養子縁組・パートナーシップ制度の違いは?同性カップルの権利早わかり表
2026/04/08

我が国の現行法制度下においては、同性間の婚姻は認められておりません。
そのため、同性パートナーが互いに家族としての権利を享受し、法的な保護を受けるためには、既存の法制度を組み合わせた独自の対策を講じる必要があります。
現在、多くのカップルが検討する主な手段として、地方自治体が実施するパートナーシップ証明制度と、民法上の制度である養子縁組の2つが挙げられます。
これらは一見似たような目的で使用されますが、その法的根拠や発生する権利義務の内容は根本から異なります。
本記事では、養子縁組・パートナーシップ制度の違いなどについて解説します。
結論!養子縁組とパートナーシップ制度の権利の違い【早わかり比較表】
養子縁組とパートナーシップ制度は、その法的性格が大きく異なります。
養子縁組は民法に基づく親族関係を形成する手続きであるのに対し、パートナーシップ制度は自治体による関係の公認に留まるものです。
主な違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | 養子縁組 | パートナーシップ制度 |
| 法的根拠 | 民法(第809条など) | 地方自治体の条例または要綱 |
| 親族関係 | 成立する(養親と養子の関係) | 成立しない |
| 法定相続権 | あり(実子と同様の権利) | なし |
| 扶養義務 | あり(民法第730条) | 契約や自治体規定の範囲に留まる |
| 同居・協力義務 | 法律上の明文規定なし(※1) | 自治体への誓約事項となる場合が多い |
| 氏(苗字) | どちらか一方の氏に変更される | 各自の氏を維持する |
| 将来の婚姻 | 離縁後も婚姻不可(民法第736条) | 法改正により婚姻可能 |
| 行政サービス | 家族として扱われることが多い | 自治体の定める範囲内に限定される |
| 民間サービス | 家族としての証明が容易 | 提携企業において家族扱いされる |
(※1)養子縁組は親子関係を作る制度であるため、夫婦間に認められる同居・協力・扶助義務(民法第752条)は当然には発生しません。
自治体が認める家族の形パートナーシップ制度とは?
パートナーシップ制度とは、地方自治体が同性同士のカップルに対して、婚姻に準ずる関係であることを公的に認める証明書を発行する制度です。
渋谷区や世田谷区が2015年に開始して以来、全国の多くの自治体で導入が進んでおります。
パートナーシップ制度の目的と概要
パートナーシップ制度は、多様性を尊重する社会の構築を目的として創設されました。
現行法で婚姻できない同性パートナーに対し、自治体が家族であるとの証明を付与することで、社会的・行政的な不利益を解消しようとするものです。
ただし、この制度はあくまで各自治体の独自の施策であり、国の法律を上書きするものではありません。
したがって、戸籍上の関係に変化が生じることはなく、法的な家族としての地位が全国的に一律で保障されるわけでもない点に注意が必要です。
自治体によっては、条例に基づき周辺企業に対して差別的取り扱いの禁止を求めるなど、より強い推進力を有する場合もあります。
パートナーシップ制度のメリット|受けられる行政・民間サービス
制度を利用することで、以下のような具体的な恩恵を享受できる機会が増えます。
■行政サービスの利用できる
公営住宅への入居申し込みが可能になったり、パートナーを世帯員として登録できたりする場合があります。
■医療機関での対応
パートナーの手術の同意や面会において、親族と同等の扱いを受けられるよう自治体が働きかけを行っているケースが多く見られます。
■民間サービスの適用
携帯電話の家族割引、生命保険の受取人指定、航空会社のマイレージ共有など、提携する企業において家族としてのサービスが提供されます。
■職場での福利厚生
就業規則などでパートナー制度を利用している方を配偶者としてみなすといった決まりがある場合、家族手当や慶弔休暇の対象となる可能性があります。
これらのサービスは、法的な婚姻関係がないことによる不便を解消するための大きな支えとなりえます。
パートナーシップ制度のデメリット
パートナーシップ制度の大きなデメリットは、法的な拘束力が限定的であることです。
自治体による証明は、あくまでその地域内や提携先でのみ機能する事実上の承認に過ぎません。
税法上の配偶者控除を受けることはできず、相続が発生した際にも、この証明書だけで財産を引き継ぐことは不可能です。
また、パートナーシップ契約のみでは、第三者に対して権利の主張を行うことが困難な場面も存在します。
たとえば、アパートの賃貸契約や金融機関との取引においては、自治体の証明書だけでは親族としての実体を認められないことがあります。
したがって、法的な効力を補完するためには、後述する公正証書による契約締結を併用する方法を検討する必要があるといえます。
パートナーシップ制度の申請手続き・必要書類・導入自治体
パートナーシップ制度の申請手続きは自治体によって異なりますが、一般的には以下の流れで進められます。
まず、対象の自治体に住所を有していること、または転入を予定していることが条件となります。
次に、独身であることを証明する書類と本人確認書類を用意します。
一部の自治体では、パートナーシップ契約を公正証書で作成していることを必須とする条例型の運用を行っていることもあります。
書類が揃ったら自治体の窓口へ予約を行い、当事者二人が揃って宣誓書に署名します。
発行される受領証や証明カードは、様々な場面で提示する重要な資料となります。
導入自治体は年々増加しており、自治体間の相互利用も広がりを見せております。
法的な親子関係を結ぶ養子縁組とは?
