額の給与が33万円を超える高所得者の場合は、33万円を超える部分は全額差し押さえの対象となるという例外規定が存在します。

また、国民年金や厚生年金、生活保護の受給金、児童手当なども、受給者の生活を支える公的な給付であるため、全額が差押禁止財産として保護されます。

生活に欠かせない家具、家財道具、衣服、調理器具、寝具なども差し押さえの対象外です。

テレビや冷蔵庫、洗濯機などの一般的な家電製品も、生活必需品として保持することが認められます。

一身専属権(扶養請求権など)

一身専属権とは、その人自身に固有の権利であり、他人への譲渡や相続ができない権利をいいます。

これらの権利は金銭的に評価して換価することができないため、破産財団には含まれません。

たとえば、養育費などの扶養請求権や、離婚に伴う慰謝料請求権などのうち、まだ具体的な金額が確定していないものなどが該当します。

また、名誉毀損による損害賠償請求権も、被害者の人格的利益に密接に結びついているため、一身専属権として扱われます。

これらの権利を行使するかどうかは破産者の自由な意思に委ねられており、破産管財人が代わって請求を行うことはできません。

手元に残せる財産を増やせる自由財産の拡張とは?

破産手続においては、法律で一律に定められた自由財産だけでは、債務者の個別の事情に対応しきれず、生活の再建が困難になる場合があります。

そのようなときの救済手段として自由財産の拡張があります。

具体的に確認していきましょう。

自由財産拡張が認められるための考慮事由

自由財産の拡張とは、裁判所に対して申し立てを行うことで、本来は破産財団に属するはずの財産の一部を手元に残せる制度をいいます。

破産法34条4項に規定されたこの制度は、裁判所の裁量によって運用されます。

自由財産の拡張が認められるための考慮事由として、以下の要素が総合的に評価されます。

考慮事由具体的な判断基準
破産者の年齢や健康状態高齢や重病などで今後の就労収入が期待できない場合は多くの財産を残す必要性が認められやすい
家族構成と扶養の状況小さな子供や介護が必要な親族がいる場合は当面の生活費や教育費の確保が重要視される
財産の性質と生活への影響当該財産を失うことが破産者の生活基盤をどれほど脅かすかが精緻に分析される
新得財産の有無手続開始後に十分な収入を得る見込みがある場合は拡張の必要性が低いと判断される傾向にある

【財産別】自由財産拡張の運用実務(99万円基準)

自由財産の拡張は、全国の裁判所によって多少の差異がありますが、多くの裁判所では手元に残せる財産の総額を99万円までとする基準を採用しています。

これを99万円基準と呼びます。

預貯金

預貯金は本来、金額に関わらず換価の対象となる破産財団ですが、生活費として必要と認められる範囲で拡張が認められるケースがあります。

残高が20万円以下であれば、少額管財の基準により換価されない運用をとる裁判所も多いです。

残高が20万円を超える場合でも、当面の家賃や生活費の引き落としに充てるための資金として、99万円の枠内であれば自由財産の拡張が認められる傾向にあります。

裁判所の承認を得るためには、当該口座が給与の振込口座であり生活費の決済に直結していることを説明することが大切です。

生命保険

保険契約を継続することの必要性が認められる場合、解約返戻金に相当する金額を積み立てることを条件に契約維持が認められることがあります。

しかし、資金の積立が困難な場合でも、解約返戻金が99万円の枠内に収まり、かつ持病などの理由で新たな保険に加入できない事情があれば、自由財産として拡張が認められ、そのまま継続できることがあります。

高齢の破産者にとって、万が一の際の葬儀費用などを確保するための保険は、生活の安定に直結するため、拡張の妥当性が認められやすいといえるでしょう。

自動車

自動車は生活環境において移動手段として極めて重要であるため、中古車市場での評価額が低い場合など、手元に残すことが認められる傾向にあります。

評価額が20万円以下であれば換価対象外となることが多いですが、20万円を超えていても、通勤や通院に車が欠かせない地域に居住している場合などは、99万円の枠内で拡張が認められます。

