後遺障害にはどんな種類がある?症状別の等級認定基準と慰謝料相場
2026/04/25

交通事故で日常生活や仕事に支障をきたすような症状が将来にわたって残った場合、被害者にとって精神的、経済的に耐えがたい苦痛となります。
このような不利益を法的に正当に評価し、金銭的な補償を行う制度が後遺障害賠償です。
しかし、単に症状が残っているという主観的な訴えだけでは、十分な賠償を受けることはできません。
自賠責保険の定める厳格な等級認定の基準をクリアし、客観的な証明を行う過程が求められます。
本記事では、後遺障害とは何か、また症状別の認定基準などについて解説します。
後遺障害とは?後遺症との違いと等級認定の重要性
一般的に使われる後遺症という言葉と、法律実務で使われる後遺障害という言葉は、似ているようで明確な違いがあります。
後遺症は、怪我や病気の治療後に残った不調全般を指す言葉です。
一方で、後遺障害とは、交通事故によって生じた怪我が、これ以上治療を続けても改善が見込めない状態(症状固定)に達した後に残存する、以下の要件を満たすものを指します。
- 交通事故との間に相当因果関係が認められること
- 医学的に証明または説明が可能であること
- 労働能力の喪失を伴うものであること
- 自賠責法施行令の別表に定める等級に該当すること
上記のことから、後遺障害は賠償の対象となるべき法的な資格を得た不調と言い換えることができます。
後遺障害が認められると受け取れる賠償金が増える
後遺障害等級が認定されると、それまで支払われていた入通院慰謝料や休業損害とは別に、新たに2つの大きな項目が賠償金に加算されます。
1つ目は後遺障害慰謝料です。
これは、障害を背負い続けることによる精神的苦痛に対する対価です。
2つ目は逸失利益です。
これは、障害によって労働能力が低下し、将来得られるはずだった収入が減少することに対する補償です。
これらの項目は金額が非常に大きく、適切な等級が認定されるかどうかで、被害者の将来の生活基盤が決定づけられるといっても過言ではありません。
交通事故の後遺障害|症状別の種類一覧
後遺障害は、身体のあらゆる部位や機能の喪失を対象としており、その種類は多岐にわたります。
その中でも代表的なものを紹介していきたいと思います。
むちうち(頸椎捻挫、外傷性頸部症候群)
頸椎捻挫、外傷性頸部症候群などのむちうちは、交通事故に遭った被害者の方でよくみられる後遺障害のひとつです。
交通事故によりむちうちになる理由は、衝突の衝撃で首が鞭を打つようにしなり、筋肉や神経、靭帯を損傷するためといわれています。
主な症状は、首や肩の痛み、重だるさ、頭痛、めまい、手足のしびれなどです。
むちうちの場合、多くは後遺障害等級の14級9号、局部に神経症状を残すものに該当します。
ただし、画像診断で神経根の圧迫などが明らかな場合は、局部に頑固な神経症状を残す12級13号が認められることもあります。
むちうちは身体内部の損傷であるため、他覚的な所見に乏しいケースが少なくありません。
したがって、医師による神経学的検査の結果が認定を左右する重要な指標となります。
高次脳機能障害
交通事故により脳の損傷したことよって、記憶力、集中力、判断力など認知機能や感情のコントロールに障害が出る状態を高次機能障害といいます。
外見からは分かりにくいため、見落とされやすいという特徴があります。
「性格が変わった」「以前できた仕事の段取りが組めない」「感情の起伏が激しくなった」といった変化が、家族や周囲の指摘で発覚することが多いです。
人間の脳は、MTBI(軽度外傷性脳損傷)による微細な損傷でも、生活に深刻な支障をきたすことがあります。
症状の程度に応じて、要介護の1級から、社会復帰が可能な9級まで幅広く認定されます。
精神・神経系統の障害(PTSD、RSDなど)
交通事故の後遺障害には、恐怖体験によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)や、神経の損傷に起因する慢性的な激痛であるRSD(反射性交感神経性ジストロフィー、現在のCRPS)が生じたときにも認定される可能性があります。
RSDは、わずかな刺激でも耐えがたい痛みを感じ、関節の拘縮や皮膚の変色を伴う重篤な障害です。
これらは医学的な診断基準に基づき、精神的な抑うつ状態や行動の制限度合いを考慮して等級が判断されます。
眼・耳・鼻・口の障害
交通事故を起因として目や耳などの感覚器官に不具合が生じた場合、後遺障害として認定されることがあります。
各器官の症状として以下が考えられます。
【眼】
- 視力の低下
- 失明
- 視野の欠損
- 複視(物が二重に見える)
【耳】
- 難聴
- 耳鳴り
【鼻】
- 嗅覚の脱失
- 鼻呼吸の困難
【口】
- 咀嚼(そしゃく)機能の低下や喪失
- 言語機能の喪失
- 味覚障害
