【同性パートナーシップ解消】養子縁組の離縁・手続き・相談先
2026/04/14

同性パートナーとの生活を解消する決断を下す際、法的な婚姻関係がないからといって、単に別居するだけで全てが解決するわけではありません。
日本の現状において、同性パートナーが家族としての法的保護を受けるために養子縁組という制度を利用している場合、その解消には民法に基づく離縁の手続きが必須となります。
また、自治体のパートナーシップ証明制度を利用している場合には、解消届の提出などといった事務的な作業も発生します。
本記事では、同性パートナーが解消する場合の具体的な流れや直面しやすいトラブルなどについて解説します。
同性パートナーシップを解消するときの流れ
同性パートナーシップの解消は、大きく分けて法的な関係の解消と生活実態の解消の2つの側面があります。
まず、当事者間で解消の合意形成を図ることが始まりとなります。
婚姻関係がないため、法的な離婚という概念は適用されませんが、養子縁組をしている場合は、戸籍上の親子関係を解消する離縁届を役所に提出しなければなりません。
生活実態の解消においては、共同で購入した家具や家電の分配、賃貸物件の退去または名義変更、さらには共同の銀行口座の閉鎖など、事務的な処理を一つずつ進めていく必要があります。
もし二人の間で将来の解消を想定したパートナーシップ契約を公正証書などで締結していたのであれば、その契約書に記載されたルールに従って清算を進めることになります。
ステップ1:養子縁組の離縁手続きを進める
同性パートナー間で養子縁組を結んでいる場合、二人は法的には養親と養子という親子関係にあります。
この関係を解消するためには、民法に定められた離縁の手続きを行わなければなりません。
離縁には、当事者の合意によるものから、裁判所の判断を仰ぐものまで、以下、3つの方法が存在します。
協議離縁:当事者間の話し合いで解消する方法
協議離縁は、養親と養子の双方が離縁することに合意し、役所に離縁届を提出することで成立する、もっとも簡単な方法です(民法第811条)。
離縁の合意が得られた場合には、養子縁組を解消するため役所に備え付けの離縁届に、当事者二人が署名・押印と成人2人の証人の署名を記載し提出します。
養子縁組は同性愛者の方の関係継続を目的で行うことが有効であると認められているため、その解消もまた当事者の自由な意思に基づいて行われるべきものです。
したがって、当事者間の合意あれば、離縁の理由や原因など関係なく成立します。
ただし、名字の変更や家財の分配について折り合いがついていない段階で届出を急ぐと、後になって大きなトラブルに発展するリスクがあります。
したがって離縁届を提出する前に、合意内容を記した書面を作成しておくことが、将来の紛争リスクを低くするためにも重要といえるでしょう。
調停離縁:家庭裁判所で合意を目指す方法
養子縁組の離縁が当事者二人だけの話し合いでは解決しない場合、家庭裁判所に離縁調停を申し立てる方法があります。
離縁調停では、中立的な立場である男女2名で構成された調停委員が間に入り、双方の主張を聞きながら合意に向けた調整を行います。
調停を利用した方が良いケースとして、離縁自体の合意はとれているものの、清算金の額で揉めているといったときや、相手が話し合いに応じてくれないといった場合などが考えられます。
離縁調停が成立すると調停調書が作成されます。
これは裁判の確定判決と同じ効力を持つため、約束された清算金や慰謝料などといった支払いが滞った場合には、強制執行の手続きを講じることができるようになります。
裁判離縁:訴訟で離縁を求める最終手段
離縁調停で当事者間の合意に至らない場合、最終的に訴訟を提起することになります(民法第814条)。
裁判で離縁が認められるためには、法律に定められた離縁事由が存在しなければなりません。
具体的には、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 他の一方から悪意で遺棄されたとき
- 他の一方の生死が3年以上明らかでないとき
- その他縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
同性パートナー間の場合、縁組を継続しがたい重大な事由として、パートナーシップ関係の破綻や不貞行為、暴力などが主張されることになります。
裁判によって下された判決に基づき、ご自身の主張が認められた場合には、一方的に離縁を成立させることが可能となります。