養子縁組は、本来は親子関係のない間に法律上の親子関係を創設するための制度です(民法第809条)。
同性パートナー間では、年齢が上の者を養親、下の者を養子とすることで、強力な法的保護を得る手段として活用されてきました。
同性カップルが養子縁組をする意味
同性パートナーと婚姻制度が利用できない現状において、互いに戸籍上の繋がりを持ち、法律が定める親族となる唯一の手段が養子縁組です。
養子縁組が成立すると、民法上の扶養義務(第730条)が生じるとともに、第一順位の法定相続人としての地位が確保されます。
裁判例においても、成人同士が同性愛関係の継続を動機としつつ、相続や扶養といった養子縁組の法的効果を享受しようとすることは縁組意思として有効であると認められております(東京高判平成31年4月10日)。
これにより、同性パートナーが養子縁組を行うことは、法的に有効な選択肢であると結論づけられております。
養子縁組のメリット|相続権など強い法的効力
同棲パートナーが養子縁組の最大のメリットは、国の法律に基づく以下のような保護が得られる点です。
■相続権
養子は養親の子どもとしての地位を得るため、養親が亡くなった際、遺言書がなくても当然に財産を相続する権利(法定相続権)を持ちます。
また、他の親族から相続権を侵害されないための遺留分も確保されます。
■名字の統一
養子は養親の氏を称することになるため、戸籍上の苗字が同じになります(民法第810条)。
社会生活上、同じ姓を名乗れることは、家族としての連帯感を強める要因となります。
■親族としての社会的承認
戸籍に記載されることで、病院や行政機関、民間企業に対して法律上の親族であることを明確に証明できます。
これはパートナーシップ制度にはない、絶対的な証明力となります。
養子縁組の注意点|将来の同性婚に影響も
養子縁組は、同性パートナーが法的な保護を受けるため、非常に強力な制度である一方で、無視できないリスクも存在します。
養子縁組を行うときの最大の注意点は、一度行うと離縁した後であっても婚姻ができないという点です(民法第736条)。
将来、我が国で同性婚が法制化された際、今のパートナーと結婚したいと願っても、過去に養子縁組をしていた事実は法的障害となります。
また、養子縁組はあくまで親子関係を模したものであるため、夫婦に認められる権利義務のすべてを網羅しているわけではありません。
さらに、養親よりも先に養子が亡くなった際、養子に子どもがいる場合などは代襲相続の問題が発生し、養親が財産を引き継げないといった特殊なケースも生じ得ます。
加えて、戸籍上は父と子あるいは母と娘という記載になるため、その関係性に違和感を抱くかたも少なくありません。
養子縁組の手続きの流れと必要書類
養子縁組の手続きは、婚姻届と同様に役所へ届書を提出することで完了します。
成人同士の養子縁組(普通養子縁組)であれば、家庭裁判所の許可は不要です。
用意すべき主な書類は以下の通りです。
- 養子縁組届(当事者二人の署名および証人二人の署名が必要)
- 各自の戸籍謄本または抄本
- 本人確認書類
届出が受理されると、戸籍の記載が書き換えられ、一方の当事者が他方の戸籍に入る形となります。
非常に簡便な手続きで強力な効果が得られますが、解消(離縁)する際にも双方の合意が必要となるため、慎重な検討が求められます。
【目的別】養子縁組とパートナーシップ制度の権利を徹底比較
日常生活における様々な場面を想定し、2つの制度の具体的な差を検討します。
1. 相続|財産を確実に残すには?遺言書との関係
財産の承継に関しては、養子縁組が圧倒的に有利です。
パートナーシップ制度ではあくまで各自治体が制定しているため、相続権を得ることは出来ません。
遺言書などでパートナーに対し、遺贈をこれを利用しているだけでは、万が一の際、財産はすべて相手方の親族に渡ってしまいます。
一方、養子縁組をしていれば、実子と同様の相続権が保障されているため遺言を残さなくても、遺産を承継することが可能です。
したがって、パートナーシップ制度のみを利用する場合には、相手方へ財産を残すために遺言書の作成が必須となります。
遺言書によって遺贈という形をとることで、法定相続人以外にも財産を譲ることができます。
ただし、遺言書があっても相手方の親族の遺留分を完全に排除することはできないため、法的な紛争を避けるには内容をよく考えて作成する必要があります。
2. 子ども|親権はどうなる?共同養育の課題
現在、我が国では同性カップルによる共同親権は認められておりません。
パートナーシップ制度を利用していても、法律上の親になれるのは一人だけです。