公共交通機関が乏しい地方都市においては、自動車を失うことが就労の機会を奪うことに直結するため、裁判所も柔軟な判断をくだす傾向にあります。

車検証や査定書に加え、通勤経路の不便さを客観的に示す資料を準備することが効果的です。

退職金

退職金の支給まで期間が短い場合や、支給予定額が高額でない場合は、自由財産として認められる範囲が広がる可能性があります。

特に定年が間近に迫っている場合、退職金は老後の主要な生活資金となるため、破産財団に組み入れる割合を減らし、自由財産として保護する判断がなされることがあります。

見込額の8分の1が20万円を超える場合でも、他の財産との合計が99万円以下であれば、退職金を清算せずに済むよう拡張を求めることが有力な解決策となります。

自由財産拡張の手続きの流れ

自由財産拡張の手続きは、破産手続開始の決定があった日から1か月以内に申し立てる必要があります。

まず、破産申し立ての準備段階で、手元に残したい財産を特定し、その必要性を立証する資料を収集します。

次に、裁判所への申し立てを経て、選任された破産管財人との面談において、拡張の妥当性について調整を行います。

破産管財人は、申し立て内容を精査し、債権者の不利益とならないかを確認した上で、裁判所に意見を具申します。

最終的に、裁判所が破産管財人の意見を参考にして拡張の決定を行います。

とはいえ、自由財産の拡張は容易に認められるものではないので、利用したい場合には、事前に弁護士へ相談することが大切です。

注意!過去の財産処分が問題になる否認権

自己破産の申し立てを行う際、過去の財産処分によって、否認権を行使される恐れがあります。

否認権について確認していきましょう。

否認権とは?債権者の平等を守るための制度

否認権とは、債務者が破産手続の直前に、特定の財産を隠したり、一部の債権者にだけ返済したりする行為を未然に防ぐための制度です。

破産者が過去に行った財産処分した場合、破産管財人は否認権を行使し、その処分を無効にしたり、取り消したりすることができます。

破産事件では、すべての債権者を平等に扱うことが原則です。

破産状態に陥っているにもかかわらず、自分の財産を勝手に減らしたり、特定の者だけを優遇したりする行為は、この平等原則を著しく害する背信行為とみなされます。

否認権の行使により、流出した財産を強制的に回収し、本来あるべき配当原資を回復させることが可能になります。

申し立ての数年前まで遡って通帳の履歴が調査されるため、安易な資産隠しは通用しないと認識したほうが良いでしょう。

否認の対象となる行為の具体例

否認権の対象となる行為は、主に詐害行為と偏頗行為の2つに分類されます。

それぞれ確認していきましょう。

詐害行為否認(財産の贈与・不当な価格での売却など)

破産事件印おける詐害行為とは、本来、債権者へ配当されるべき財産を、意図的に流出させたり、その価値を下げる行為を指します。

代表的な例として、自己破産を申し立てる直前に、自分名義の不動産を妻や子供に無償で贈与する行為や、知人に対して市場価格よりも不当に安い価格で車を売却する行為が挙げられます。

また、離婚に伴う財産分与であっても、それが社会通念上、不相当に過大であるとみなされた場合には、詐害行為として否認の対象となります。

破産管財人は、これらの取引の時期や相手方との関係性を調査し、債権者を害する意図があったと認めれば、取引を取り消して財産を取り戻す手続きに入ります。

偏頗行為否認(特定の債権者への優先的な返済など)

偏頗行為とは、すべての債権者が平等の扱いを受けるべきところ、特定の債権者にだけ優先的に返済したり、担保を提供したりする行為です。

たとえば、複数の消費者金融から借金をしている状態で、親族や友人からの借金だけを自己破産の前に全額返済してしまう行為がこれに該当します。

また、特定の債権者からの強い取り立てに屈して、その債権者にだけ自社の売掛金を譲渡するような行為も偏頗行為とみなされます。

破産管財人は、破産者が支払不能になった後にこのような返済が行われた場合、その支払いを無効とし、支払いを受けた債権者に対して現金を返還するよう請求することは可能です。