これらの感覚器の障害は、専門的な検査機器を用いた数値的な評価が可能であるため、基準を満たせば比較的スムーズに認定が進みます。
体幹・脊柱、上肢・下肢の障害
交通事故で受傷した骨折による骨の変形や、関節が動かなくなる可動域制限、さらには手足の切断などは後遺障害に該当するといえます。
脊柱(背骨)の圧迫骨折による変形や運動障害は、脊柱の障害として扱われます。
肩、肘、手首の上肢や股関節、膝、足首の下肢については、事故前と比較してどの程度動かなくなったかという角度の測定が基本となります。
また、折れた骨がくっつかずグラグラする状態である偽関節なども、重要な認定項目です。
胸腹部臓器の障害
交通事故の外傷が心臓、肺、肝臓、腎臓、脾臓、さらには生殖器などの内臓に機能障害をもたらした場合、後遺障害認定される可能性が高いです。
手術によって臓器を摘出した場合や、呼吸機能の低下、排泄機能の障害などが含まれます。
内臓は生命維持に直結する部分であるため、介護の要否を含めて厳格に等級が決定されます。
後遺障害等級の認定基準|1級から14級までの一覧表
自賠責保険における後遺障害等級は、障害の重さに応じて1級から14級まで、140種類以上の項目が定められています。
各等級の代表的な症状の目安は以下の通りです。
| 等級 | 代表的な後遺障害の症状(目安) |
| 1級 | 両目の失明、咀嚼および言語機能の喪失、両上肢または両下肢をひじ・ひざ関節以上で失う、常に介護を要する脳や内臓の障害など |
| 2級 | 1目の失明および他目の視力0.02以下、両上肢または両下肢を手・足首関節以上で失う、随時介護を要する重篤な精神・身体障害など |
| 3級 | 1目の失明および他目の視力0.06以下、咀嚼または言語機能の喪失、1上肢または1下肢をひじ・ひざ関節以上で失うなど |
| 4級 | 両目の視力が0.06以下、咀嚼および言語機能に著しい障害、1上肢または1下肢を手・足首関節以上で失うなど |
| 5級 | 1目の失明および他目の視力0.1以下、1上肢または1下肢の用を全廃、神経系統の機能や精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の就労が困難なものなど |
| 6級 | 両目の視力が0.1以下、1目の失明および他目の視力0.6以下、1上肢の3大関節のうち2関節の用を廃したものなど |
| 7級 | 1目の失明、1上肢または1下肢の3大関節のうち1関節の用を廃したもの、外貌に著しい醜状を残すものなど |
| 8級 | 1目の視力が0.02以下、脊柱に著しい変形または運動障害、1肢の関節の1つに著しい機能障害など |
| 9級 | 1目の視力が0.06以下、15歯以上の歯科補綴、生殖器の機能に著しい障害を残すものなど |
| 10級 | 1目の視力が0.1以下、1上肢または1下肢の3大関節のうち1関節の機能に著しい障害を残すものなど |
| 11級 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し労務が相当程度制限されるもの、10歯以上の歯科補綴、脊柱に変形を残すものなど |
| 12級 | 局部に頑固な神経症状(医学的に証明可能)、外貌に醜状、1肢の3大関節のうち1関節の機能に障害を残すものなど |
| 13級 | 片目のまぶたに著しい欠損、5歯以上の歯科補綴、1肢の露出面に手のひら大の醜状を残すものなど |
| 14級 | 局部に神経症状(医学的に説明可能)、外貌に醜状を残すもの、脊柱に変形を残すものなど |
代表的な後遺障害等級について深掘りしていきましょう。
特に認定件数が多い14級と12級の基準
交通事故で認定件数が多い後遺障害等級は、14級と12級といわれています。
第14級9号 局部に神経症状を残すもの
後遺障害等級第14級9号は医学的に説明可能な症状が残っている場合に認定されます。
MRIなどの画像に明確な異常が写っていなくても、事故の状況や治療の経過、神経学的検査の結果から、本人の訴える痛みが合理的であると判断されれば認められます。
認定されると、後遺障害慰謝料として110万円程度が目安となります。
第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
後遺障害第12級13号の局部に頑固な神経症状を残すものが認定されるには、14級9号よりも神経症状が重いと医学的に証明できなければなりません。
14級との認定基準の大きな違いは、画像上の異常など他覚的所見の有無です。
MRI画像で神経根の圧迫が確認でき、それが本人の症状と一致している場合などに認められます。
こちらの慰謝料目安は290万円となり、14級と比較して大きな増額が見込めます。
要介護の後遺障害(別表第1)