養子縁組を用いた場合でも、それはパートナー間の親子関係であり、子どもとの間の親権の問題を直接解決するものではありません。
子どもを共に育てる場合には、一方を未成年後見人として指定する手続きや、将来の養育に関する契約を公正証書で残しておくといった対策が考えられます。
不確かな現状において、子どもの福祉を最優先に考えた枠組みを構築することが、親としての責任となります。
3. 医療|いざという時、家族として判断・面会できるか
緊急時の医療対応については、パートナー制度も養子縁組もともに活用が期待されます。
養子縁組は法律上の親族であるため、病院側が拒否する理由はまずありません。
パートナーシップ制度についても、導入自治体の働きかけや病院の理解が進んだことで、家族としての面会や説明を認められるケースが増えております。
ただし、地方の病院や制度への理解が乏しい施設においては、自治体の証明書だけでは親族ではないと断られるリスクが依然として存在します。
このような事態に備え、医療同意に関する委任状や、任意後見契約などを準備しておく手順が有効です。
4. 税金・社会保険|扶養や控除は受けられる?
同性パートナーの税金面での優遇については、養子縁組であっても期待できる範囲は限定的です。
配偶者控除はあくまで法律上の配偶者を対象としているため、養子縁組では適用されません。
健康保険の扶養についても、パートナーシップ制度のみでは原則として認められませんが、一部の健康保険組合では独自に認定を行っている例もあります。
養子縁組をしていれば、生計維持関係などの要件を満たすことで、子ども(扶養親族)として扶養に入れることが理論上は可能となります。
ただし、個別の制度ごとに要件が詳細に定められているため、勤務先の規定や所属する組合のルールを確認しなければなりません。
5. 住まい|公営住宅やペアローンでの扱い
住環境については、パートナーシップ制度の普及により改善が著しい分野です。
多くの公営住宅において、自治体の証明書があれば入居申し込みが可能となっております。
民間マンションの購入についても、大手金融機関ではパートナーシップ受領証を提示することで、二人でローンを組む(ペアローンや収入合算)ことができる商品が増えております。
一方、養子縁組をしている場合、親子関係としてのローン構成となるため、年齢制限や返済期間の設定において特殊な扱いを受けることがあります。
住宅購入は長期にわたる経済的負担を伴うため、資金計画を立てる際に金融機関の基準を精緻に確認しておくことが求められます。
6. 戸籍・姓(苗字)|同じ戸籍や姓になれるか
同性パートナーの方が名字を同じにしたいという願いについては、養子縁組が直接的な解決策となります。
養子縁組届を提出することで、一方が他方の氏を称し、同じ戸籍に入ります。
日常生活での郵便物や会員登録、銀行口座などで同じ氏を名乗れることは、外見上も家族であることを示しやすくします。
これに対し、パートナーシップ制度では戸籍上の変動は一切ありません。
各自が元の苗字を維持し、戸籍も別々のままとなります。
仕事上の理由などで名字を変えたくない場合にはパートナーシップ制度が好まれますが、家族としての統一感を重視する場合には養子縁組が選ばれる傾向にあります。
養子縁組・パートナーシップ制度以外の選択肢も検討しよう
特定の制度に依存するだけでなく、私的な契約や遺言を組み合わせることで、より強固な法的保護を構築することが可能です。
パートナーシップ契約(公正証書)で二人のルールを決める
パートナーシップ契約とは、同性パートナー間での共同生活に関する取り決めを明文化した契約です。
民法上の婚姻規定に準じ、以下の事項を定めることが一般的です。
- 同居、協力、および貞操を守る義務
- 生活費(婚姻費用に相当するもの)の分担方法
- 関係継続中に形成した財産を共有とするか、各自の所有とするかの定め
- 関係を解消する際の、財産分与や慰謝料、引越し費用などの負担。
この契約を公正証書として作成しておくことで、単なる口約束ではなく、法的な証拠能力を持たせることができます。
公証役場での手続きを経て作成された証書は、自治体への申請時にも活用できる有力な資料となります。
内縁(事実婚)関係として法的に認められる可能性
最近の裁判例では、同性パートナー関係であっても、実態が伴っていれば内縁に準ずる関係として法的な保護を認める傾向が強まっております。
たとえば、不合理な理由で関係を一方的に解消された場合に、慰謝料請求が認められるケースなどです(東京高判令和2年3月4日)。