否認権が行使されたらどうなる?財産の取り戻しと価額償還

破産管財人によって否認権が行使されると、譲渡された財産は法律上、破産者のもとに復帰し、破産財団へと戻ります。

もし譲渡された不動産がすでに第三者の手に渡っていたり、金銭が費消されていたりする場合は、その財産の時価相当額を金銭で支払う価額償還が求められることになります。

財産を受け取った相手方(親族や友人など)に対して破産管財人が直接返還請求や訴訟を行うことになるため、結果として周囲の人々を深刻なトラブルに巻き込む事態となりえます。

また、悪質な財産隠しと判断されれば、免責不許可事由に該当し、最終的に借金が免除されないというリスクもあります。

したがって、自己破産を検討した場合には、財産移転などについては弁護士などの専門家に相談した方がよいといえるでしょう。

破産管財人による財産の管理・処分・配当の流れ

自己破産の手続きが管財事件として開始された場合、破産財団の処理は裁判所の定めた厳密な流れに沿って進行します。

財産の調査と評価(評定)

破産管財人に選任された弁護士は、まず破産者の財産状況を徹底的に調査します。

債務者の通帳の履歴、不動産登記簿、確定申告書、生命保険の証券などを精査し、申告に漏れがないかを確認します。

すべての財産を漏れなくリストアップした上で、それぞれの市場価値を客観的に査定する作業を評定と呼びます。

この評定作業を通じて、破産財団の規模が正確に確定されます。

破産者はこの期間中、破産管財人の事務所で面談を受け、不明点について詳細な説明を求められることになります。

財産の換価(現金化)と財産の放棄

調査によって確定した破産財団を構成する財産は、破産管財人によって換価(現金化)されていきます。

不動産は任意売却や競売にかけられ、生命保険は解約され、株式は市場で売却されます。

破産管財人は、できる限り高値で迅速に売却できるよう、専門業者の協力を得ながら手続きを進めます。

一方で、維持費や処分費用の方が売却益を上回るような不動産や、回収が極めて困難な債権などは、価値がないと判断されて破産財団から放棄されることがあります。

放棄された財産は破産者の管理に戻り、換価の対象から外れます。

すべての換価作業が終了すると、配当に回せる現金の総額が確定します。

債権者への配当と優先順位

現金化された財産は、債権者へ配当されますが、支払われる順位は法律によって厳格に定められています。

すべての債権者が同じ割合で受け取れるわけではなく、公益性の高い債権が優先されます。

財団債権:最も優先される支払い

破産手続自体を行うための費用や、社会的に優先されるべき債権を財団債権と呼びます。

これらは、他の債権者への配当に先立ち、破産財団の中から随時かつ最優先で支払われます。

代表的なものとして、破産管財人の報酬や裁判所への予納金、そして未納となっている税(租税債権)や、従業員の未払い給料の一部が含まれます。

もし換価した財産が少なく、これらの財団債権すら支払いきれない場合は、その時点で手続きは終了(異時廃止)となり、一般の債権者には配当されない結果となります。

破産債権:財団債権の次に支払われる

財団債権をすべて支払い終え、残額がある場合は、一般的な債権者へ配当が行われます。

配当は、債権者間での優先順位に応じて行われます。

具体的な優先順位は以下の表のとおりです。

債権の種類具体的な内容および支払い順序
優先的破産債権一般の給料債権の残額などが該当し、一般の破産債権よりも先に支払われます。
一般破産債権銀行のカードローンやクレジットカードの未払い金、取引先の買掛金などがこれに該当し、残額を債権額の割合に応じて按分して分配します。
劣後的破産債権破産手続開始後の利息や遅延損害金などで、すべての一般破産債権が満額支払われた後にのみ配当の対象となる、最も順位の低い債権です。

実務上、自己破産において一般破産債権に満額の配当が行われることは稀であり、配当率は数パーセントにとどまることが多々あります。

配当が完了すると、裁判所の決定により破産手続は終結し、免責の審理へと移行します。

まとめ

今回は自己破産で管財事件となったときの破産財団や否認権などについて解説しました。

管財事件となった場合の自己破産は、手続きが複雑になります。

そのため、自己破産を検討されている方は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することを検討してください。

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