裁判は長期間にわたることも多く、精神的・経済的な負担も大きくなります。
したがって、訴訟に発展した場合には弁護士にサポートを受けた方がいいといえます。
ステップ2:離縁による法的関係の変化を理解する
養子縁組の離縁が成立すると、戸籍上の関係は完全に消滅します。
これにより、社会生活においても様々な変化が生じるため、その影響を正しく理解しておく必要があります。
子どもの親権・監護権はどうなるか
離縁する同性パートナーとのあいだに二人の間に、実子やあるいは第三者から迎えた養子といった子どもが存在する場合、その処遇は最優先で検討されるべき課題です。
現行の日本の法律では、同性カップルが共同親権を持つことは認められておりません。
多くの場合、どちらか一方が法律上の親(親権者)となっており、もう一方は事実上の監護者として関わっている状態です。
離縁によってパートナーシップが解消されると、法律上の親でない側は、子どもとの法的な繋がりを一切失うことになります。
これまでの監護実績に基づき、離縁後も子どもとの面会交流を行う権利があるか、あるいは養育費を支払う義務があるかといった点については、子どもの福祉を最優先に考えた協議が必要です。
家庭裁判所も子どもの利益を最大の判断基準とするため、これまでの生活環境を急激に変えないための配慮が求められます。
戸籍と名字の変更について
養子縁組をすると、養子は養親の氏を称することになります。
離縁が成立すると、養子は原則として縁組前の氏(旧姓)に戻ることになります(民法第816条)。
戸籍も養親の戸籍から抜け、新しい戸籍を作るか、あるいは元の戸籍に戻るかを選択します。
ただし、長年使用してきた名字を変えることで社会生活に支障が出る場合には、離縁から3か月以内に離縁の際に称していた氏を称する届を出すことで、養親の氏を継続して使い続けることが可能です。
銀行口座の名義変更や運転免許証の書き換えなど、氏の変更に伴う事務作業は膨大な量になります。
あらかじめ計画を立てて、スムーズな移行を目指すことが大切です。
相続権と扶養義務の消滅
離縁によって親族関係が終了するため、互いに対する法定相続権は消滅します。
たとえ相手が多額の財産を残して亡くなったとしても、離縁後の元パートナーがその財産を受け取る権利はありません。
もし、解消後も一定の財産を譲りたいという願いがある場合には、別途遺言書を作成しておく必要があります。
また、民法第730条が定める親族間の扶養義務もなくなります。
ただし、解消時の合意において生活援助金として定期的な支払いを約束することは自由です。
一度離縁してしまえば、法律に基づいた強制的な権利行使は困難になるため、重要な取り決めは全て離縁成立前に確定させておく必要があります。
ステップ3:財産関係を清算する【財産分与は可能?】
パートナーシップの解消において、もっとも紛糾しやすいのが金銭や不動産の清算です。
婚姻関係における財産分与の規定が、養子縁組の離縁にどこまで適用されるかが焦点となります。
養子縁組の離縁で財産分与が認められにくい理由
本来、養子縁組は親子関係を作る制度であり、夫婦のように協力して財産を築くという側面は法的には想定されておりません。
そのため、民法の離縁規定には、離婚のような財産分与請求権の定めが存在しません。
裁判実務においても、純粋な親子関係の解消であれば、一方が他方の財産を分けてもらう権利は原則として認められません。
しかし、同性パートナー間での養子縁組は、実態として婚姻に準ずる共同生活を営んでいるケースが大半です。
この場合、形式は離縁であっても、実質的には離婚と同じように扱うべきではないかという議論がなされています。
財産分与の代わりとなる慰謝料・不当利得返還請求
法律上の財産分与が直接認められにくい現状において、清算を行うための代替的な理論が活用されます。
1つは内縁の解消という構成です。
同性パートナーであっても、長年の同居や家計の共有があれば、内縁関係に準じた保護が受けられる可能性があります。
この場合、婚姻規定の類推適用により、共同で築いた財産の半分を分ける権利が認められることがあります。
もう1つは不当利得返還請求です。
たとえば、パートナーの名義のマンションのローンを自分が支払っていたような場合、解消時にその分を返せと主張するものです。
また、解消に至った原因が相手の暴力や虐待にある場合には、不法行為に基づく慰謝料の請求も検討されます。