これは、男女の婚姻に準じた生活を営んでいる結合であれば、その保護の必要性は同性間でも同様であるという考え方に基づいております。
法的な制度を利用していなくても、長年の同居実態や家計の共有があれば、一定の保護を受けられる可能性があります。
ただし、内縁関係を証明するためには、住民票の続柄や共同の銀行口座、周囲への公表状況などの証拠を積み重ねる過程が必須となります。
併用がカギ!遺言書や任意後見契約の重要性
同性パートナーの方が、法定婚で保護されている権利と同等の権限を持つためには、1つの制度を利用するだけでは完璧な保護を得ることは困難です。
将来のあらゆるリスクに備えるためには、以下の手段を併用することを検討してください。
■公正証書遺言
相続権がないパートナーに財産を確実に残すために、もっとも重要な書類です。
パートナーシップ制度と遺言書を組み合わせることで、養子縁組に頼らずとも相続を実現できます。
■任意後見契約
将来、加齢などで判断能力が低下した際に、パートナーを後見人に指定しておく契約です。
これにより、介護サービスの契約や財産の管理をパートナーに委ねることができます。
■医療同意に関する委任状
意識不明などの緊急事態に備え、医療に関する判断をパートナーに委託する意思を表示しておきます。
上記の書類を公正証書でセットとして準備しておくことは、将来の備えとして非常に重要となります。
養子縁組・パートナーシップ制度に関するよくある質問
同性カップルの養子縁組やパートナーシップの制度の利用にあたって多く寄せられる疑問を整理しました。
Q. 養子縁組とパートナーシップ制度のどちらを先に利用すべきですか?
それぞれの目的によりますが、まずは心理的なハードルが低く、かつ将来の婚姻に支障をきたさないパートナーシップ制度から始めるケースが多いです。
パートナーシップ制度を利用しながら、公正証書で契約や遺言を作成しておくことで、当面の法的リスクは大幅に低減できます。
一方で、高齢などで相続の確実性を最優先にしたい場合には、最初から養子縁組を選択することもあります。
二人のライフステージや、何を一番に守りたいのかを話し合い、納得のいく結論を導き出してください。
Q. 家族や職場に知られずに手続きできますか?
パートナーシップ制度の場合、自治体から自宅に郵送物が届くことは原則としてありませんので、同居していない親族などに知られるリスクは低いです。
ただし、住民票の続柄を変更したり、職場で福利厚生の申請を行ったりする際には、知られることになります。
養子縁組については、戸籍に記載されるため、親族が戸籍を閲覧したり、相続が発生したりした際には必ず判明します。
どのような範囲まで公表するか、あらかじめ二人で基準を決めておくことが、円滑な運用には欠かせません。
Q. 制度を利用後に引っ越した場合、手続きはどうなりますか?
パートナーシップ制度は自治体独自の制度であるため、転居先の自治体でも同様の制度がある場合は、改めて申請を行う必要があります。
最近では自治体間での相互利用に関する協定が広がっており、転出元の受領証を提示することで手続きが簡素化される例も増えております。
一方、養子縁組は戸籍上の関係であるため、日本国内であればどこへ引越してもその効力に変化はありません。
引越しが多いライフスタイルの場合には、全国一律で有効な養子縁組の方が事務的な手間は少なくなります。
Q. 関係を解消したい場合(離縁・パートナーシップ解消)どうすればいいですか?
パートナーシップ制度の解消は、自治体へ受領証を返納し、解消届を提出するのみで完了します。
養子縁組を解消する場合は離縁届を役所に提出する必要があります。
双方が合意していれば、協議離縁という形でスムーズに手続きが進みます。
ただし、離縁後の財産分与や生活支援について揉める可能性があるため、生前にパートナーシップ契約で解消時のルールを詳細に定めておくことが推奨されます。
養子縁組を解消しても、親族関係としての記録は戸籍に残るため、その点も踏まえた慎重な判断が必要です。
まとめ
今回は、同性パートナーが利用できる養子縁組とパートナーシップ制度の違いについて解説しました。
国の法整備が途上にある中、自分たちの権利を守るためには複数の制度や契約を組み合わせる知恵が求められます。
相続や苗字といった強い法的結合を求めるなら養子縁組が、将来の結婚の可能性を残しつつ社会的な承認を得たいならパートナーシップ制度が、それぞれ適しております。
パートナシップや養子縁組についてどうすればいいのか分からない場合には、一人で悩むのではなく、パートナーと誠実に話し合い、必要に応じて弁護士に相談することを検討してください。