後遺障害等級は介護の有無により、必要な症状は別表1、それ以外は別表2と区分されます。
交通事故による機能障害が常に、あるいは随時他人の介護を必要とする重い障害である場合、以下の後遺障害等級が認定されることになります。
【第1級1号】
症状:症状失明、脳の著しい障害、臓器の機能失陥などで常に介護を要するもの
自賠責限度額:4000万円
【第2級1号】
症状:第1級に準ずる重篤な状態で随時介護を要するもの
自賠責限度額:3000万円
上記は、被害者だけでなく家族の人生も大きく変えてしまうため、将来の介護費用を含めた多額の賠償が必要となります。
後遺障害(別表第2)
後遺障害等級の別表2の機能障害は、通常の生活は自力で送れるものの、労働や社会活動に一定の制限が生じるものが記載されています。
1級から14級まで細かく分類されており、たとえば手足の喪失や重い内臓障害、視力の著しい低下などが上位等級に設定されています。
後遺障害の慰謝料と逸失利益の相場
交通事故の後遺障害が認定されることで発生する賠償金は、大きく慰謝料と逸失利益に分けることができます。
項目別に相場を確認していきたいと思います。
後遺障害慰謝料の相場
後遺障害慰謝料の金額は、自賠責基準、任意保険基準、および弁護士基準のいずれかで決定します。
この中で、弁護士基準は過去の裁判例に基づいた基準であり、保険会社との交渉により合意が得られた場合には、もっとも高額な補償を受けることができます。
弁護士基準で合意を得た場合の、各等級の慰謝料の目安は以下の通りです。
| 後遺障害等級 | 慰謝料の目安(弁護士基準) |
| 1級 | 2800万 |
| 2級 | 2370万 |
| 3級 | 1990万 |
| 4級 | 1670万 |
| 5級 | 1400万 |
| 6級 | 1180万 |
| 7級 | 1000万 |
| 8級 | 830万 |
| 9級 | 690万 |
| 10級 | 530万 |
| 11級 | 420万 |
| 12級 | 290万 |
| 13級 | 180万 |
| 14級 | 110万 |
逸失利益の計算方法と相場
逸失利益は、将来にわたる減収分を補償するもので、以下の計算式で算出されます。
逸失利益の計算式
逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数
基礎収入は、原則として事故前年度の年収を用います。
ライプニッツ係数とは、将来の利息をあらかじめ差し引いて現在価値に直すための数値です。
なお、中間利息の控除は複利のライプニッツ係数で算出することが一般的ですが、単利であるホフマン係数を用いることもあります。
労働能力喪失率一覧
後遺障害の各等級の労働能力喪失率は次のとおりです。
| 後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
| 1級 | 100パーセント |
| 2級 | 100パーセント |
| 3級 | 100パーセント |
| 4級 | 92パーセント |
| 5級 | 79パーセント |
| 6級 | 67パーセント |
| 7級 | 56パーセント |
| 8級 | 45パーセント |
| 9級 | 35パーセント |
| 10級 | 27パーセント |
| 11級 | 20パーセント |
| 12級 | 14パーセント |
| 13級 | 9パーセント |
| 14級 | 5パーセント |
後遺障害等級認定の申請手続きと流れ
交通事故で後遺障害認定を受ける場合、適切な等級を得たいと考えたのであれば、自身で申請手続きする、被害者請求をした方がよいといえます。
具体的な手順について考えていきましょう。
STEP1:症状固定の診断を受ける
後遺障害申請を行うにあたる起点は、医師から「これ以上治療を続けても症状の改善が期待できない」と判断される症状固定の段階です。
怪我の具合などにもよりますが、概ねは事故から6か月程度が経過した時点が目安となります。
あまりに早く治療を切り上げてしまうと、後遺障害ではないとみなされるリスクがあるため、医師と相談しながら通院し、治療を継続することが大切です。
またこの時に、治療費の打ち切りなどを理由に保険会社が示談交渉を行おうとする可能性があります。
治療が完了していないときには、同意しないことが大切です。
STEP2:後遺障害診断書を作成してもらう
症状固定となった段階で、主治医に後遺障害診断書の作成を依頼します。
この書類の内容は障害等級認定の審査の結果に大きく影響します。
後遺障害の等級は、自覚症状よりも他覚的な所見があると自覚症状だけでなく、検査結果に基づく他覚的な所見を詳細に、かつ正確に記載してもらうよう働きかける必要があります。
医師は治療の専門家ですが、後遺障害認定の基準については必ずしも精通しているとは限らないため、必要に応じて弁護士の助言を得て、記載内容を精査する対応が求められます。