これらの請求を行うためには、貢献の度合いや被害の実態を詳細な証拠とともに提示することが求められます。
不貞行為に対する慰謝料請求はできるのか
同性パートナーであっても、その関係が婚姻に準ずると認められる場合には、貞操を守る義務(誠実義務)があると判断される傾向にあります。
裁判例でも、同性パートナー間の不貞行為に対して慰謝料の支払いを命じた事例が存在します。
ただし、単なる友人関係ではなく、永続的な共同生活を営む意思があったことを客観的に証明しなければなりません。
たとえば、パートナーシップ受領証を取得していた事実や、結婚式を挙げた写真、親族への紹介状況などが有力な証拠となります。
相手に裏切られたことで精神的な苦痛を受けたのであれば、法的な責任を追及することも正当な権利の一つです。
誠実に向き合い、納得のいく清算条件を導き出すことが、再出発への指針となります。
ステップ4:パートナーシップ証明制度の解消手続き
法的な離縁手続きと並行して、自治体から交付された証明書類の整理も必要となります。
これは役所に対して私たちはもう家族ではありませんと正式に通知する作業です。
自治体への解消届の提出
各自治体のパートナーシップ制度には、関係を解消した際の届出義務が定められています。
原則として、当事者の一方または双方がパートナーシップ解消届を提出することになります。
解消届の様式は自治体によって異なりますが、住所、氏名、受領証の番号などを記入する形式が一般的です。
離縁が成立している場合は、戸籍上の親族関係もなくなっているため、速やかにこの手続きを行うことが推奨されます。
届出を怠ると、将来的に別の相手と新たなパートナーシップを組もうとした際に、二重登録とみなされて拒される原因にもなりかねません。
必要書類と手続きの流れ
自治体のパートナーシップ手続きに必要な主な書類は以下の通りです。
- パートナーシップ解消届(自治体指定の窓口で入手)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 交付されていた受領証および証明カード(原本の返還が必要)
一部の自治体では、郵送による届出も認められていますが、受領証の原本を返却しなければならない点に注意してください。
また、条例型の制度を利用していた場合、公正証書で作成した契約書の破棄や変更が必要になることもあります。
事務的な手続きを一つずつ完了させることは、自分自身の気持ちを整理し、過去との区切りをつけるための重要な過程となります。
自治体の担当窓口では、プライバシーに配慮した対応が行われるため、不安がある場合には事前に電話などで相談しておくことが望まれます。
ステップ5:関係解消に伴うその他の手続きチェックリスト
離縁と自治体への届出以外にも、日常生活に関連する契約の見直しが欠かせません。
これらを放置しておくと、将来的なトラブルの種になりかねないため、早めの対応を検討してください。
遺言書の撤回または書き直し
パートナーに財産を残すために作成していた遺言書は、関係解消と同時にその内容を再検討すべきです。
「全財産を○○(元パートナー)に遺贈する」という内容の遺言書が残ったまま亡くなった場合、法律上はその遺言が有効とみなされ、意図しない相続が発生してしまいます。
遺言書の種類によって手続きは異なりますが、自筆証書遺言であれば破棄し、公正証書遺言であれば公証役場で撤回の手続きを行うことが必須となります。
また、新たなパートナーや親族への相続を検討しているのであれば、速やかに新しい内容で書き直すことが求められます。
確実な財産承継を実現するためには、常に現状に即した内容に更新しておくことが重要です。
生命保険の受取人変更
生命保険の受取人をパートナーに指定していた場合、これを変更する手続きが必要です。
保険金の受取は、戸籍上の関係がなくても契約上の指定があれば実行されます。
離縁した後に万が一のことがあった際、元パートナーに高額な保険金が支払われることを避けるためには、保険会社への通知が遅れてはなりません。
多くの場合、電話やウェブサイトからの申請で手続きが可能です。
あわせて、医療保険の指定代理請求人の設定なども見直しておくことが、万全の備えとなります。
賃貸契約や公的書類の名義変更
同居していた住居の賃貸借契約についても整理が必要です。
パートナーが契約者で自分が同居人であった場合、自分がそのまま住み続けるのであれば、大家や管理会社と相談して名義を自分に変更しなければなりません。
この際、改めて審査が必要になることもあるため、早めの相談が指針となります。
また、世帯主としてパートナーを登録していた住民票の世帯分離や、住所変更に伴う郵便物の転送設定も忘れてはならない項目です。
算用数字を用いて期限を管理し、漏れがないように事務作業を進めていくことが、平穏な独り立ちを支える基礎となります。
もしもトラブルと安全確保のための相談窓口
養子縁組解消の過程で、相手から不当な圧力を受けたり、暴力にさらされたりする場合、一人で抱え込むのは極めて危険です。
安全を確保しながら解決を図るための相談先を知っておくことが、命を守ることに繋がります。
元パートナーからのDV・ストーカー被害への対処法
元パートナーからのドメスティック・バイオレンス(DV)は深刻な問題です。
DVには身体的な暴力だけでなく、暴言や過度な束縛、生活費を渡さないといった経済的虐待もDVに含まれます。
もし生命に危険を感じる状況であれば、迷わず警察(110番)へ通報してください。
警察にはストーカー規制法やDV防止法に基づき、加害者に対して警告を発したり、接近を禁止したりする権限があります。
また、自治体の男女共同参画センターや配偶者暴力相談支援センターでは、一時的な避難(シェルター)の案内や、心のケア、さらには保護命令の申し立てに関する助言を受けることができます。
関係を断ち切る際、相手の執着が強い場合には、第三者の介入を仰ぐことが、最善の安全対策となります。
アウティング(性的指向の暴露)のリスクとプライバシー保護
解消時の争いにおいて、相手が職場や家族にバラすぞと脅してくる、いわゆるアウティングの脅迫は卑劣な行為です。
性的指向や性自認といった極めて私的な情報を本人の同意なく暴露することは、人格権を侵害する違法な行為とみなされる可能性があります。
一部の自治体では、条例でアウティングの禁止を明文化しています。
脅迫を受けている場合は、そのやり取り(音声、メール、LINEなど)を詳細に記録し、証拠として保存してください。
弁護士などの専門家を通じてこれ以上のアウティングは法的措置(損害賠償請求など)を講じるという強い姿勢を示すことが、被害を食い止めるための有効な手段となります。
プライバシーを守りながら解決を図る過程を、誠実にサポートしてくれる機関を頼りましょう。
【目的別】専門家・LGBTQ支援団体の相談窓口一覧
同性パートナーとのトラブルの相談窓口には以下があります。
法律に関する相談窓口
| 相談窓口名 | 内容・サポート内容 | 特徴・備考 |
| 日本弁護士連合会 | セクシュアル・マイノリティ電話相談。 特定の曜日・時間帯に専門の弁護士が対応します。 | 離縁の法的構成や財産分与の見通しについて詳細な情報を得られます。 |
| 法テラス | 経済的に余裕がない方向けの無料法律相談。 弁護士費用の立て替え制度も利用可能です。 | 法テラス・サポートダイヤルへの電話が解決への始まりとなります。 |
| 公証役場 | パートナーシップ契約の解釈や無効化に関する相談。 公正証書の取り扱いを確認できます。 | 契約締結済みの場合、手続きの適法性について直接公証人に確認可能です。 |
DVや心のケアに関する相談窓口
| 相談窓口名 | 内容・サポート内容 | 特徴・備考 |
| よりそいホットライン | LGBTQ当事者の相談員による24時間体制の電話相談。 人間関係や暴力被害に対応します。 | 誰にも言えない孤独を感じたとき、心の支えとなる指針を示してくれます。 |
| 警察相談専用電話(#9110) | 緊急ではないが、将来的なトラブルが心配な場合の相談。 各都道府県の警察が対応します。 | 相談実績を作っておくことで、いざという時の迅速な対応を期待できます。 |
| LGBTQ支援団体 | 同じ境遇の方々の事例共有やコミュニティ運営。 法改正の動向も提供します。 | 法的解決だけでなく、社会的な繋がりを維持するための有力な情報源となります。 |
まとめ
今回は同性パートナーとの関係を解消したいときの手続きの流れや相談窓口などについて紹介していきました。
同性パートナーシップを解消し、養子縁組の離縁を進める過程は、法的な婚姻関係がないゆえに、かえって複雑な判断を求められる場面が少なくありません。
パートナー解消について不安な方やお困りの方は弁護士に相談することを検討してください。