STEP3:後遺障害等級認定の申請を行う
後遺障害の申請書類を集めたら、被害者の方がご自身で、加害者側の自賠責保険会社に書類を提出し、申請を行う必要があります。
提出された書類は、中立的な機関である損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)に送られ、そこで審査が行われます。
原則として書面審査のみですが、必要に応じて病院への照会が行われることもあります。
STEP4:認定結果の通知
後遺傷害の認定結果は、申請から通常1か月から3か月程度で、認定結果が通知されます。
等級が認められれば認定理由が、認められない場合は非該当の理由が記載されています。
認定結果に納得できない場合は異議申立てを検討
後遺障害の認定結果が、非該当であったり、通知された結果が自身の症状を正当に評価していないと感じた場合には、異議申し立てを行う権利があります。
後遺障害の異議申立てが認められるポイント
一度出た後遺障害等級の認定結果を覆すのは容易ではありませんが、新たな根拠を示すことができれば認定が変わる可能性は十分にあります。
具体的なポイントについて確認していきましょう。
ポイント1:認定されなかった理由を分析する
後遺障害認定がなぜ非該当になったのか、あるいはなぜ想定より低い等級だったのかを精査します。
「症状の持続性が疑わしい」「画像上の所見が見当たらない」「事故の衝撃が軽い」といった具体的な拒絶理由に対する適切な反論を組み立てることがポイントです。
ポイント2:新たな医学的証拠を追加で提出する
後遺障害の異議申し立ては「痛いからもう一度考えてほしい」と言う主観的な主張だけでは認められません。
MRIの再撮像や、より高度な電気生理学的検査など不足していた検査を行い、医学的な裏付けを強めることが再認定されるためのポイントとなります。
ポイント3:異議申立書で具体的に主張・立証する
認定基準の文言に照らして、自身の症状がなぜ該当すべきなのかを、論理的な文面で構成します。
ただし、後遺障害認定の異議申し立ての書面は、非常に専門的な内容となるため、行政書士や弁護士などに相談した方が良いといえます。
異議申立て以外の対処法
審査機関への異議申し立て以外にも、以下のような解決手段があります。
自賠責保険・共済紛争処理機構への申請
後遺障害認定に不満を覚えた場合、自賠責保険・共済紛争処理機構への申請を行う手段があります。
自賠責保険・共済紛争処理機構とは、損害保険料率算出機構の判断に対し、さらなる審査を求める公的な紛争処理機関です。
弁護士などの有識者が審査を行い、一度だけの申し立てが可能です。
裁判(訴訟)を起こす
後遺障害認定に不満を覚えた場合の手段として、訴訟を起こすことが考えられます。
裁判所は、自賠責の等級認定に拘束されません。
訴訟の中で、独自の鑑定を行うなどして、裁判官が後遺障害の有無や程度を独自に判断します。
自賠責で非該当であっても、裁判で障害が認められるケースもあります。
後遺障害の等級認定は弁護士への相談がおすすめな理由
不慣れな手続きや医学的な議論を一人で進めることは、想像以上に困難です。
理由1:適切な後遺障害等級が認定されるようサポートしてもらえる
後遺障害の等級認定を弁護士に相談する理由として、適切な等級が得られるようサポートしてもらえることです。
弁護士は、どのような検査結果や記載内容が認定に有利に働くポイントを知っています。
診断書の作成依頼の段階からアドバイスを受け、医学的な根拠を強固にすることで、不当な低評価を未然に防ぐことができます。
理由2:慰謝料や逸失利益が大幅に増額する可能性がある
交通事故の後遺障害を弁護士に相談する理由として慰謝料や逸失利益などを弁護士基準で算定するため、補償が手厚くなる可能性があることが考えられます。
保険会社が提示額が、過去の類似した裁判例などと比べ低い場合には、算定基準の矛盾や曖昧な点を指摘しより高い賠償額で合意できるような弁護活動を行ってくれます。
理由3:保険会社との複雑な交渉や手続きを任せられる
弁護士に後遺障害について相談することをおすすめする理由として、被害者の方の代理人となって交渉を行えることです。
保険会社の担当者とのやり取りは、争点が多いほど複雑になり、また精神的な大きな負担となります。
対応を弁護士に一任することで、被害者は治療やリハビリ、生活の立て直しに専念できる環境を整えることができます。
まとめ
今回は、交通事故における後遺障害の等級について解説しました。
交通事故の後遺障害等級認定は、被害者のその後の人生における経済的安定と精神的な救済を左右する、極めて重要な補償といえます。
後遺障害の申請などについて不安がある場合には弁護士などの専門家に相談することを検討してください。




